4話 最初の生徒は美少年
ルイスは学校の一室に置かれたベッドの上に座り、何となく部屋を見渡した。右にある食器棚には多くの皿やカップが並び、左を見ればかなり大きい、服を収納するクローゼットが置かれている。
これらは全てクロードの部下が運び込んだものだ。
「ここが君の部屋だ、必要なものは全て揃えたけど、他に必要なものができたら遠慮なく言ってくれ」
調理場までもが付いた部屋にルイスは目を輝かせる。魔王討伐の旅で何度か宿屋にも宿泊したが、これほど広い部屋はなかった。そんな広い部屋に一人で住むというのは、いささか気が引けるが、同時に楽しみでもあった。
「それにしても、随分と金がかかっていそうな部屋だね」
家具にも様々な装飾が施されており、一目で高価だと分かる品ばかりだ。皿やカップでさえ例外ではなく、手触りも良い。
ルイスはそこからティーカップを二つ取り出すと、それぞれに紅茶を入れて、一杯をクロードに手渡した。
「気が利くね、ありがとう」
礼を述べてから紅茶を飲み干すクロードを見て、ルイスも紅茶を一口飲んだ。
「さてと、教師になる事は了承した。けど肝心の生徒はどこにいるんだ?」
「ああ、それについては話があってね。全員来られる日時はバラバラでね、早い子は今日にでも来るが遅い子は一か月以上時間かかるかもしれない」
そんなにかかるのか。
ルイスは心の中でそう呟き、再び紅茶を口につける。
「それで、私はその子達に戦闘を教えればいいのか?」
「もちろんさ、一応言っておくと、君の教育方針に口はださない。ただ軍隊のような体罰のある教育だけはやめてくれよ?」
「それくらいは解っている」
言わずとも解るだろう。
ルイスは残った紅茶を飲み干し、カップを置いた。
「ただね、ルイス。君に頼みたいのは戦闘に関する事だけじゃないのさ」
「どういう意味だ?」
ルイスが問い返した瞬間、見計らっていたかのように部屋の扉からノック音がして、一人の兵士が顔を出した。
「クロード様、例の子供が到着したようです」
「来たか、よし。応接室へ案内してくれ、行こうルイス」
例の子供とは、自分の生徒の事だろう。
そう理解したルイスは頷き、クロードと共に応接室へと向かう。
どのような子を相手にしなくてはならないのだろう。
「ふぅ……」
形容できない不安を胸に、学校の中を歩いて応接室の扉を開け――、
そこに居た一人の少年に目を奪われた。
幼くも端正な顔立ちをした少年。
年は十五にも満たないだろうと解るほどに背も低く、肌も幼さを残している。スカイブルーの瞳に、ストロベリーブロンドのロングヘア。髪の中腹からは癖が出ており、毛先に向かうにつれて輪を描いている。
半ズボンにニーソといった装いで、一見しただけでは少女とすら見間違えない風貌だ。
「やぁ、君が生徒第一号だね。僕はクロード、そしてこっちが君の教師になるルイスだ、よろしくね」
淡々と自己紹介を述べるクロードに、ルイスは面食らいながらも後に続く。
「はじめまして、私の名前はルイス。君の名前は?」
ルイスの自己紹介を受けた少年は、二度三度ゆっくりと瞬きをし、ルイスの顔をまじまじと見つめ少しだけ息を吸った。
「フリーシェ」
それが少年の名前だと理解するのに、数秒の時間を要した。
自己主張の少なそうな少年に、ルイスは少しだけ不安を感じる。
とても大人びた雰囲気を身に纏い、半魔の証である褐色肌を見ても何の反応もない。
とても変わった少年だと、ルイスは感じた。
「よし、自己紹介も終わったなら教師と生徒、話すこともあるだろう。僕は失礼させてもらうから後は頼んだよ」
そう言ってクロードは一枚の羊皮紙をルイスに手渡し、そのまま応接室から姿を消した。
昔と変わらない嵐のような性格に、溜息をつきながらも懐かしさを覚えて笑みが零れる。
そしてルイスは受け取った羊皮紙に目を通し、これがフリーシェについて記されていると理解した。兄弟は居らず両親とも死別しているという家族構成、生年月日と共に記された十三歳という年齢。
それらが事細かに記されていた。
その中で、ルイスはある一文に目を止める。
『王都軍医研究所より保護』
経歴という欄にそう書いてあった。
ルイスの記憶によれば、軍医研究所とは正体不明の呪いや、新種の病について調査をする機関だったはずだ。そして王都にある研究所は、この国で一番の設備を誇る。そんな場所から保護をしたということであれば、フリーシェは何かしらの病気を患っているのだろう。
なんにせよ、このまま黙って羊皮紙と睨めっこをしても始まらない。
ルイスはフリーシェの正面に座り、笑顔を向けた。
「フリーシェにいくつか質問があるんだけど、訊いてもいいかな?」
「……はい」
「年はいくつだい?」
「今年で十三歳です」
「出身は?」
「王都です」
「家族は?」
「……両親とも、死にました。兄弟はいません」
羊皮紙に書かれていた事に間違いはないと確認し、ルイスはフリーシェに向き合う。
「私の肌の色について、何も思わないのかい?」
「肌の……色ですか?」
ルイスは今の返答で、フリーシェが半魔という存在自体を知らないのだと理解した。
十三歳という若さであれば、そういった子もいるだろう。それにフリーシェは九歳の時から研究所で保護されているので、そういった世間の常識を知らなくても無理はない。
「どうして君はこの学校へ来たのかな?」
「ここなら、僕の病気が治るかもしれないって言われて……」
「どんな病気だい?」
「…………」
フリーシェは顔を伏せて、何も答えなかった。
というよりは答えたくなかったのだろうとルイスは判断し、質問を切り上げた。
「尋問のような事をして悪かったね、気分転換に散歩でもどうだい?」
「散歩ですか?」
「この近くに小さな湖があるんだ。昔クロードと共にそこへ行ったことがあってね、とても綺麗な場所なんだよ」
微笑みながら語りかけ、フリーシェが小さく頷いたのを見るとルイスは勢いよく立ち上がった。
「じゃあ決まりだ、今すぐに行こう」
ルイスが手をだすと、フリーシェはためらいがちにその手を握り、二人は並んで外へ出た。
最近では久しぶりの快晴に、湖も澄んでいるのだろうと心を躍らせる。
(それにしても、本当に無口な子供だな)
ルイスはフリーシェを眺めながら考える。
これくらいの年齢であれば、外で走り回り、遊びまわるようなものなのではないのか。
ルイスは静かに懐から羊皮紙を取り出し、フリーシェの病名を再度確認する。
『魔力漏発現象』
それがフリーシェの抱える病の名。
ルイスの記憶では、高い魔力を持つものが稀に陥る病で、体内で生成された魔力が行き場のないまま蓄積され、許容量を超えるとそれが一気に爆発するのが特徴だったはずだ。
それほど珍しくもない病気であり、今は治療法も確立されている。
王都の研究所が調べる程でもないはずなのだ。
しかし羊皮紙に書かれている文面に、ルイスは首を捻る。
『治療は不可能、被害を抑える事に注力すべし』
治療法が確立されている病気のはずなのに、治療が不可能とはどういうことだろうか。
ルイスはそんな事を考えながら歩き、やがて目的地である湖へと到着した。
「綺麗、ですね……」
息を呑むように、そっと口にしたフリーシェに、ルイスは笑みを向ける。
底に沈む大木も、泳ぐ魚も、根をはる水草も、まるで水が存在しないかのように見る事ができる。木陰ですら底に写るほどはっきり刻まれているこの湖は、ルイスの知る限り最も透明度が高い湖だ。
「この湖には昔、神が住んでいたらしいよ」
「神様、ですか?」
不思議そうに自分を見上げるフリーシェの頭を撫で、ルイスは話を続ける。
「この土地、そして水を守る神だ。この透明度もその名残って言われているんだよ」
「素敵、ですね」
ルイスはフリーシェの手を放し、湖の畔に膝をつくと水をすくって少しだけ飲む。
そして後ろで立っていたフリーシェを手招きし、同じように湖の水を飲ませた。
「美味しいです」
その口元には薄く笑みが浮かんでおり、ルイスは初めて少年の感情を垣間見た。
「そうか、それはよかった」
笑顔を向けながらルイスは湖を眺める。
そしてフリーシェの事について考えを巡らせた。
もし彼の抱えている病気が、単なる『魔力漏発現象』であるならば、とても対処は簡単な事だ。体内に溜まっている魔力を、体外へ排出する効果のある魔石を身につけさせればいいだけなのだから。
フリーシェの首元を確認し、確かに魔石のネックレスがかけられている事に気付いた。
だが王都の研究所が治療は不可能と判断している、ならば単なる病気とは違うのだろう。
それを取り除ければこの子も元気になるのだろうか。
「————ッ⁉」
唐突に湖を覆う魔力が騒めきだし、周囲の森林が騒ぎ始める。
そして同時に背後から刺すような気配を感じて、ルイスは警戒しながら振り向いた。
「フリーシェ?」
気配の主はフリーシェだった。
彼は両手で頭を抑え、必死に頭痛と戦っているような素振りを見せる。
「抑え、られナい、ルイスさん……逃げて——」
まるで自分に言い聞かせるような声色でそう叫ぶフリーシェは、そのまま苦しそうに地面にうずくまる。そして次の瞬間、フリーシェの体から火柱が上がった。
(これが、フリーシェの抱える病か)
火柱は勢いを増し、やがて火炎旋風となって周囲の木々に燃え広がる。その中心にいるフリーシェだが、苦しそうなだけで火傷などを負っている様子はなかった。きっとフリーシェは火属性の持ち主で、溜まっていた魔力が炎魔法となって周囲に巻かれたのだろうとルイスは判断した。
ルイスは右腕を高らかに上げ、親指と中指を弾いて音を出す。
「アイス・エイジ」
瞬間、ルイスを中心に氷が広がり、周囲の炎を氷が飲み込んだ。
冷気にさらされ、火柱があがっていたフリーシェの体も鎮火し、力なく横たわる。
それを見たルイスはすぐさまかけより、片腕でフリーシェの上体を起こす。
「大丈夫かい、フリーシェ」
「はい、何とか……」
「少し休むと良い、魔力の暴発で体がダメージを受けている」
「……はい」
消え入りそうな声でフリーシェは頷き、息を荒げたまま瞼だけを閉じた。
(さて……)
勇者が人を助けるのは当然なら、フリーシェも助けてやらねばならない。
ルイスはそう決心して、魔力を右腕に溜めた。
(おそらくこれは病気といった類じゃない、この子は恐らく悪魔憑きだな)
悪魔憑き、魔物——主に悪魔種によって憑依された人間を指す言葉だ。悪魔憑きになった者達は、憑り付いた悪魔の種類によって、その被害の形を変える。
勇者の旅、その途中でみた症状と、フリーシェはよく似ていた。
しかし悪魔の気配、そのとぼけ方の巧さに、ただ事ではない何かを感じる。
「少し、痛むよ?」
ルイスは目を閉じるフリーシェにそう告げ、魔力を帯びた右腕をフリーシェの胸に突き刺した。
見た目にはショッキングな映像だが、これは魔法の一種であり、魔力を帯びた手で相手の心を掴むというものだ。それ故に肉体的なダメージはほとんどない。
腕を伸ばし、ルイスはフリーシェの深層心理に手を伸ばす。
悪魔が身を隠すのならば、それは心の中だと決まっている。
(見つけた)
ルイスは心の中にあった異物を掴み、それを引っ張り上げる。それと同時に焼けるような痛みがルイスの手を襲うが、彼は止まることなく引きずり上げ、異物を抜き取ると湖に投げ込んだ。
「クソ」
ルイスの右手は、皮が火傷で爛れ、肉は熱で固まっていた。
治癒魔法で簡単な治療をし、フリーシェをゆっくりと地面に倒す。
「少し待っていてね」
目を閉じるフリーシェにそう告げ、ルイスは湖の中央を見る。
すると先ほどフリーシェの体から抜き取った悪魔が、湖を熱湯に変えていた。湯気に混ざる魔力の濃さが、ルイスの体に危険信号を出す。
やがてその湯気は形を取っていき、同時に湖面から炎が舞い上がる。
そして周囲の大地を溶かすほどの熱量を持ち、炎が実体化して一人の男が湖面に立った。
半裸姿に赤の装飾を体中に埋め込み、オーラが炎の形をしている。背丈は二メートル半を超える巨躯。
「まったく、冗談だろ……」
ルイスは湖面を見ながら思わず呟いた。
湖面に立つ男は、この世界で最も有名と言っても良い精霊種の魔物。全ての火炎を使役し、世界で三大精霊とも呼ばれ、魔王軍の幹部を務める火炎王。ただ存在するだけで周囲を火の海にし、指を動かせば焦土と化す。
「まさか、イフリートに会うなんてな」
ルイスは上着を脱ぎ捨て、自身の体に大量の魔力を充填させた。
例え兵士千人が相手でも倒す事すらできないと言われている『特級クラス』の魔物。かつては魔王に比肩するほどの力すら持っていた魔物。
「彼に憑りついて、肉体を乗っ取るつもりだったのか?」
ルイスは防御魔法でフリーシェを覆い、巻き込まれないようにした。全開戦闘になれば、傍で眠る子供など、一瞬で死んでしまう。
「ほう、勇者——か」
ルイスの目前で、イフリートは不敵に笑う。
「この時代の勇者には初めて会うな、先代の儂を殺した五〇年前の勇者は今も生きているのか」
「さぁ、知らないね」
周囲の空気が焼けるように熱い、ただ呼吸するだけで喉が痛む感覚を味わいつつ、ルイスはイフリートを睨む。
「その肌、半魔であろう? まったく、魔物の血を引きながら人を救う勇者になるなど、恥知らずもここまでくれば笑えるぞ」
ルイスは足を肩幅まで開き、イフリートに向かい合う。
どれほどの実力かは測れないが、油断など微塵もしない。
「ルイス、さん。ダメです、逃げてください……」
突然後ろから声がして、振り向くとフリーシェが腕だけで上体を起こし、必死の形相で涙ぐんでいた。
「駄目なんです、そいつは。お父さんや、お母さんのように、なってしまう」
咳き込みながらフリーシェは絞り出すようにそう告げ、まるで線が切れたかのように意識を失った。
そんな彼を見て、ルイスは心のスイッチを押す。
「大丈夫だよ、フリーシェ。私に任せておいて」
聞こえていないだろうが、それでもルイスはそう告げた。
「さて、これ以上話すこともない。勇者よ、言い残すことはあるか?」
「言い残すこと?」
イフリートに向かいなおし、ルイスは睨みながら問い返す。
「儂の邪魔をしたのだ、ならば死を持って償う以外に何がある?」
「そうだな、貴様を殺してしまうというのはどうだ?」
ルイスの言葉に、イフリートは虚を突かれたかのように笑い、そして肩を震わせた。
「フハハハ、なるほどな。貴様は勇者ではなく蛮勇であったか。ならばよい」
そしてイフリートは人差し指をルイスに向け、その指先に小さな火の玉を作る。
「ここで死ね」
瞬間イフリートの指から一筋の光線とも思えるような火柱が、閃光のようにルイスへ刺さる。
形を持った炎、それは防御したルイスの腕を燃やし、右腕の皮膚が爛れ落ちた。
「グッ——」
貫通は防いだものの、使い物にならなくなった右腕をぶら下げて、ルイスは左手で指を鳴らす。
「白色世界」
ルイスは、先ほど発動した魔法をもう一度発動し、周囲に燃え移った炎を氷で閉じ込める。このまま放置すれば周囲の人民にも被害が及ぶと判断したからだ。そして両腕を前に出し、イフリートへ照準をつける。
「氷結結界!」
ルイスの足元から氷柱の群生が現れ、周囲を凍らしながらイフリートを襲う。
だがイフリートは腕を薙ぎ、炎を放つことで氷を砕いた。
「あらら、本当に効かないな」
治癒魔法で腕を治しつつ、ルイスは頭をかいた。
「水属性の魔法など、低位の火精霊にしか効かぬ。儂の炎を甘く見るな」
イフリートは両腕を掲げ、その先に巨大な炎塊を作り出した。
まるで太陽とでも見間違うほどの炎は、ゆったりとした速度でルイスに落ちてくる。
「この領地ごと吹き飛ばす気か」
ルイスは結界を三重に張り、炎を閉じ込める。
躱せばこの炎は四方十里を焦土と化すだろう。
「辛いなぁ勇者、貴様一人ではもっと戦えただろうに。お荷物を守るという縛りで貴様は死ぬのだ」
イフリートの声と同時に炎塊は弾け、結界を弾き飛ばして周囲に爆風を轟かす。
結界で削っても尚、周囲の木々をなぎ倒すその威力に、ルイスは出し惜しみを辞めた。
「神造武具——解放」
ルイスは自分の胸を右手で貫き、そこから一振りの剣を取り出した。
諸刃の大刀。刀身は包帯のようなもので覆われ、そこには大量の呪文が書かれている。
「それが、勇者の剣か」
イフリートが構えを取り、ルイスと向き合った。
「私は、別に苦戦していたわけではない。お前をここで逃がせば、きっとどこかで復活してフリーシェに憑依すると考えた」
ルイスは剣を構え、すると刀身を覆っていた包帯が独りでに解けていく。
「何の話だ?」
イフリートの問いに、ルイスは空を指さす。
差されるがままイフリートは空に目を向け、そこにあった光景に息を呑んだ。とてつもなく巨大。凝視しなければ風景と誤認してしまうほどに巨大なドーム型の結界が、イフリートを中心として周囲を覆っていた。
「あの結界を戦っている最中にか!」
「何も難しい事じゃない、私は勇者だぞ? 君より格上の魔王を倒した勇者だ」
そしてルイスは剣を引き、その切っ先に魔力を込めた。
剣の力が周囲の大地を揺らし、空気が震える。
その力を悟ったのか、イフリートは真剣な顔つきで掌を前に出した。
「スペルエイム」
イフリートがそう呟いた瞬間、彼の腕から一振りの剣が形取られた。
まるで実体化した炎のように刀身が揺らめき、熱された空気が蜃気楼を作る。
「貴様の名を聞こうか」
「私は赫月の勇者——ルイス・アドレルト」
「そうか」
イフリートは剣を振りかぶり、同時に彼の剣から火柱が上がる。
「貴様を殺し、その名を刻もうぞ!」
そしてイフリートが剣を薙ぎ、周囲が光に包まれた。
イフリートの炎、それは熱よりも、火よりも先に、その光が周囲を照らす。
かつて彼はこの一薙ぎで万の軍勢を消し炭にした。
たった一人の勇者を倒すために、それと同じ力を使った。
——だが、
爆煙と炎の海から、剣を構えるルイスが飛び出す。
髪は焼け焦げ、皮膚は爛れているが、それでも剣を握っていた。
「あの子は、たった数時間の関係ではあるが、私の生徒だ」
そしてルイスは剣を振り下ろし、イフリートの肉に刀身が食い込む。
「あの子を傷付けたお前を、私は許さない」
剣を振りぬき、イフリートの体は真二つに裂けた。
苦悶に歪むイフリートの顔に、ルイスは返す刃でもう一太刀を入れ、徹底的に切り刻む。
そして彼の体が完全に消滅するまで剣を振り、その刃を肩にかけた。
「討伐、完了」
剣に包帯を巻き、ルイスは自分の胸に剣を突き立てて収納した。
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