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第52話:因縁への決着-Dvojice Vítězsláva-

『メジナーロドニー大会女子ドヴォイツェ部門、優勝はドヴォイツェ・スニェフルカ!!!!』

歓声が沸き起こる。

勝った?

わたし達が?

「勝ったんだ……」

「おめでとう!」

そんな声が聞こえる。

今まで支えてくれた人たち。

今まで戦った人たち。

そんな人たちがわたし達の優勝を祝福してくれる。

「ありがとー。みんな、ありがとー!」

「セッカ!」

アマユキさんの声が聞こえた。

どうしてだろう?

なぜかアマユキさんの表情は険しい。

せっかく優勝した、ドヴォイツェ・ムニェスイーツに勝ったんだから、もっと嬉しそうな顔をしてもいいのに。

「セッカ、いい加減にしなさい。遅刻するわよ!」

「ちこく……?」

わたしは慌てて目を開く。

目の前にはアマユキさんの制服……。

それにアマユキさんの匂いと体温を感じる。

いつの間にかわたしはアマユキさんに抱きついていたようだった。

というか、今のは……夢?

「ったく、幸せそうな顔をしちゃって……」

「えっと……」

「まだ頭が起きてないみたいね」

ぼやけた視界がクリアになる。

アマユキさんがわたしに眼鏡を掛けたんだ。

机の上に、黄金に輝くトロフィーが見える。

夢じゃ、なかったんだ。

「またあの時の夢を見てたの……?」

「また……」

アマユキさんの緩やかな手刀打ちがわたしの頭に衝撃を与えた。

あ、そうだ……わたし達ドヴォイツェ・スニェフルカがメジナーロドニー大会に優勝したのはもう既に先週の話。

それからいつも通りの日々に戻って、そして……。

「ちこく?」

ゾッと背筋に悪寒が走る。

遅刻!

マズい!!

わたしはベッドから飛び降りステラソフィアの制服に着替えた。

「えっと、最初の授業は……!?」

というか今日は何日だっけ!?

そして何曜日!!??

「やっぱりまだ寝ぼけてる」

「ボケ?」

「今日は日曜」

それはつまり……。

「休み! 騙したんですね!?」

「全然起きないセッカが悪い」

「というか……休みなら何でわたしを起こしに?」

「寝起きのセッカが見たかった」

「ええ……」

「冗談よ」

「ええ……?」

どこまで本気でどこまで冗談なのか分からない。

けどとにかく、アマユキさんがわたしを起こしに来たということは何かがあったのだろう。

「決着をつけるわよ」

「決着、ですか……?」

「ええ、ドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァと!」

ドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァ。

わたし達がドヴォイツェ・スニェフルカとなりメジナーロドニー大会への出場を決めた宿敵。

当のドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァはドヴォイツェ・ムニェスイーツ――つまりスズメ先輩たちに倒されてしまったけれど。

「ヴィーチェスラーヴァを倒したムニェスイーツを倒した……だからと言って、あの2人と決着がついたことにはならない。セッカもそう思うでしょ?」

「そう、ですね」

「と、ヴィーチェスラーヴァのうるさい方から抗議があったのよ」

「ああ……」

どう考えてもレカルアさんだ。

まぁ、レカルアさんの言っていることも事実。

わたし達がムニェスイーツに勝ったからと言って、ヴィーチェスラーヴァにも勝てるとは限らない。

個人やドヴォイツェの戦い方にも相性というのはあるし、例えムニェスイーツがステラソフィア最強とも名高いスズメ先輩やアマレロ先輩のドヴォイツェで、それに勝ったとしてもだ。

「それで、受ける? 受けるつもりがないなら帰すけど」

「来てるんですか!?」

「来てなかったらセッカを起こさないし、起こして早々こんな話しないし、リビングからやかましい声が聞こえたりしないわ」

いろいろと気を取られすぎてて全く耳に入っていなかった。

言われてみれば確かにいつもよりリビングが騒がしい。

なんて思った瞬間、わたしの部屋のドアが蹴破られた。

「コスズメ・セッカァ!」

「うわ出た……」

「大会の後あんまりに音沙汰がないからわたくし直々に来てあげたのですわぁ!」

「はぁ、ありがとうございます?」

「いやぁごめんね、セッカちゃん。せめてちゃんとアポを取るべきだって言ったんだけど」

「いえ、レカルアさんのやることですから……」

「それにヤーラ、アポを取って逃げられでもしたら困るのですわ」

「逃げないわよ」

相変わらずのレカルアさんとヤロスラヴァさん。

もう、なんというか逆に安心する。

「改めて言うわ! コスズメ・セッカ、セイジョー・アマユキ! わたくし達とヴァールチュカしなさい!」

「まぁ、いいですけど……」

「ふっふっふ、ヴァールチュカ合意と見てよろしいですね……?」

不意に聞こえたまた別の声。

リビングからこちらの様子を伺っていたスズメ先輩だ。

「それでは屋内演習場へ行きましょう!」

場所はメジナーロドニー大会の決勝戦でも使われたステラソフィア機甲科の屋内演習場。

そこに4騎の機甲装騎が揃っていた。

わたしの装騎ユキヅキ、アマユキさんの装騎ユキハナ。

それにレカルアさんの装騎ヴィーチェスカとヤロスラヴァさんの装騎ヤロ。

そうだ、ついに今、あの時のリベンジマッチが始まるんだ。

「それではドヴォイツェ・スニェフルカVSドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァ、開始フラート!」

スズメ先輩の号令で戦いは始まった。

「行くわよセッカ。私たちの圧倒的な力でひねりつぶしてやろうじゃない」

「はいっ」

まず最初に駆け出したのはアマユキさんの装騎ユキハナ。

わたしもその後を追いかけながら正面を睨む。

見えた、正面から同じように向かってくる装騎ヴィーチェスカと装騎ヤロの2騎。

その2騎は互いの武器同士をぶつけ合う。

そう、それがドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァの戦闘開始の合図だ。

「お行きなさい、ヤーラ!」

「迎撃」

真っ先に飛び出したのはヤロスラヴァさんの装騎ヤロ。

「思い出すね。はじめて戦った時のことを」

ヤロスラヴァさんが言う。

そう言えばそうだ。

わたし達がはじめて戦ったプルヴニー・ストゥペン大会決勝。

その時もこんな風にアマユキさんが突っ込んで、ヤロスラヴァさんが迎え撃って……。

でも、あの時とは違う!

「いくわよ!」

装騎ユキハナがロゼッタハルバートを振り払う。

その一撃を装騎ヤロは超振動釵ウートクとオブラナで受け止めた。

「そこですわ!」

装騎ユキハナの一瞬の硬直。

そこを狙い、装騎ヴィーチェスカが超振動太刀ヴルトゥレを振り上げる。

「シューティングスター!」

わたしは盾ドラクシュチートにアズルを溜め、バースト。

その爆発力を利用した加速で、一気に装騎ヴィーチェスカに接近。

超振動太刀ヴルトゥレの一撃を受け止めた。

「ふん、コスズメ・セッカがこんな生意気に前に出てくるなんてね」

「今までとは違います。そしてわたし達は――あなた達に勝ちます!」

「言いますわね」

瞬間、装騎ヴィーチェスカにきらめきが灯る。

「P.R.I.S.M. Akt.1――」

超振動太刀ヴルトゥレを構える。

その周囲に渦巻くアズル。

「この感じは……?」

「インヴァース・ストリーム」

アズルの奔流と共に超振動太刀ヴルトゥレの横薙ぎの一撃が放たれた。

わたしはその一撃を片手剣ヴィートルで受け止める。

その一撃は鋭く早い。

けれどただの一撃。

「P.R.I.S.M.能力の効果は……!?」

瞬間、悪寒が走る。

ゾワリと超振動太刀ヴルトゥレとは逆の方――そこから何かが迫りくるような感覚。

「っ!!」

わたしは思わず装騎ユキヅキを退かせていた。

瞬間――――アズルの一撃が閃いた。

「へぇ、今回ばかりは褒めてあげてもいいのですわ。わたくしのインヴァース・ストリームを避けるなんて」

装騎ヴィーチェスカはカッコつけるように超振動太刀ヴルトゥレを一振りする。

その瞬間確かに見えた。

振り払われた超振動太刀ヴルトゥレ――その動きとは鏡映しになるようにアズルの波が動いたのが。

つまりあのインヴァース・ストリームというP.R.I.S.M.能力は――自分の放った攻撃とは真逆の方向にアズルの斬撃を行う能力だった。

右に剣を振り払えば左にアズルの一撃が放たれる。

右"から"剣を振り払えば、左"から"アズルの一撃が放たれる。

つまりさっきの一撃――わたしの装騎ユキヅキを挟み切るつもりの一撃だったんだ。

「ちょっと厄介だけど……トリックが分かれば、まだ、単純っ」

「うん、そうだね」

「ヤロスラヴァさん!?」

突如目の前に現れたのは装騎ヤロ。

アマユキさんが倒された――なんてことは万に一つもないだろうけれど。

「ちょっとだけお休みしてもらったんだ。そして、セッカちゃんにもね」

「お休み?」

装騎ヤロがその手に持った超振動釵を放り投げる。

その一撃が地面に突き刺さった時――装騎ユキヅキの動きが止まった。

「これはっ」

手足は自由――の、はずなのにどうしてかその場所から一歩も動けない。

何かに装騎をピン止めされたような――――

「P.R.I.S.M. Akt.1、ザーメク・スチーヌ」

まさかこの能力は、超振動釵で相手の装騎をその場に縛り付けるP.R.I.S.M.能力!?

「さぁ、わたくしの一撃――受けてみるのだわ」

「っ!!」

そこを狙い、装騎ヴィーチェスカが超振動太刀ヴルトゥレを高々と掲げる。

不味い!

「ロゼッタネビュラ!!」

瞬間、アズルを纏ったロゼッタハルバートの一撃が飛んできた。

その一撃は周囲に風を巻きこし、地面に突き刺さった超振動釵を中空へと巻き上げる。

瞬間、装騎ユキヅキの拘束が解けた。

「ドラクシュチート、バースト!!」

アズルを盾から吹き出し、と同時に装騎ユキヅキの身を退かせる。

「チッ、逃げられましたわ!」

「やっぱり動きは止められて一瞬か……」

「そんな反省はいいのですわ!」

わたしの目くらましに乗じて、装騎ユキハナが一気に斬り込む。

「相手の動きを止めるP.R.I.S.M.――厄介だけれど、その場所から動けないだけで手足は自由に動かせてよかったわ」

アマユキさんは装騎ヤロに動きを止められていた。

けれどそれが超振動釵を起点としたP.R.I.S.M.能力によるものだと気づきロゼッタネビュラで釵を吹き飛ばす。

と同時に、わたしを助けたんだ。

「セッカはツィステンゼンガーで援護を!」

「はいっ、ツィステンゼンガー!!」

わたしは片手剣ヴィートルを盾に仕舞うと徹甲ライフル・ツィステンゼンガーを構え装騎ユキハナを援護する。

「なかなか厄介な援護をするようになりましたわね」

「成長したんだ。セッカちゃんも。そして――アマユキさんもね」

「けれどそれは、わたくし達だって一緒ですわ!」

「ああ、全力で行こう。この試合!」

装騎ヴィーチェスカと装騎ヤロが、2人の高まる気力に応えるようにアズルの光を強くする。

「「P.R.I.S.M. Akt.2――」」

「ブレードケイジ」

装騎ヴィーチェスカが超振動太刀ヴルトゥレを装騎ユキハナに向かって一突き。

瞬間、その周囲から複数のアズルの刃が、装騎ユキハナを取り囲むように伸びていった。

「P.R.I.S.M. Akt.2、ブロウウィンド!」

それに対抗する為、装騎ユキハナがロゼッタハルバートに纏ったのはアズルを吹き飛ばすP.R.I.S.M.能力。

その一撃でブレードケイジの刃を消し飛ばし、更に超振動太刀ヴルトゥレの一撃も容易く回避する。

「余裕ね」

「待ってください、アマユキさん。ヤロスラヴァさんが――装騎ヤロの姿が!」

それは装騎ヴィーチェスカがブレードケイジを放ったその瞬間のことだ。

後方から援護していたわたしは見た。

装騎ヤロの姿が掻き消えるのを。

姿を消す――きっとそれが装騎ヤロのP.R.I.S.M. Akt.2。

「よく見てたね。タイミングを計っていたんだけど」

装騎ヤロの姿は――装騎ユキハナの背後!

「しまっ」

それももう、咄嗟に回避しても間に合わない程すぐ後ろ。

両手に超振動釵を持ち、装騎ユキハナにその一撃を加えようとしている。

「けれど、私のP.R.I.S.M.――風花開花ブルームウィンドの加速を使えばこんな間合い!」

そんなこと、あの2人なら諒解済みだろう。

何故なら、装騎ヴィーチェスカが再び超振動太刀ヴルトゥレを構えたからだ。

あの一撃は、ケイジのように相手の装騎を包み込むような斬撃を放つ。

ということは――動かなければ装騎ヤロの超振動釵で、動けばブレードケイジの檻の刃で切り刻まれる。

「どうしようもない状況ってワケ?」

「でも、どうしようもない状況なんて――ないですっ」

何故ならわたし達は、ドヴォイツェだから。

「P.R.I.S.M. Akt.3、ヴァクウム・コウレ――バースト!!」

まずヴァクウム・コウレで超圧縮した風を一気に解き放ち、その勢いで超加速。

狙うのは装騎ヴィーチェスカ。

わたしはレカルアさんを――相手にする!

「P.R.I.S.M. Akt.1、ロズム・ア・シュチェスチー!!」

そして装騎ヴィーチェスカを引き寄せ、体勢を崩す。

「チッ、思ったよりも早すぎるのですわ!」

レカルアさん自身、わたしがここまで思い切った動きをするなんて想像できなかっただろう。

ヘタに互いの技術を知っているからこその油断というやつだ。

「ドラククシードロ!」

「ヴルトゥレ!!」

装騎ユキヅキの斧ドラククシードロと装騎ヴィーチェスカの超振動太刀ヴルトゥレがぶつかり合う。

「一旦仕切り直しか。ネヴィヂテルニー・スチーン」

そんなわたし達をよそに、装騎ヤロがアズルの影に包み込まれて姿が消えた。

「姿を消すP.R.I.S.M.能力! それが装騎ヤロの、ヤロスラヴァのAkt.2ってワケね!」

不意に装騎ユキヅキの足元に影が差す。

「っ!! ヴェトルナー・スチェナ!!」

瞬間、何かがわたしの作った風の壁を打ち付けた。

今の一撃は――

「姿を消した装騎ヤロね。チッ、厄介な能力ね」

「ですけど今、攻撃される時――なんか、視界が暗くなりました」

「視界が?」

なんだったんだろう今の違和感。

そう、確かに影が差した。

影……?

わたしは周囲にある影によく目を凝らす。

装騎ユキヅキの影、装騎ユキハナの影、それに装騎ヴィーチェスカの影。

そして周囲にある障害物の影、影、影。

「なるほどね!」

アマユキさんが何かに納得した。

そして、ロゼッタハルバートを大きく構える。

「セッカ、フォーメーション・グラヴィティ。タイミングは合図する」

「わかりました」

「ロゼッタネビュラ!!」

装騎ユキハナの投げ放ったロゼッタハルバート。

それは一直線に装騎ヴィーチェスカに向かって飛ぶ。

「ふん、インヴァース・ストリーム!!」

それに対し、装騎ヴィーチェスカは超振動太刀ヴルトゥレを思いっ切り地面に叩きつけた。

その一撃とは真逆――つまり、真上に向かって吹き出すアズルの一撃。

アズルの一撃はロゼッタハルバートの腹を叩きつけ、遥か頭上へと弾き飛ばした。

「まだよ、ローゼスソーン!」

けれど今の一撃は囮。

ロゼッタネビュラの影に隠れるように拳を固めた装騎ユキハナが一気に装騎ヴィーチェスカの懐に飛び込む。

「飛んで火に入る夏の虫ですわ!」

「セッカ!」

「ヴァクウム・コウレ!!」

狙うのはそこ。

ヴァクウム・コウレを左手に宿し、その手のひらを装騎ヴィーチェスカへと突き出した。

「それがどうかいたしまして? 当たらなければどうということも――」

わたしの狙いは装騎ヴィーチェスカではない。

ヴァクウム・コウレの纏う強烈な引力に引き寄せられたのは――――ロゼッタハルバートだ!

「なっ!」

装騎ヴィーチェスカは咄嗟に身を捻る。

不意を突いた一撃は辛うじて装騎ヴィーチェスカには当たらなかった。

そう、装騎ヴィーチェスカには。

「狙いは……これかっ!」

装騎ヴィーチェスカのすぐ傍――――そこから姿を見せたのはロゼッタハルバートの一撃を受けた装騎ヤロ。

そう、装騎ヤロは装騎ヴィーチェスカのすぐ傍にいたのだ。

「さっきヤロスラヴァさんに攻撃を受けた時、視界が暗くなった――ううん、足元の影が大きくなったのが見えたんです」

ヤロスラヴァさんのP.R.I.S.M. Akt.2ネヴィヂテルニー・スチーン。

これは装騎ヤロの姿を消してしまうP.R.I.S.M.能力だけれど欠点があった。

それは、自分の影は隠せないということだ。

だけどさっき、装騎ヤロの影はなかった。

ううん違う、よく見たらその答えはあった。

装騎ヴィーチェスカの影が不自然に濃かったんだ。

つまり――装騎ヤロは自らの影を隠す為に装騎ヴィーチェスカのすぐ傍にいた。

そして装騎ヴィーチェスカの動きに合わせて行動しながら、奇襲の機会を伺っていたんだ。

「奇襲をするならわたしかアマユキさんが装騎ヴィーチェスカに接近した時」

「私がロゼッタネビュラで武器を手放して素手で突撃する――そうすればそこを好機と見て装騎ヤロは奇襲をするはず。そう考えたのよ」

「どちらにしても、わたしもレカルアさんを狙う以上、何かしらの援護をしないといけないことに変わりありませんし」

とは言え、ヤロスラヴァさんもある程度の予想はできていたんだろう。

だからこそあの不意打ちを最小限のダメージで済ませている。

本当なら、あそこで決めるはずだったのに。

「ヤーラ、どの作戦も全然ダメじゃない!」

「あはは、参ったね」

怒るレカルアさんに、だけどヤロスラヴァさんはどこか楽しそうだ。

「初見殺しのレカルアの能力も、僕の能力もあっさり見破られて突破されるなんて。逆に楽しいよ」

「そんなこと言ってる場合じゃないのですわ!」

「でもレカルア、まだ戦いは終わってない。だろ?」

「そうですわ。わたくし達はまだ全力は出していませんもの!」

装騎ヴィーチェスカに、装騎ヤロにアズルが充実していくのがわかる。

「行きますわよ! P.R.I.S.M. Akt.3!!」

装騎ヴィーチェスカを渦巻くアズルの量が更に多くなっていった。

「ソード・オブ・ヘヴン!! ですわ!」

瞬間、装騎ヴィーチェスカの背後に現れる6振りの太刀。

「これは……っ」

「斬るのですわ!」

その4振りの太刀は、装騎ヴィーチェスカの意思で自在に動きその刃を閃かせる。

「なっ、また厄介なP.R.I.S.M.を!」

「今までのとは違う、すごい直接的で、すごい攻撃的な……っ」

「ヤーラ、支援しなさい。わたくしが、ぶった斬るのですわ」

「ああ。任せたよ」

装騎ヤロは姿を消す。

なんてことに気を取られてるヒマもない。

装騎ヴィーチェスカが一気にわたし達の元へと駆けてきたからだ。

それも自在にして巨大、鋭く早い太刀の連撃を身に纏いながら。

「これがわたくしの七刀流! この熾烈な一撃に耐えられて?」

P.R.I.S.M.能力ソード・オブ・ヘヴンによって出現した6本の太刀。

そして手に持った超振動太刀ヴルトゥレ。

その7本を巧みに操るレカルアさんの七刀流。

一振りの攻撃力も、速度も、攻撃範囲も広くヘタに近づくこともできない。

それだけじゃない。

「っ!!」

わたしは咄嗟に片手剣ヴィートルを引き抜き虚空に閃かせる。

瞬間鳴り響く金属音。

「姿が見えないのによく反応できたね。さすがセッカちゃんだ」

そう、姿を消した装騎ヤロの不意打ち攻撃。

圧倒的な力、圧倒的な存在感で目を退く装騎ヴィーチェスカのソード・オブ・ヘヴンと、逆に圧倒的な目立たなさで奇襲攻撃を仕掛けてくる装騎ヤロ。

この組み合わせは――厄介だ。

「なんとかこれを、突破しないと」

「突破したい?」

必死に防戦するわたしにアマユキさんがどこか楽しそうに聞いてきた。

思ったよりは余裕そうだけれど――何か突破口が見つかったんだろうか?

「当然よ。そろそろいい感じに盛り上がって来たし、決着をつけてあげるわ」

「決着?」

装騎ユキハナがアズルを纏う。

それも強く、より強く。

絶対女王クラーロヴナの覇道、見せてあげるわ!」

そして、アズルが世界を包み込んだ。

これは――――

「P.R.I.S.M. Akt3、ロゼッタユニヴァース!!」

薔薇が世界を包み込む。

アマユキさんが作り出す、アマユキさんの世界。

この世界にいる限り、アマユキさんは至高の究極女王となる!

「だからなんだといいますの? さぁ、切り刻まれるのですわ――ソード・オブ……」

薔薇が装騎ヴィーチェスカを絡めとる。

振り下ろそうとしてた超振動太刀ヴルトゥレの動きが止まった。

「こ、これは……っ」

「ここは私の世界! 私の強固で絶対の意思がある限り、何でも私の思うがままになる世界! いい? 一つ言わせてもらうわ」

薔薇の締め付けは強くなっていくのがわかる。

アマユキさんの自信満々の言葉に呼応するように。

「私たち、負ける気がしないわ!」

「ヤーラ!」

「くっ、ダメだ! 僕のネヴィヂテルニー・スチーンも、効果が!」

装騎ヤロにも薔薇の花弁が張り付き、どこにいるのか一目瞭然。

姿を消している意味が全くない。

「セッカ、アレをやるわよ」

「アレ、ですか?」

「私たちのP.R.I.S.M.を!」

P.R.I.S.M. Akt.Dvojice

わたしのアズルをアマユキさんのアズルに重ねる。

2騎が1つになる。

2人が1つになる。

2つが1つになる。

「ロゼッタユニヴァース!」

「ヴァクウム・コウレ!」

生み出されたヴァクウム・コウレの渦に装騎ヴィーチェスカが、装騎ヤロが引き寄せられた。

そして2騎をそのまま、2人のアズルで押しつぶす。

「「ロゼッタユニヴァース・リ・ジェネシス!」」

そして、世界が閉じた。

これで装騎ヴィーチェスカも、装騎ヤロも機能を停止したはず――――だった。

「P.R.I.S.M. Akt.3……プシーダヴェク」

装騎ヤロから放たれたアズルが、装騎ヴィーチェスカに宿る。

瞬間、装騎ヴィーチェスカが――

「ソード・オブ・ヘヴン!」

ロゼッタユニヴァースを斬り裂いた。

「私の世界を斬り裂くなんて!?」

「受け取ったわヤーラ。最後のアズルを!」

装騎ヤロは機能を停止する。

けれど状況は良くなった――とはどこか言いづらかった。

何故なら、異様に充実している装騎ヴィーチェスカのアズル。

装騎ヤロが最後に使ったP.R.I.S.M.能力によるものだ。

「まだ幕を下ろさせはしないのですわ。アンコールと行きましょう?」

瞬間、装騎ヴィーチェスカの姿が掻き消えた。

「これは――まさか」

「ネヴィヂテルニー・スチーン」

「セッカ!」

「ドラククシードロ!!」

正面から放たれたのはソード・オブ・ヘヴン、その一本による斬撃攻撃。

それをわたしはドラククシードロで受け止める。

「さぁ、お行きなさい!」

そこを狙い、また別の一本が閃いた。

「一度、退いて……」

けれど装騎が、ユキヅキが動かない!

見ると、装騎ユキヅキの足元には超振動太刀ヴルトゥレが突き刺さっていた。

まるで、装騎ユキヅキの影をピン止めするみたいに。

「ザーメク・スチーヌ」

「ローゼスペタル!」

装騎ユキヅキにソード・オブ・ヘヴンの一撃が命中するかと思った瞬間、装騎ユキハナが援護に駆け付ける。

「ふん、ブレードケイジ!」

装騎ヴィーチェスカの6本のソード・オブ・ヘヴンが前へ突き出された。

瞬間、それぞれから放たれる檻のような相手を取り囲む斬撃。

「きゃあっ」

「ぐぅ……ッ!」

激しい衝撃が全身を揺らす。

恐ろしい強さだ。

ソード・オブ・ヘヴンを使った高威力、広範囲、高速で手数の多い攻撃にP.R.I.S.M.能力を――――それもレカルアさん自身のP.R.I.S.M.だけじゃなくヤロスラヴァさんのP.R.I.S.M.能力まで重ねてくるという恐ろしい戦い方。

目の前にいるのは装騎ヴィーチェスカ1騎だけ――の筈なのに、そこには確かにドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァがいた。

「インヴァース・ストリーム!」

ただでさえ広い攻撃範囲が、インヴァース・ストリームとブレードケイジによる攻撃支援で更に広くなっている。

少しでも分が悪くなればヤロスラヴァさんのネヴィヂテルニー・スチーンで間合いを調整。

さらにザーメク・スチーヌで動きを止めてくる。

正直強い。

けど、

「なんででしょうね。楽しいわ。それに、負ける気が全然しない」

何故だかわたしもアマユキさんと同じ気持ちだった。

そう、勝てる。

アマユキさんと一緒なら。

このドヴォイツェ・スニェフルカなら。

「アマユキさん、勝ちましょう」

「ええ」

わたしは盾ドラクシュチートをどっしりと構える。

装騎ユキハナはその前に立ち、体勢を低くした。

「ドラクシュチート――――バースト!」

「行くわよ、ユキハナ!!」

ドラクシュチートの放ったアズルの奔流にのって装騎ユキハナが一気に装騎ヴィーチェスカに向かって飛ぶ。

それと同時にわたしも、

「シューティングスター!!」

装騎ヴィーチェスカの懐に飛び込んだ。

「ブルームウィンド!」

「ロズム・ア・シュチェスチー!」

互いのP.R.I.S.M.の力を組み合わせ、向かってくるソード・オブ・ヘヴンの一撃を掻い潜りながら装騎ヴィーチェスカ向かって走る、跳ぶ。

「ソード・オブ・ヘヴン――――エンドレスワルツ!」

装騎ヴィーチェスカの舞うような太刀の波状攻撃。

わたしの装騎ユキヅキと、アマユキさんの装騎ユキハナを切り刻むつもりだ。

だけど、させない!

「ヴァクウム・コウレ!!」

周囲のものを引き寄せるわたしのP.R.I.S.M.。

引き寄せるのはもちろん――ソード・オブ・ヘヴン!

「なんですって!?」

「アマユキさん、おねがいします!!」

全ての一撃が装騎ユキヅキを切り刻む。

装騎ユキヅキは――その機能を停止した。

「あの怖がりのセッカが――相手の攻撃すべてを受け止めるなんて……私もカッコイイ所を見せてあげないとね!」

アマユキさんに満ちる気力、満ちるアズルは過去最大。

薔薇がロゼッタハルバートに集まってくる。

そしてそれは、装騎ヴィーチェスカにも。

「この薔薇は……!?」

危険を感じた装騎ヴィーチェスカは姿を消しその場を離脱する。

けれど――

「無駄よ。アナタはもう、その機能を停止している」

「何を言ってますの!?」

「P.R.I.S.M. Akt.4……」

瞬間、装騎ユキハナはロゼッタハルバートを振り下ろした。

「コメティックシルエット!」

その一撃は"どこにも当たらなかった"。

はずなのに――――

「これは……」

確かに装騎ヴィーチェスカを打ち付け、その機能を停止させた。

「あの薔薇に包まれた時点でアナタはこのP.R.I.S.M.に当たっていた。当たることが確定しているのだから、どこに攻撃しようと関係なくて?」

なるほど、よくわからない。

けれど――――

「勝者、ドヴォイツェ・スニェフルカ!!」

わたし達は、ついに因縁に決着をつけることができたのだった。

「あー、悔しい悔しい悔しいのですわぁ!!!!」

「まぁまぁレカルア。けど、楽しかっただろ?」

「それはヤーラだけなのですわ! コスズメ・セッカ、セイジョー・アマユキ!」

「は、はい」

「何よ」

「次は負けないのですわ!」

とても悔しそうにそういうレカルアさんだったけれど、何でだろう、わたしにはレカルアさんの声がとても明るく聞こえた。


挿絵(By みてみん)

ステラソフィアTIPS

「次回で最終回です」

TIPSのネタももうない感ヤバい。

次回作のオマケコーナーはどうするか考えないといけないですね。

ということでステラソフィア・ドヴォイツェは来週の更新が最終回となります。

次回は日常ギャグ回なので、装騎バトルは今回が最後です。

読んでくれた方がいたらありがとうございました。


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