第41話:驚異の脅威-Dvojče za Dvojice-
「ご機嫌ようコスズメ・セッカァ」
「うわ出た……」
ドヴォイツェ・ズヴェズダーとの試合当日。
自信満々で声をかけてきたのはレカルアさんだった。
「やぁ、こんにちは」
もちろん、その隣にはヤロスラヴァさんの姿もある。
「ドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァ」
「まさか準決勝にまで勝ち進んでくるなんて、頑張ってるじゃないドヴォイツェ・スニェフルカ」
「おめでとう」
「そういうアンタ達は負けて帰るところかしら?」
「はん。言ってくれるじゃない」
「僕たちの試合は君達の次さ」
やっぱりドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァも順調に勝ち進んでいるらしい。
「ってことは、決勝戦でアンタをボコボコにできるって訳ね」
「言うじゃない。アナタ達の相手はドヴォイツェ・ズヴェズダー……最高のコンビネーションを持つ双子のドヴォイツェよ。精々負けないようにすることだわ」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ。大体ね、そんな風にほざくヤツほど負けるものなのよ」
「わたくし達が補欠枠のドヴォイツェに負けると思って?」
「完全に負けるフラグ立ててるわね」
売り言葉に買い言葉。
本当、アマユキさんとレカルアさんの相性は悪い。
「全く……お互いに頑張ろう。ドヴォイツェ・スニェフルカ」
「はい。また戦うことがあったら、よろしくおねがいします」
「うん。セッカちゃん、強くなったね」
「そう、ですか?」
「ああ」
ヤロスラヴァさんのお墨付きは少し嬉しかった。
『メジナーロドニー大会もついに準決勝! この試合で勝ったドヴォイツェが決勝戦へと進みます!』
司会のイオナさんが声を張り上げる中、わたしとアマユキさんはドヴォイツェ・ズヴェズダーと握手を交わす。
「よい試合にいたしましょう」
「よろしくおねがいします」
レーニャさんとルーニャさんが、同じような角度で同じように頭を下げた。
「こちらこそ。全力で勝ちにいかせてもらうわ」
「おねがいしますっ」
相変わらず不思議な魅力に溢れた双子だ。
そして、その魅力とコンビネーションが戦いの中でどう生かされるのか。
「間違いなく、脅威となるでしょうね」
「はい。それでも……」
「もちろん勝つ。でしょ?」
「はい!」
『今回のステージはこちら!』
白く舞い散る白銀。
白い大地は雪?
ううん、違う。
氷だ。
『舞い散る雪が綺麗な氷床のステージです!』
「相手に有利そうなステージね」
相手は極寒のルシリアーナ帝国領出身のドヴォイツェ・ズヴェズダーだ。
氷の上で戦うというのも、なんだか得意そうにイメージがあるのはわかる。
「と言っても、コッチだって白雪姫なんだから負けるわけにはいかないわね」
「はいっ」
『この極寒のステージの中、どんな熱い戦いを見せてくれるのでしょうか! ドヴォイツェ・スニェフルカVSドヴォイツェ・ズヴェズダー』
わたしは両腕にぐっと力を込める。
『開始!』
「コスズメ・セッカ、いきますっ!」
装騎スニーフを走らせる。
氷の大地だというから少し不安だったけれど、思ったよりは滑らない。
これがアズルホログラムによる再現だからというのもあるだろうけれど。
「と言っても、普段よりは滑りやすくなってるわ。気を付けなさいよ」
「はい!」
真っ白な世界の中を、わたしはアマユキさんの横に並んで駆ける。
今まで通りならば、そろそろ……。
「来たわ」
正面に見えたのは純白で細身の2騎の機甲装騎だ。
装騎のデザインはほぼ同じでまさに双子が乗っているだけはある。
違いはそれぞれの部位が鏡映しになっているということだろうか。
「ズヴェズダー・ジェニーツァ」
「ヴェチェールニャヤ・ズヴェズダー」
「「さぁ、お行きましょう」」
ゾリャー・ウートレンニャヤさんの装騎ズヴェズダー・ジェニーツァ。
ゾリャー・ヴェチェールニャヤさんの装騎ヴェチェルーニャヤ・ズヴェズダー。
その2騎はアイススケートの様な動きで滑る様に――いや、まさに滑って向かってくる。
あんな装備を見たことがある。
足の裏にスケート靴のブレードのようなものを取り付け、そこに纏ったアズルで大地を滑る装備。
アズルであらゆる場所をスケートリンクのように滑ることができるのだ。
「セッカ!」
「はいっ」
その動きは俊敏。
ならば、素早く迎え撃たないと、
相手は正面から――となれば、こちらも正面から迎撃だ。
徹甲ライフル・ツィステンゼンガーを構え、狙いを定める。
そして、撃つ。
「ツィステンゼンガー!!」
放たれた弾丸。
その銃撃は確実に2騎のズヴェズダーに命中した。
はず、なのに。
「効いてない!?」
2騎のズヴェズダー装騎は装騎スニーフの銃撃を物ともせずに向かってくる。
あの細身の騎体に、軽やかな動きからどう見ても軽量騎。
ならばわたしの使う徹甲ライフル・ツィステンゼンガーの一撃は決して軽くはないはずなのに。
「ダメですっ。抑えきれませんっ」
「チッ!」
気付けば2騎のズヴェズダー装騎は目の前。
鏡映しの動作で、綺麗な回し蹴りを放った。
足の裏のブレードは、地面を滑るための道具だけではなく強力な武器にもなる。
「ブレードを使った蹴りが主体の戦い方みたいだけど……っ」
「あとは―ワイヤーフックっぽいのを持ってますね」
攻撃を回避した瞬間、相手の腰部のストックにわずかに見えた。
ワイヤーの先にフックの付いた道具。
本来は何かを牽引したりするときや、固定するときに使う作業用の道具だ。
けれど、そういう道具を武装として扱う騎使は少なくない。
「それと……」
もう一つ気になるのは僅かに肥大した片腕。
装騎ジェニーツァは右腕、装騎ヴェチェールニャヤは左腕。
ただのデザインかもしれないけれど……
「何か内蔵型の武装を隠し持ってるかもしれないわね」
「はい」
2騎の巧みで素早い連携攻撃、連続攻撃が装騎スニーフと装騎ツキユキハナを押していく。
「あれだけ速いと言うことは――軽量騎、よね」
「その筈、なんですけど……」
「いいわ、次は私がつついてみるッ」
装騎ツキユキハナがロゼッタハルバートを構える。
「「さぁ、きなさい」」
「ローゼスペタル!!」
装騎ツキユキハナの一撃が装騎ジェニーツァを狙う。
「お姉さま!」
「ええ」
装騎ジェニーツァと装騎ヴェチェールニャヤが両腕を交差し、防御態勢をとった。
そこに命中する一撃。
普通ならひとたまりもない一撃だろう。
だけど…………
「やっぱり、耐えた!?」
装騎ジェニーツァはピクリともしない。
普通ならばありえない。
けれど、その瞬間わたしは見た。
僅かにだけど、アズルの光が放たれたのを。
「でも、アズル防御とは――ちょっと、違いますね」
「アズルを利用しているけどアズルの反応が少ない技……P.R.I.S.M.能力?」
アマユキさんはすぐにその可能性に気付く。
けれど、P.R.I.S.M.能力を発動した素振りはない。
「常時発動型のP.R.I.S.M.とか?」
「そんなのは、聞いたことない……ですけど」
それにP.R.I.S.M.能力の基本は、装騎の強化ではなく演出の強化。
何かしらきっかけ――普通ならば観客が盛り上がるということ――をトリガーに発動している。
少なくとも無条件で装騎を強化するようなものではない。
「そうよね。きっと何か、発動のきっかけがあるはず」
「何かをトリガーに自動発動するP.R.I.S.M.能力……ってことですか」
「反撃させて頂きます」
装騎ジェニーツァが右足を装騎ヴェチェールニャヤが左足をロゼッタハルバートに叩きつける。
瞬間、迸るアズルの輝き。
その強烈な衝撃で装騎ツキユキハナが吹き飛ばされた。
「っ……今のは!」
軽量騎の放つ蹴りにしてはやたらと重そうな一撃。
そうか、P.R.I.S.M.能力の発動条件は――
「お気づきになりまして?」
「わたし姉妹のP.R.I.S.M. Akt.1」
「「ブリズニェツィ・シンクロ」」
同じ動き、もしくは鏡映しの動きをした時。
その効果は攻撃力と防御力がアップする――そんな感じだろう。
「だからさっきから同じような動きを」
ロゼッタハルバートの一撃を受け止めた時もそうだ。
明らかにアマユキさんの狙いはレーニャさんの装騎ジェニーツァだけを狙っていた。
それにも関わらず、ルーニャさんの装騎ヴェチェールニャヤも防御態勢をとっていた。
それはP.R.I.S.M.能力で装騎の防御力を上げる為だ。
「つまり、同じ動きをさせなければいいって訳でしょ。セッカ!」
「はいっ」
わたしは片手剣ヴィートルを抜き、装騎ヴェチェールニャヤへと斬りかかる。
アマユキさんの装騎ツキユキハナは装騎ジェニーツァへ。
「わたしは手数でルーニャさんを相手に……」
「私は威力でレーニャを倒す!」
「「なるほど」」
素早い連撃や、細かな立ち回りで相手と戦う片手剣ヴィートルを使った戦い方。
一撃の強さや重さで相手と戦うロゼッタハルバートを使った戦い方。
手数もスタイルも間合いも全く違う武器で攻め込めば、2人のシンクロした動きを崩せる筈だ。
「「ですが、姉妹の絆――そう簡単に崩せるものではありません」」
わたしの片手剣ヴィートルが受け止められる。
その反撃を盾ドラクシュチートで防ぎ、合間を見て切り込んだ。
けれどそれも防がれる。
見ると、装騎ツキユキハナも同じような状況。
「ありえないわ。私とセッカの攻撃を、2人とも同じ動きで防ぐなんてッ」
そう、わたしの攻撃、アマユキさんの攻撃。
その攻撃はバラバラの筈だ。
けれど、2人の動きは全く一緒。
アマユキさんと示し合わせ、わざと攻撃のタイミングをズラしてみてもダメ。
それ以前に――
「攻撃動作と防御動作が、一体になって、ますね……」
P.R.I.S.M.能力による機能強化がかかっているからというのもあるだろう。
わたしに対しての攻撃が、アマユキさんからの攻撃に対しての防御になっていたり、その逆になったりしていることに気付いた。
一見、予備動作に見える動きが、回避動作や防御動作だったり。
まるで2人で思考を共有して、そしてわたし達2人を同時に相手にしているようというか。
レーニャさんにもわたしの動きが、ルーニャさんにもアマユキさんの動きが手に取るようにわかっているかのような動きだ。
「これが、双子のドヴォイツェ……ズヴェズダーの力……」
2人は1人。
1人だけど2人。
「風花開花!!」
「ロズム・ア・シュチェスチー!!」
わたし達はP.R.I.S.M.能力を織り交ぜ、さらに攻撃ペースを変える。
「スターライト・ハートビート!! ……え?」
「ローゼスソーン!! ――セッカ!」
そして一撃――と思ったその瞬間、わたし達の一撃が重なった。
重なったと言うことは――
「お姉さま!」
「ええ」
2人の防御動作も完全に重なる。
動きが重なった2騎は――打ち倒せない。
「良い感じでペースを崩せたと思ったのにッ」
「相手のペースに、乗せられてた……ってことですね」
あまりにも厄介過ぎる相手に、わたしには対抗手段が思い浮かばない。
今のわたしに何ができる?
どうすればあの2騎のシンクロを崩して一撃を入れられる?
それさえできれば、軽量騎ということもあって倒すことは難しくなさそうだけれど。
「正直、シンクロを崩すこと自体は難しくは無いわ」
「はい。ですけど、必殺の一撃――その時に2騎は確実に動作を重ねてきます」
「そりゃそうよ。そうしないと防げないんだもの。だから――」
「その時にどう対策するか、ですか……」
わたしのP.R.I.S.M.能力は、相手を吸い寄せるロズム・ア・シュチェスチー、風の壁を作るヴェトルナー・スチェナ、風を球状に圧縮するヴァクウム・コウレ。
きっと相手の動きを制限するのなら、わたしの方がいいだろう。
「そうね。次のタイミング――合わせていくわよ」
「はいっ」
そして一撃、二撃――タイミングを合わせ――三撃目!
「ローゼスペタル!!」
「お姉さまーー」
「ヴェトルナー・スチェナ!!」
「キャッ!?」
装騎ヴェチェールニャヤの防御動作が完成する一瞬先。
その身体にヴェトルナー・スチェナの壁を押し付ける。
動作が重なっている間は、2騎の防御力は異様に高い。
だからこの一撃でダメージを与えることはできないけれど……それが目的ではない。
「ルーニャ!」
風の壁による斥力。
その押し返そうとする力で、装騎ヴェチェールニャヤの動きを止めた。
そうなると、防御態勢をとった装騎ジェニーツァと動きがズレ――P.R.I.S.M.能力が解除される!
「そこに私が――一撃を入れるッ」
装騎ツキユキハナのロゼッタハルバートの一振りが装騎ジェニーツァを襲う。
その瞬間、
「グラヴィターツィヤ」
装騎ジェニーツァの右腕が開いた。
そこから放たれたアズルの光が装騎ツキユキハナを包み込んだ瞬間――その動きが鈍る。
「クッ、身体が……重いッ」
アズルの斥力を利用した重圧攻撃。
装騎ツキユキハナの動きが鈍った隙に、攻撃するのか離脱するのか――。
「どっちもさせないわ。ブロウウィンド!!」
瞬間、装騎ツキユキハナのロゼッタハルバートに風が巻き起こる。
それはアマユキさんのP.R.I.S.M. Akt.2。
アズルを吹き飛ばす風の力だ。
その風は、重圧を吹き飛ばす。
「動きが、軽くなりましたわね……」
「そしてそのまま――やらせてもらうわ!」
「ルーニャっ」
「お姉様!」
装騎ヴェチェールニャヤはわたしのヴェトルナー・スチェナから逃れていた。
と、いうことは――
「2人の動きが、シンクロする……」
「それが、何かしら?」
「っ!!」
装騎ツキユキハナの一撃が、装騎ジェニーツァを打ち付ける。
今まではピクリともしなかった装騎ジェニーツァが吹き飛ばされた。
「そうか、ズヴェズダーが固いのは、アズルを使った防御……だから」
「私のAkt.2なら、吹き飛ばせるッ」
「なるほど……今まで使わなかったのは、不意を突く為――ということですわね」
「けれどここまで勝ち上がってきただけはあるわね……」
アマユキさんの言う通りだ。
不意を突けたと思ったけれど、装騎ジェニーツァはまだ稼働状態。
「少しでもダメージを与えられただけマシ……そう思うべき、ですね」
「そうね」
「ルーニャ、一旦距離を」
「はい、お姉さま!!」
装騎ジェニーツァと装騎ヴェチェールニャヤは距離を置くことで態勢を立て直すつもりらしい。
今のうちに、わたしもできれば装騎ヴェチェールニャヤに一撃を与えておきたい。
「逃がしませんっ」
わたしは盾ドラクシュチートを背面に向け、片手剣ヴィートルを構えた。
「シューティングスター!!」
アズルバーストによる急加速で装騎スニーフは流星になる。
「ラスプラフ」
それを迎え撃つ装騎ヴェチェールニャヤの左腕が開いた。
そしてアズルの光。
「アズルプレッシャー!?」
装騎ツキユキハナが受けたような重圧攻撃が来る?
ううん、違った。
そのアズルの一塊が落ちたのは装騎スニーフの目の前。
大地が揺らめき、何か湯気のようなものが湧き上がる。
これは――
「ひぁっ!!??」
それが何か把握するより先に、装騎スニーフの両足が地面に取られた。
装騎の制御が効かない。
そのまま地面に倒れ、ものすごいスピードで氷の上を滑っていく。
最後、たまたま近くにあった氷の塊にぶつかり装騎スニーフは動きを止めた。
「今のは……装騎を滑らせた?」
いや、違う。
滑らせたというか、溶けさせたんだろうか?
このステージは元々氷。
その表面を溶かし、摩擦を少なくすることで滑りやすい状態にした。
思いっ切り加速をつけていた装騎スニーフは、踏ん張ることができずに足を取られ、スリップしたんだ。
「セッカ、平気?」
「なんとか……それよりも、アマユキさんっ」
「わかってるわ!」
装騎ツキユキハナに向かって駆けてくる2騎のズヴェズダー装騎。
「ルーニャ、コンビネーション」
「はい、お姉さま!」
装騎ジェニーツァは左手で、装騎ヴェチェールニャヤは右手で腰にストックされたワイヤーフックを手に取る。
「「ブリズニェツィ・スティシニーャ」」
抜群のコンビネーションで装騎ツキユキハナの両腕を絡め取った。
「セイっ」
「えいっ」
そして加えられる、息のあった同時蹴り。
「逃がしませんわ」
「ええ、お姉様」
吹き飛ばされた装騎ツキユキハナ。
その両腕に繋がれたワイヤーフックを手繰り寄せ、
「くぅっ」
再び蹴りを放つ。
さすがに強化された2騎による同時攻撃。
アマユキさんの装騎ツキユキハナは耐久力は高めの方だけど、さすがにダメージが大きくなっていた。
「そして――」
「「もう一撃っ!」」
「セッカ!」
「アズル、バースト!!」
盾ドラクシュチートを構え、装騎ツキユキハナを庇う。
それと同時に、盾ドラクシュチートからのアズルバースト。
その一撃で、装騎ジェニーツァと装騎ヴェチェールニャヤを吹き飛ばした。
「行くわよっ!」
吹き飛ぶ2騎に装騎ツキユキハナが引っ張られる。
そう、装騎ツキユキハナの両腕にはまだワイヤーフックが絡まったままだからだ。
けれど、アマユキさんは当然そんなことは理解している。
だからこそ、ロゼッタハルバートを構えると、風花開花で加速を付けた。
「お姉様っ!」
「落ち着きなさい。ルーニャ」
相手にはまだ微妙に動揺が残っている。
「そこを上手く突ければッ」
装騎ツキユキハナが思いっきり身体をひねった。
その動きにワイヤーフックが巻き込まれる。
それはつまり、その先にいる装騎ジェニーツァとヴェチェールニャヤが装騎ツキユキハナの元へ引っ張られるということだ。
「くらいなさいッ」
装騎ジェニーツァは咄嗟に手を離し、装騎ツキユキハナの攻撃範囲へは踏み入らなかった。
けれど――
「ルーニャ!」
「お、お姉様――!!」
装騎ヴェチェールニャヤは未だ混乱状態。
アマユキさんはそこを狙っていた。
「妹を――倒させは、しませんわ!」
それを庇おうと、装騎ジェニーツァが立ちはだかる。
全身に纏うのはアズルの輝き。
背筋を凍らせるような冷たいアズル。
そう、これは――レーニャさんのP.R.I.S.M. Akt.2がくる!
「P.R.I.S.M. Akt.2、ドラゴツェンヌィ・カーミェニ」
瞬間、装騎ジェニーツァの足元から輝く氷柱が放たれた。
それは氷というよりは、最早宝石のような輝きを持つ美しいP.R.I.S.M.。
それでいて、どこか非情な冷たさも感じた。
「そんな攻撃、正面から――ッ!?」
その一撃を砕こうと、ロゼッタハルバートを振り下ろした装騎ツキユキハナだったけれど、その動きが止まる。
装騎ジェニーツァの放った輝く柱――そこに触れた瞬間、ロゼッタハルバートが、そして装騎ツキユキハナの両腕が氷に包まれ動かなくなったのだ。
「そして、もう一撃ですわ!」
「ドラククシードロ!!」
そうはさせない。
横薙ぎに払ったドラククシードロの一撃で、装騎ツキユキハナの動きを止める氷の柱――その根っこを打ち砕く。
「セッカ、ナイス!」
装騎ツキユキハナが両腕にアズルを流すと、その熱量で氷のようなアズルが溶かされた。
「そうか、そんな風にすれば……」
わたしもアマユキさんを見習い、両腕にアズルを流す。
そのアズルはドラククシードロに伝わり、その刃に力を与えた。
「ドラゴツェンヌィ・カーミェニ」
「ドラク、クシードロ――!!」
全力でアズルを纏った斬撃は、レーニャさんのドラゴツェンヌィ・カーミェニに凍らせられない。
「全く、やるようになったわねセッカ」
「お姉様……っ。くぅ、せめてあなたは止める!」
「来るなら来なさい!」
「P.R.I.S.M. Akt.2! リョートコミェータ!」
フィギュアスケートのジャンプのように、回転しながら飛び上がる装騎ヴェチェールニャヤ。
周囲から放たれたアズルが彗星のように尾を引いた光を放ちながら装騎ツキユキハナに降り注ぐ。
それを装騎ツキユキハナは防いだ。
わたしも装騎ジェニーツァを狙いかける。
「そして、ヴァクウム――コウレ!」
距離は十分。
わたしは左手にアズルを溜めた。
風がアズルの中に吹き込み、小さな嵐が手の中に収まる。
「これが貴女の、Akt.3ですね」
周囲にあるものを吸い寄せ、圧縮することで圧倒的な破壊力を出すことのできる。
それがわたしのヴァクウム・コウレ!
「であるのならば――」
瞬間、装騎ジェニーツァの光がさらに強くなった。
これは――この光は、まさか!?
「P.R.I.S.M. Akt.3」
瞬間、わたしの視界が白く染まった。




