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第18話:水着回だよ全員集合!ーPlavky Válkaー

「水着装騎バトル大会……?」

「うん、次の日曜日にアクアガルテンであるからセッカちゃん参加ね」

それはドヴォイツェ・マイ・フェアリーキングとの試合の少し前のことだ。

突如スズメ先輩が持ち掛けてきたのは水着装騎バトル大会というイベントへの参加。

「あ、選択権はない感じですか……」

「うん。チーム・ブローウィングは強制参加だから」

「えぇ……」

どうやらこの大会、発案者が元チーム・ブローウィングの先輩らしくわたし達ブローウィングは必ず参加しないといけないらしい。

と言っても、この水着装騎バトル大会はまだ2回目らしいけれど。

「で、セッカちゃんが参加となるとモチロン、アマユキちゃんも参加ですね」

「は? なんでよ」

雑な流れで参加にさせられそうなアマユキさんは不満を態度と言葉で露わにする。

「だってセッカちゃんと同じドヴォイツェ・スニェフルカなんですよ! ここは参加してドヴォイツェとしての絆を深めるべきでしょう」

「嫌よ。大体アクアガルテンって言ったらテレシコワ財閥の作った遊泳施設……つまりは、私たちセイジョー財閥とはライバル企業。敵の懐を潤す為にイベントなんて出るワケないじゃない」

とてもアマユキさんらしい言い分。

まぁ、いろいろ理由をつけているけどこういう俗っぽいイベントに参加するのが嫌なだけな気はする。

スズメ先輩は、

「それもそうですよね」

と言いながらも、アマユキさんの隣にそっと近づき言った。

「セッカちゃんの水着とか見たくないですか?」

「別に」

即答だった。

ていうかなんでわたし?

「えー、アマユキちゃんってイザナちゃん系じゃないのー!?」

「は? 意味わかんない」

「まぁ、出たくないっていうなら仕方ないかなぁ。まさかアマユキちゃんがこんなファンサービスもできない三流騎使だったなんてなぁー」

それはあからさまな挑発。

「ていうか水着大会って言ってもステラソフィア生ばっかだもんね。やっぱ負けるのは怖いよね~」

「…………」

「それか人前に出るのが怖い? セッカちゃんだって頑張って参加してくれようとしてるのになぁ」

そしてついに、

「だぁもう! 出ればいいんでしょ!?」

アマユキさんが折れた。

と、いうことでわたし達はアクアガルテンで行われるステラソフィア水着装騎バトル大会に出場することになったのだった。


「まぁ、コレはコレで有益なことはありそうね」

そして気付けば本番当日。

アクアガルテンの控室で水着に着替えながらアマユキさんがそう言った。

「どうしてですか……?」

「次の試合相手――ドヴォイツェ・いきものがかりの情報が手に入るかもしれないじゃない」

チーム・ブローウィングの先輩で3年生のオオルリ・アオノ先輩。

そして同じく3年生でチーム・アマリリス所属、アオノ先輩の友人アラーニャ・イ・ルイス・アナマリア先輩。

この2人のドヴォイツェ・いきものがかりがステラソフィア代表選抜大会第3回戦の対戦相手だった。

「オオルリ・アオノはチーム・ブローウィング所属――となれば参加は確実。上手くいけばその友人だっていうアラーニャ・イ・ルイス・アナマリアの参加も見込めるわ」

「そうですね……水着とは言え装騎戦ヴァールチュカはヴァールチュカ……何か戦い方のヒントが見つかるかも、ですね……」

「そ。私たちの参加はあくまで情報収集。そう割り切れば……割り切れば…………」

「やっぱり水着は、恥ずかしい、ですか?」

「ま、まさか。むしろ見せつけてやるわよ。セイジョーたるものの高貴さをね」

少し無理しているような気もしたけれど、これ以上ヘタに言葉をかけてもどうにもできない。

というか、わたし自身かなり緊張していて……足が震える。

「セッカ」

「……?」

「水着、似合ってるわよ」

「????」


「今年もやってきました! ドキッ、ステラソフィア生だらけの水着装騎バトル大会~!!」

スズメ先輩がマイク片手に司会を務める。

割と手慣れた感じなのを不思議に思っていたけれど、どうやら去年も司会をやったらしい。

「ルールは問答無用、生き残りを賭けたサバイバル戦! 共闘、裏切り、不意打ち、闇討ちなんでもあり! 勝利のための手段は問いません!」

「サバイバル戦……」

「ふぅん……セッカ、ここは手を組んだ方が良さそうね」

「え?」

アマユキさんがそんなことを、それもわたしに提案してくるなんて予想外だった。

やる気もなさそうだったしテキトーなところで降りるとか、そうじゃなくても「1人でやる」と仲間を作るなんて考えそうにもないのに……。

「なんだかんだ言っても私たちはドヴォイツェ。ちょっとした予行練習とトレーニングみたいなものだと考えればアリでしょ?」

つまり、ドヴォイツェとしてのコンビネーションを高める為に……ということになるのだろうか。

アマユキさんのことだから、他にも企みがあってのことかもしれないけれど、わたしにとって特にデメリットはない。

だからわたしは頷く。

「そ。それでいいわ」

「ちなみに前回! せっかくの水着装騎バトル大会なのに水着が見えないという嘆きのお便りを多くいただきましたため、今回はなんと! 機甲装騎に水着を着せるという大サービスです!! これは部位破壊ポロリも期待できますね!!!!」

装騎に……水着?

わたしは丁度搬入の終わった装騎スニーフに目を向ける。

たしかに装騎スニーフには純白のビキニが身に纏われていた。

元々どこか女性的なフォルムの装騎スニーフ――割と似合ってるような気がしなくもない。

「いやぁ、盛り上がってますね! それじゃあドキッ、ステラソフィア生だらけの水着装騎バトル大会――――スタートです!!」

正直なところ、盛り上がっているのは極一部ステラソフィアだけのような気もしたけれど、スズメ先輩割と強引に切り上げ装騎スパローに乗り込んだ。

それに倣い、わたし達全員自分の装騎に乗り込むと事前に通達されたスタート位置へと移動する。

そして、戦いが始まった。

「あれは……」

始まって早々、空高くにアズルの光が灯る。

「アマユキさん!」

それは事前に示し合わせていた合流の合図。

開始位置がバラバラのこのサバイバル戦、手早く合流するにはこうするのが一番。

けれどあれだけ目立つ合図を放つということは当然……。

「はじまった……」

早速、戦闘が始まったことを強烈な爆炎が教えてくれた。


「さて、あとはセッカが来るのを待つだけ……とはいかないわよね!」

装騎ツキユキハナが警告音を響かせる。

接近するのは複数の熱源。

「プリンセス・オブ・ユニヴァースのロケット弾ね」

私はそのロケット弾の先頭を薙ぎ払う。

先頭のロケットが爆発すると、それにつられて後続のロケットも大爆発を起こした。

その爆煙に紛れて私は身を隠す。

装騎プリンセス・オブ・ユニヴァースを相手にするのは容易い。

しかしここは爆発の中心――ここで素直に戦えば新たに駆けつけた他の装騎に挟み撃ちにされる可能性もある。

「逆に言えば、上手く身を隠せば美味しいところを手に入れられるってワケよ」

私の目論見は的中した。

早速姿を現したのは、

「Hooo! ロックっすね! コレはクリスティーナちゃんの仕業っすね!!」

装騎プリンセス・オブ・ユニヴァースの騎使ランベール・クリスティーナと同じチーム・シーサイドランデブーに所属する2年生。

アストリフィア・メイとその装騎サーティーナイン・リマスターだった。

「フッ、来りては我がパイセン……コレもディ・ユニヴァースの課したデスタニーか……」

「デスタニーっすね! 運命ディスティニー? So,Destiny!!」

アストリフィア・メイが参戦し、さらに爆音がけたたましく鳴り響く。

こんな暑苦しいのがプールでやるヴァールチュカなのだろうか……?

「ふぅん、楽しそうじゃない! アタシも混ぜてプロスィーム!!」

「見つけたぜ、祭の場所をよォ!」

「ナハハハハ、わたくし参上である!!」

更に暑苦しくて過激そうな3騎の機甲装騎が混ざってくる。

チーム・ブローウィング2年サエズリ・ツバメの装騎ヴラシュトフカ。

チーム・アイアンガールズ4年ノヴァーコヴァー・チヨミの装騎ヂヴォシュカ。

チーム・ミコマジック4年チャタン・ナキリの装騎ウタキ。

いずれも格闘戦が得意で好戦的な人ばかりだ。

「装騎ヂヴォシュカは加速装甲による格闘戦……装騎ウタキは巨大太刀での斬撃戦が得意、ね」

これから先誰と当たるのか分からない。

こういう情報は仕入れるところで仕入れておくべきだろう。

「アレは……セッカ!」

そんな混戦の最中に近付く、よく見知った1騎の機甲装騎。

「うわ……さすがに、アレに近付くのは……」

セッカの装騎スニーフが慎重に様子を見ながら辺りを見回している。

きっと私を捜しているのだろうけど……

「もう少しは警戒できないのかしら」

せめて身を隠しながら進む、とか。

ここで私が不意打ちすれば、装騎スニーフはあっさり落ちるだろう。

けれど、それが目的じゃない今、私はそっと装騎スニーフをホログラムで出来た藪の中に引きずり込んだ。

「うわっ!? って、アマユキ、さん……?」

「セッカ周りに誰かが潜んでる可能性だってあるわ。パッと見何もなくても警戒しなさい!」

「は、はい……。それにしても……なんか、すごいことになってますね……」

激しすぎる爆音と剣戟にセッカの腰が引け気味なのは声の調子からもよくわかった。

まぁ実際、あの中に飛び込むのはどう考えても危険極まりない。

そんな中に、お祭りバトルとはいえホイホイと突っ込んでいくサエズリ・ツバメやノヴァーコヴァー・チヨミと言った面々の豪胆さには驚くばかりだ。

「えっと……クリスティーナちゃんにツバメ先輩、チヨミ先輩、メイ先輩、ナキリ先輩……わたし達も含めて半分はここに集まってるんですね」

「参加は確か12人だったかしら……まぁ、残りもこのあたりで戦いを観察しているでしょう」

サエズリ・スズメ、ハクツキ・ミツキ、オオルリ・アオノ、アラーニャ・イ・ルイス・アナマリア……あとはローレイ・タマラという先輩もいたか。

「どうします……? このまま見てる――っていうのも」

「そうね……何か大きな変化があれば……」

その”大きな変化”が訪れるまで、そう長くはかからなかった。

突如感じた巨大な存在感。

振り下ろされる巨大なアズルの鉄槌が、混戦状態の真っ只中に落とされた。

「チッ、なんなのよ!」

サエズリ・ツバメが悪態を吐く。

けれど、それもそうだ。

あまりにも突然の不意打ちだったのだから。

「アマユキさん……あ、あれ……」

装騎スニーフが空を指差す。

教えてもらうまでもない。

あんな存在――私の目にもばっちりと写っている。

「あれは……タ、タコ?」

セッカの呟きはバカバカしく聞こえる。

けれど、それ以上にバカバカしいものが私の視界にははっきりと捉えられていた。

それは、巨大な――あまりにも巨大なアズルのタコ。

「アナマリアオオダコか!」

そう声をあげたのはノヴァーコヴァー・チヨミだろう。

いや、それよりも……

「アナマリア、オオダコ……? もしかして、アナマリア先輩の……??」

確かに聞いた。

アナマリアオオダコというその名前を。

「その通り! 海の向こうからやってきた! アナマリアオオダコ大登場さ!!」

巨大な影に私たちも含め、その場にいた一同の視線が釘付けになる。

「チッ、厄介だぜ……あのタコ野郎、パワーはそれほどでもねーけど規模がデカ過ぎる」

「それにプールの向こう側にいるしね! 海上移動できる装騎じゃなくちゃ、本体を叩くのも面倒ね。ったく、サエズリ・スズメの妹であるアタシとしてはあまり考えたくない手だけれど……」

「とりあえずアイツからブッ叩くっすよ!」

「ナーハハアハ! 斬りがいがありそうである!!」

1も2もなくノヴァーコヴァー・チヨミ、サエズリ・ツバメ、アストリフィア・メイ、チャタン・ナキリと言った面々が共闘の動きを見せ始める。

「ソコに隠れてる2人も協力してくれるよな? アイツは面倒くせえ相手だかんなぁ。手早くとっちめておきたい」

「気づいてたのね」

「そりゃな」

ノヴァーコヴァー・チヨミに呼び出され、仕方なく私とセッカは姿を見せる。

ガサツそうに見えて敏感な先輩だ――もしも戦うことがあるのならば十分に注意しないといけないだろう。

「それで、何か策でもあるのかしらノヴァーコヴァー先輩?」

「んー、そうだな。策はないぜ!」

「な、ないんですか……!?」

「強いて言うならアレだ。アイツの触覚をひたすら攻撃して消耗を狙うか――上手く攻撃のタイミングで触手伝いに本体のトコに乗り込むか――ってとこだな」

「ま、水上戦や水中戦をできそうな装騎はいないものね。分かったわ。少しくらい協力してあげる」

「い、いいんですか、アマユキさん……」

見つかってしまって不意打ちの機会が奪われたのであれば仕方ない。

ここは素直に協力しながらそれぞれの実力を見ることにする。

この戦いはあくまで情報収集なのだから。

「そう……でしたね。とりあえず、今はあのタコを、倒しましょう」

「――にしてもアオノはどこにいんだ? アイツがいたら少しは楽になるんだが」

「そういえば、アオノ先輩の武器は……」

霊子衝浪盾アズライト――アズルの波を起こし相手の攻撃を受け流したり、その流れに乗ることで波乗りのようなことができる盾だとセッカは言っていた。

なるほど、その仕組みを利用すれば波乗りも可能になる。

つまりあのアナマリアオオダコに有効打を打つには十分な性能を持っているということか。

「今はとにかく、ロックにいくっすよ!!」

「ユニヴァース!!」

アナマリアオオダコとの総力戦が幕を開ける。

アナマリアオオダコの触手に大した威力はない。

けれど、装騎の動きを止める程度の力はあるし、強く叩きつけられた触手の下敷きになってしまえば機能が停止するだけのダメージは負う。

そんな中で、プールの真ん中にいる本体をどう仕留めるかを私たちは考える。

「セッカ、とりあえず私はあのタコに取りつくわ。援護しなさい」

「と、とりつくって……」

何度目かの振り下ろされた触手。

私の装騎ツキユキハナはそのタイミングを狙って触手の上を一気に駆ける。

「ヘッ、今年の1年にはなかなか強気なヤツがいるじゃねーか!」

そう言いながら、私と同じように触手の上を駆けるノヴァーコヴァー・チヨミの装騎ヂヴォシュカ。

振り落とそうと全力で触手をうねらせるアナマリアオオダコだけれど、この程度の悪路は余裕。

そしてやがて、アナマリアオオダコ本体へとたどり着く。

アナマリアオオダコの中央部で、アズルの光を放つ1騎の装騎――アラーニャ・イ・ルイス・アナマリアの装騎本体がそこにはいた。

「うげっ、ここまで来たさ!?」

「ハッ、よっしゃ、ぶっ潰すぜ!」

「覚悟しなさい……!」

装騎ツキユキハナと装騎ヂヴォシュカ――2騎の攻撃が炸裂するその瞬間。

「させないのでありますよ!」

アズルの流れが変わり、私たちの攻撃は避けさせられた。

目の前には盾を構える1騎の装騎。

「チッ、まさかアオノ、テメェ」

それはオオルリ・アオノの装騎ブルースイングの姿だ。

姿が見えないと思っていたオオルリ・アオノ――そう、実はこの2人は手を組んでいたのだ。

「コッチには構わず他を蹴散らすのであります!」

「諒解なのさアオちゃん!」

装騎ブルースイングとアナ装騎のアズルが重なり、増幅する。

それにより、装騎ブルースイングの霊子衝浪盾アズライトの操るアズルの量が増え、私たちの攻撃を受け流した。

「なんだコレっ。まるでヌルヌル滑るようにっ」

「有効打が打てない……厄介ね」

相手の攻撃で倒されこそしないものの、コチラの攻撃も決め手にならない。

装騎ブルースイングは防御に力を注いでいる。

「もしかして時間稼ぎ……?」

だが、時間稼ぎをして何になる?

確かにアナマリアオオダコで今戦ってる他のメンバーを全滅させられたら攻撃の余力を私たち相手に回せるだろうけど……。

「アマユキさん!」

「セッカ!?」

気付けばアナマリアオオダコの本体まで装騎スニーフが駆け付けていた。

それも声からは焦りを感じる。

「アナタ、どうして……」

「不意打ちです! 手を組んでたのは、わたし達だけじゃ、ありませんでしたっ」

それはこのゲームのルール上そうだろう。

けれど、ここで他にも手を組むようなメンバーと言ったら誰がいる?

そう……

「まさかスズメか!!」

「は、はい!」

ノヴァーコヴァー・チヨミの言葉をセッカは肯定した。

そういうことか。

アナマリアオオダコという巨大なタコの存在で私たちの注目を集め、そこをサエズリ・スズメの装騎スパローが不意打ちする。

「バレてしまったでありますねぇ。その通り! ちなみにわたしはアナちゃん本体の防御担当であります!」

サエズリ・スズメ、オオルリ・アオノ、アラーニャ・イ・ルイス・アナマリアの3人が手を組んでいた。

「それじゃあビーチにいたメンバーは……」

「もう全滅させましたよ」

私の言葉に答えたのはセッカではなかった。

「サエズリ・スズメ……」

そこにいたのは装騎スパローの姿。

それも、どういうワケか宙に浮き、空を飛行してここまできたようだった。

「な、ソレはマーリカのアクアジェットパック! テメェズリーぞ!!」

アクアジェットパック……?

よく見ると装騎スパローは水を勢いよく噴射し、その反動で宙に浮いているようだった。

その背には水を吸い上げるホースのついた後付け装甲のようなものが装備されている。

「勝てばいいんですよ!」

サエズリ・スズメはそう言い切ると、ジェットで加速をつけ私たちの背後に回った。

「そしてコレで――終わりです!」

サエズリ・スズメが狙うのは私たち――ではない。

アナマリア装騎と装騎ブルースイング――その2騎だ。

「ほいさ!?」

「スズメ先輩!?」

装騎スパローが手に持った両使短剣サモロストの一閃が2騎を襲う。

瞬間――アナマリアオオダコのアズルが解き放たれ、と同時に私たちの装騎も宙を舞った。

「なるほどね……アナマリアオオダコを解除できれば私たちの装騎はプールに落ちる。プールの中だと動きが制限されるし……」

装騎ツキユキハナのディスプレイで何やらカウントダウンが始まっている。

これはきっと……

「0になったら、機能停止扱いってことですか」

「そーなんなぁ!」

このままでは私たちの装騎は機能停止し、サエズリ・スズメの勝利が確定してしまう。

「それは避けたいわね」

「避けたいって……言っても……」

何か手があるはずだ。

セイジョーたるもの冷静たれ。

今ある手数でサエズリ・スズメにいっぱい食わせる手を見つけるのだ。

「セッカ、ノヴァーコヴァー先輩、私に手を貸してくれるつもりはあるかしら?」

「わたしは……最初からそのつもり、ですけど」

「手があんのか? あるなら手を貸すぜ。スズメにいっぱい食わせてーしな」

私は頷くと、最後の悪あがきの内容を2人に説明した。

そして準備。

装騎スニーフの上に装騎ヂヴォシュカが乗り、更にその上に私の装騎ツキユキハナが乗る。

若干間抜けな体制だけれど、そんなことを言ってる場合ではない。

「コスズメ・セッカ――行きますっ」

まず初めにセッカの装騎スニーフが盾ドラクシュチートにアズルを込めて、一気に解き放つ。

「行くぜヂヴォシュカ――全力全開!」

後押しするジェットのようなアズルを受けるタイミングで、装騎ツキユキハナを乗せた装騎ヂヴォシュカが思いっ切り盾ドラクシュチートを蹴り、浮上する。

更に全身の加速装甲に火を灯し、可能な限り私の装騎ツキユキハナを押し上げてもらう。

それでも水面に浮上するには至らない。

ここから最後、

「いくわよ。ツキユキハナ」

装騎ツキユキハナは装騎ヂヴォシュカを踏み台にして跳躍。

もちろん、全身の加速ブースターの力も借りて水面から勢いよく飛び出した。

「アマユキちゃん……っ!」

「サエズリ・スズメ!!」

私は構えを取る。

「これでも食らいなさい! ロゼッタ――ネビュラ!!!!」

そして手にしたロゼッタハルバートを放り投げた。

「そんなの当たりません!」

アクアジェットで宙を舞う装騎スパローは易々とロゼッタネビュラをかわす。

「そしてそのまま、プールの中に消えてください!」

サエズリ・スズメの言う通り、私の装騎ツキユキハナは水中へ向かって急降下していく。

その時だ。

「コレが、最後の……一撃でありますよ!」

「ふっ、やったるさ!」

水中に沈むかと思った私の装騎は、その水面に足を降ろした。

いや、違う。

私の装騎ツキユキハナの脚部に取り付けられた1枚のボード

「霊子衝浪盾アズライト!」

そして、

「へぐっ!?」

装騎スパローに叩きつけられた触手。

それはオオルリ・アオノとアラーニャ・イ・ルイス・アナマリアが最後にやった自分たちを裏切ったサエズリ・スズメへの報復攻撃。

バランスを崩した装騎スパローに、

「そこよ!」

私は狙いをつける。

霊子衝浪盾アズライトを思いっ切り蹴り、装騎スパローと高度を合わせた。

「ブリット――ローズ!!」

アズルを纏った装騎ツキユキハナの拳で――装騎スパローは機能を停止する。

「バ、バトル終了……勝者は、セイジョー・アマユキちゃん!! イテテテテ」

水面に叩きつけられ沈みながらもサエズリ・スズメは律儀に決着のアナウンスを流すのだった。

「ふん、当然じゃない」

勝ったという事実――というよりは、サエズリ・スズメにいっぱい食わせられたという事実に私はどこか清々しい気持ちになる。

「わー、優勝おめでとー」

「おめっとさーん」

「…………?」

ふと背後に目を向けると、そこには今まで姿を見せなかった2騎の機甲装騎。

ハクツキ・ミツキの装騎Bムーンと――参加者情報から推測すると残った1人はチーム・マイナーコード所属の4年ローレイ・タマラとその装騎テンパランス。

「いやぁすごいなぁ。こんな後輩がいるなんて嬉しー」

「ねー、アマチャすごでしょ? マジスゴ、マジエモー」

まるで自分たちは関係ないと言いたげに呑気に会話を繰り広げている。

そんな2人の装騎に、私はそっと止めを刺した。


挿絵(By みてみん)

ステラソフィアTIPS

「ドキッ、ステラソフィア生だらけの水着装騎バトル大会 部位破壊ポロリもあるよ」

元チーム・ブローウィングでテレシコワ財閥のお嬢様テレシコワ・チャイカ考案の装騎イベント。

テレシコワ財閥の大型屋内遊泳施設アクアガルテンのイベントとして去年第1回が行われ、評判が良かったため恒例行事にしようとしている。

騎使パイロットが水着を着て参加しているが、試合中のコックピット内撮影などもなく「水着がほとんど見えない!」という一部の嘆きの声にお応えして今回は装騎に水着を着せるという名案が通った。

ポロリという名の部位破壊だったり、装騎に水着を着せるということだったり、ステラソフィア生にはすこぶる評判がいいのだが、それ以外にはあまりよろしくない。



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