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第13話:絶対最強(自称)-Armáda Cubame-čan-

「エントリーありがとぉございますぅ」

そう言ったのはピンク色で癖のある髪の毛が特徴的な女性。

どこかゆるふわな彼女はステラソフィア女学園の教師チャレンジャー・キャロライン先生だ。

「今回は機甲科さんの参加が多いですねぇ。先生うれしぃでぇす」

「普段は、機甲科の人はあまり出ないんですか……?」

今日、わたしはセイジョーさんと一緒にステラソフィア代表選抜大会ドヴォイツェ部門へのエントリーをしに来た。

「そぉなんですよぉ。機甲科ってほぉら、個性的な子が多いでしょう?」

キャロライン先生のいう事は確かにその通りだった。

わたしの周りにいるだけでも――その、こう言ったらなんだけど、変な子がたくさんいる。

「だからぁ、大会とかもきょぉみない子がおぉいんですけど、今回はなんか……おおいですねぇ」

「サエズリ・スズメの差し金かしら」

セイジョーさんが小声で呟く。

それはきっと、そうなんだろう。

「エントリーの手続きはおぉけぇ、ですけどぉ」

「何ですか?」

「ドヴォイツェの名前はセイジョー・コスズメでいいんですかぁ?」

「どういうことですか?」

キャロライン先生の言葉にセイジョーさんは丁寧に、だけどどこか面倒くさそうに尋ねる。

「やっぱりぃ、アマユキさんもセッカさんも女の子ですしぃ! かゎいいドヴォイツェ名を付けるべきだと思うんですよぉ」

「ドヴォイツェ名……ですか」

そいえば、プルヴニー・ストゥペン大会でも独自の名前を付けていたドヴォイツェはいくつかあった。

わたし達が打倒を志すドヴォイツェ・ヴィーチェスラーヴァもその一つだ。

「別に私はそういうこだわりはないもの。コスズメさんは?」

「え、えっと……わたしも特に……」

「えぇ~」

「ならば、スニェフルカというのはどうでしょう!」

突如、背後からそんな提案がされる。

聞き覚えのある声――振り返った先に居たのは、

「スズメ先輩!」

「やっほー」

「サエズリ先輩? まさかアナタもエントリーに?」

「まさか! 私は大会には出ない主義ですよ」

「それはそれでどうなんですか?」

「それよりも、セッカちゃんとアマユキちゃんのドヴォイツェ名の話です!」

「えっと、さっき言ってましたね……スニ……?」

「スニェフルカ、ね」

セイジョーさんがその名を口にした。

「スニェフルカ……」

「"雪のように白い子"って意味のある名前よ。アナタの装騎の名前――」

スニーフ……」

「そう。それが元になってる名前」

「セッカちゃんもアマユキちゃんも名前に雪が入りますし、ピッタリだと思うんですけど」

セイジョーさんの本名は星条・天雪だったっけか……。

わたしの名前も小雀・雪加で名前に雪が入る。

……きっとスズメ先輩はそこからその名前を考え付いたのだろう。

「いいんじゃないかしら?」

わたしがその名前に納得するより先にセイジョーさんがそう言った。

「ドヴォイツェ・スニェフルカ……うん、セイジョーさんが、いいなら」

「それではぁ、スニェフルカで登録しますねぇ」

そして始まる――わたし達ドヴォイツェ・スニェフルカの戦いが。


「コスズメさん、トーナメント表見たかしら?」

「トーナメント表……ですか?」

後日、わたしはセイジョーさんの言葉で試合のトーナメント表が発表されたことを知った。

「私たちの最初の相手はドヴォイツェ・絶対最強ツバメちゃん軍団……馬鹿っぽい名前ね」

「ツバメ……えっと、もしかしたらソレ、ウチの先輩のドヴォイツェです」

「ブローウィングの? ……サエズリ・ツバメ?」

「だと……思います」

「その通りよ!」

不意に投げかけられた声は間違いなくツバメ先輩の声。

目の前に現れたのは間違いなくツバメ先輩の姿。

「どじゃぁ~ん! サエズリ・スズメ唯一の妹、サエズリ・ツバメ参上!」

腰に手を当て胸をそらし、瞳に自信の炎を燃やしている。

「サエズリ・スズメの妹ね……プラヴダ中装騎部の活躍は聞いてるわ」

「あら、それはありがと(ヂーキ)。だけど……スズ姉を呼び捨てにするのは頂けないわね!!」

「ツバメ先輩落ち着いてください」

わたしは今にも殴りかかりそうなツバメ先輩を必死で制する。

ツバメ先輩はどういう訳か、スズメ先輩のことになるとただでさえ低い沸点が更に低くなる。

「お、さっそくやってるっすね!」

そこに1人の女子生徒が割り込んできた。

身長はやや高めで、人当たりの良さそうな陽気な女子生徒。

「この2人がわたしらの対戦相手っすか? Foo,クールっすね! クール? So,クール!!」

「うっさいわね! アンタはもうちょっとクールにできないの!?」

「わたしはいつでもホットっすからね! ホット? So」

「黙りなさい」

「えっと……その、もしかして……」

「ふぅん、アナタがサエズリ・ツバメの相方って訳ね」

話を聞いている感じ、どうやらそうらしい。

わたしはてっきり、アオノ先輩あたりと組んでるのではないかと思ったけれど違ったようだった。

「相方ってーかラブダチってか? まぁいいっす。わたしはチーム・シーサイドランデブー所属の2年生アストリフィア・メイっす!!」

「アストリフィア……要注意ね」

その言葉にわたしは内心驚いた。

一見すると――その、失礼だけど今まで見た強い騎使の部類からは外れている。

けれどそんな彼女をセイジョーさんが警戒するなんて……。

「いいこと? 次の試合――っていつだっけ!?」

「3日後っす!」

「そう! 3日後の試合覚えてなさい。ボッコンボッコンにしてあげるんだから!」


「情報……ですか?」

サエズリ・ツバメの宣戦布告を受けたその日――私はいつものカフェにコスズメ・セッカを呼び出した。

「いい? 私もアナタもヴィーチェスラーヴァに勝つ為に、国際大会に出る為に毎日特訓してる。そうでしょ?」

「そうですね……」

「けれど、ドヴォイツェとしての完成度はまだまだ低い。そうでしょ?」

「そう、ですね……」

「となれば、少しでも勝率を上げる為には相手の情報を集めて対策を打つ! 当然でしょ」

「それで、わたしにツバメ先輩の情報を……ですか」

「そ。同じチームなんだし、少しくらい分かるでしょ。装騎の特徴とか戦い方の特徴とか」

そう。

私たちはまだドヴォイツェとしての実力は不十分。

サエズリ・スズメの口車に乗って色々と特訓(効果あるの?)をしているものの、未だ最初に言われた段階どまり。

プラモデルも完成してなければ、私はアナヒトという子を勝たせることもできていない。

コスズメ・セッカも話を聞く限り進展はなさそうだし。

「ツバメ先輩の装騎――名前はヴラシュトフカ」

(そのまま)ね」

「ホバー移動ができる中量装騎ヤオエル型の装騎です、ね。武装は加速装置付き(ブーステッド)ハンマー、です」

コスズメ・セッカはそう言いながらSIDパッドを操作するとホログラムで映像を表示した。

ヤオエル型装騎ヴラシュトフカの映像と、その武器クシージェの画像データ。

「ブーステッドハンマー・クシージェ……かなり――無駄にデカいハンマーね」

「ですけど動きはかなり軽やか、ですよ。ツバメ先輩はハンマーの加速機能と、ホバー移動の足回りの良さを活かすのが上手です」

「そうらしいわね」

私はコスズメ・セッカから送信してもらったブローウィングのチーム内対抗戦の映像を見ながら考える。

粗削りで大雑把。

けれど、サエズリ・スズメの妹だけはある天性のバトルセンスが垣間見えた。

「もっとも、センスだけって感じはするけどね」

それは彼女の弱点――その1つだろう。

「やっぱり不安要素はアストリフィア・メイ、ね」

「あの人、そんなに強い……んですか?」

「それはわからないわ。ただ、アストリフィアの名はその界隈では有名よ。優秀な騎使を輩出することでね」

かつて、ステラソフィアの猛犬と呼ばれた強力な騎使が在籍していた。

彼女の名前はアストリフィア・サツキ――恐らくはアストリフィア・メイの姉だろう。

その血を継いでいるとなれば恐らく彼女も……

「情報が必要ね。装騎のデータにしろ、相手の性格にしろ情報が」

期限は3日……。

それまでになんとか情報を集めなければいけない。

これは大事な一歩だ。

この一歩を堅実なものにする為には。

「何か手を打つべきね……」



挿絵(By みてみん)

ステラソフィアTIPS

Sněhurka(スニェフルカ)

作中で言及があった通り「雪のように白い子」を意味する。

英語でいう「スノウホワイト」、ドイツ語でいう「シュネーヴィッチェン」――つまりは「白雪姫」を指す。

チェコの民話では、同名ながら全く別パターンの物語も存在する。

子どものいない夫婦が雪で子どもを作りかわいがったが、祭の日に炎の上を飛び越えたことで溶けて消えてしまうというような話である。



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