プロローグ
初めてのオリジナル作品です。
二次元と違う難しさを楽しみながら書いていきたいと思います。
お付き合い下さると嬉しいです。
「なんで…どうして…こうなった⁉︎」
それはあまりに突然の事。
意識の…いや、記憶の濁流に飲まれ、膨大な情報量にキャパ超えして地に膝をついた瞬間、私は全てを理解した。
自分が…転生者であると…
前世の私は18歳でこの世を去った。
生まれついての心臓病。
10歳まで生きられないと言われていたのに、先生も両親も頑張ってくれたと思う。
繰り返される手術の為に、私の人生はほぼベッドの上。
そんな入院ライフに必須だったのは、本とゲームだった。
ありとあらゆるジャンルを網羅し、まるで自分が体験しているかのように妄想を膨らます。
特にハマっていたのは乙女ゲームで、恋など出来ないと諦めていた私をおおいにときめかせてくれた。
『生まれ変わったら、こんな恋愛してみたいなぁ〜。』
推しキャラの美麗スチルを見ながらそう呟いたのは、
一度や二度ではない。
愛し、愛され、幸せに暮らしましたとさ。
そんな幸せを夢見ていた。
夢見ていた…筈…なのに‼︎
「いやいや、待って、おかしくない?これ絶対おかしいでしょ⁈」
いや、ここは冷静にまだ混乱する頭を整理しよう。
大丈夫。
転生して生きていた17年間の記憶も…しっかりある。
今の私はルミリア・ランフォート。
ランフォート公爵家の長女。
そしてここはフェリス王国。
建国時に妖精王オベロンとティターニアに祝福されし、豊かな自然と良質な鉄鋼の資源豊富な美しい国だ。
その為、周辺諸国からは常に狙われているのだが、フェリスの貴族階級の男子は、オベロンの祝福により剣武の才を持って産まれる者が多く、フェリス軍はただの一度も侵略を許した事はない。
また、貴族階級の女子にのみティターニアの祝福によって魔力を有して産まれる者がいるが、特に癒しや防御に秀でたそれは、フェリス軍をさらに最強のものにする。
世界規模で見ても、魔力を有する国は少ない。
だからこそ狙われているのだが、だからこそ攻め込む事も出来きず、虎視眈々と狙われている。
それが私の住むフェリス王国だ。
そう…ここは私が望んでいた世界。
私が憧れて生まれ変わりたいと願った、乙女ゲームの世界だ。
ハマりにハマって、モブのセリフすらフルコンプした、
【フェアリーガーデン☆恋する騎士との物語り】
略して【フェア恋】‼︎
フェリス王国の貴族階級の一部の子供達は、16歳になると王立アヴァロン学園へ入学する。
そして男子は政治や騎士道を学び、女子は魔法や教養を学ぶ。
ヒロインは男爵家令嬢で、乙女ゲームにありがちな『天然、鈍感、超可愛い』の設定で、豊富な魔力を持つ『ティターニアの愛し子』として元気に無邪気にスクールライフを楽しみつつ、五人の騎士と甘い恋に落ちていくのだ。
恋、友情、見ている方が恥ずかしくなる程、甘酸っぱい青春ラブストーリー。
………さて、ここで整理しよう。
私ルミリア・ランフォートは公爵家令嬢。
つまり、せっかく夢に見たフェア恋の世界に転生しながらも、ヒロインではないのだ。
そして現在17歳。
つまりアヴァロン学園にすら通っていない。
…うん、まぁ…それは百歩譲って受け入れよう。
そもそもヒロインって柄ではないのは、私が一番理解している。
けどね?
けどね?
今の状況は明らかにおかしいから‼︎
ちょっと、ルミリア・ランフォート⁉︎
あなた公爵家令嬢よねぇ⁉︎
いや、私がルミリアなんだけども!
全部私が決めた事なんだけど‼︎
「おうルミア、相変わらずスゲェ魔獣仕留めたな!」
背後から声をかけてきた、爽やか系イケメンのカーライル。
「今回の混沌の森討伐にお前と組めて運が良かったぜ!って…どうした?腹減って動けないのか?」
「…そこは『まさか怪我したのか⁉︎』だろ…」
「いやいや、この程度の魔獣でお前が怪我とかありえねぇし!」
なんだ、その全幅の信頼は…
「お前に怪我を負わせる様な魔獣が出たなら、俺は今頃あの世行きだろう?な、グリフィス領最強騎士のルミア・グリフィス様!」
……あぁ、うん。
分かってる。
『もう次の手術には耐えられないでしょう…』
担当医師と親の会話を盗み聞いてしまい、何も考えたくなかったんだよ。
だから前世の最後にハマってたゲーム…
【ティル・ナ・ローグ】
これまた王道のファンタジーアクションRPG。
平和な国に襲い来る魔界の瘴気。
魔獣を倒してレベルを上げて、武器を錬成して強化。
斬って斬って斬りまくって強くなる、超ド派手な演出が話題を呼んだ爽快アクション。
主人公は瘴気の元である魔界のゲートを世界を巡って潰して回り、最後には城に現れたゲートを通って魔界の王を倒す!…筈が、私ってばレベル上げに夢中になり過ぎて、タイムオーバーになっちゃったんだよね。
『あ〜…最後に魔王倒したかったなぁ…』
あれ?
もしかしなくても、あれが前世最後の願い⁉︎
だからなの⁈
私の手に握られているのは、細身だが刀身の長い日本刀に近い剣。
私の身体を包むのは、シンプルながらに細かな細工の施されたシルバーの胸当てと小手。
剣の速さと動きやすさを最重視した、最小限の装備。
まんま【ティル・ナ・ローグ】の装備だ。
つまり…
つまり?
「ルミア?目がおちそうだぞ?お前男のくせにでっかい目だよなぁ。睫毛も長いし、最強でイケメンとか、どんだけチートだよ!」
ルミリア・ランフォート 公爵家令嬢 17歳
前世で厳しかった神様は、最後の最後に願いを叶えてくれたらしい。
ここは妖精王に祝福されしフェリス王国。
私が今立つ場所は、フェリス王国の国境線にある、瘴気の満ちた混沌の森。
目の前に倒れているのは、私が前世で数千と倒した中堅魔獣。
どうやら私は、【フェアリーガーデン☆恋する騎士との物語り】と【ティル・ナ・ローグ】の混在した世界へと転生してしまったらしい。
3.13