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花火!  作者: 柚井 ユズル
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竜平 7

 祖父のところから盗んできたのは、玉殻、割火薬、星、それに導火線となる導線だった。これらのものを自分で作れないのはとても悔しいけれど、少なくとも組み立ての作業、いわゆる「玉詰め」は自分でできる。きちんと意図する色の星をとってきたから、自分の設計した花火が上げられるのだ。それだけでも、満足しなければ。

 翌日、和真の前でいざ組立作業をしようとした竜平は自分の迂闊さを呪った。落ち込んでいる場合ではないので、開き直って傍らの和真に聞いてみる。

 「和真、金どのくらい残ってる?」

 「聞いて驚け。俺とお前の合わせて三百十五円。……小遣いの前借ももう駄目って言われたんだけど、もしかして、足りない?」

 「もしかする。多分、ってか確実に足りない。竜頭……ひっかける部分の縄代と、打上の筒に使う缶代と、あと、和紙とか、点火するときにもう少し火薬がいるから、花火を買わなきゃいけない……。けっこうかかるかも」

 「え、ちょっと、缶って何? 打上って缶使うの? ジュースとかのでいいの?」

 「や、違う違う。ドラム缶ほどでかくなくていいんだけど……ゴミ箱よりは長いけど、あんな形の鉄製の筒が必要なんだ。木製でもいいけど。サイズが結構難しいんだけどね。あと、それを地面に固定するために縄とかも必要だしなあ。あと、大問題」

 「ん?」

 「交通費」

 「なんで? チャリじゃダメなの?」

 「会場まで火薬運ぶのにチャリは危ないし。あと、打上場所に行くわけだから、大回りして裏から回って歩いていこうと思うから結構遠いよ」

 竜平の説明に、和真は頭を抱えるようにした。

 「全部でどんくらいかかるんだ? これ」

 「……しめて、五千円くらい? 概算」

 「おお。今の俺たちには果てしなくどうしようもない数字」

 「な」

 明るく言ってみても、にっちもさっちもいかない状況に変わりはない。二人で困ったように顔を見合わせて、それから竜平は気分を切り替えるように明るい声を出した。

 ここまで来たんだからなんとかして進むしかないのだ。考えなきゃ行けなくなるまで考えずに、進めるだけ進めよう。

 「とりあえず、いますぐ必要な和紙買いに行こう。和紙だけなら三百五十円ありゃ買えるし」

 「そうだな」

 竜平の提案に和真はあっさりと楽天的に乗っかってきて、腰掛けていた夏草の上から勢い良く立ち上がる。足元でバッタが飛交うのも気にせず、和真が勢いに乗ったようにずんずんと歩き出すので、竜平は慌てて「材料」をかき集めてその後を追った。

 

 「あ」

 文房具屋で和紙を選んでいたら、関係のない文具コーナーを見ていた和真が突然頓狂な声をあげた。竜平が和真を振り返ると、和真は「あ」と叫んだ口のまま一瞬止まっていたのだけど、次の瞬間にはその表情がにまっとした笑みになった。

 「思いついちゃった俺」

 「何を?」

 「崎村募金だ」

 何故か色画用紙を手に持って、胸を張って和真は言う。

 「ナニソレ」

 「これだから学校行事に無頓着なやつは」

 和真はわざとらしく口を尖らせる。俺なんかお前の代わりにとかいってあの武井と一緒に募金活動したっつーのに、という恨み言でなんだか微かに記憶の中で埃を被っていた、元々殆ど注目していなかった事柄を思い出した。

 「あ。見たことがない崎村さん?」

 「俺見たことあるよ。集合写真で教えてもらっちゃった。去年普通に同じクラスだった」

 「学校来てたんだ」

 「なんか、体調良い時は来れるらしいよ。ここ数ヶ月来れてないだけで」

 「可愛かった?」

 「ん。普通系だけど……割と嫌いじゃないよ俺は」

 「へえ。芸能人で言ったら誰に似てる」

 ちょっと興味を持ったら和真があれ、と首をかしげる。

 「ちょっと待て。このままだとどんどん話が見えなくならないか?」

 「なるかもなあ」

 「戻すぞ! そうだよ。崎村募金。あれちょうど、七千円くらい今集まってるって武井が言ってたんだ。昨日のお前がサボったホームルームで」

 武井が意気揚々と発表している様がまざまざと浮かぶようだった。目の前の和真には悪いがサボって良かった、と竜平は内心で自分の判断の正しさを称えた。正直武井は面倒くさい。

 「俺たちで崎村に、それ譲ってくれって頼んでみねえ?」

 「それって崎村にあげるお金なの?」

 「募金だもん」

 「募金って……え? 崎村って家がそんなに貧しいの?」

 「お前ホント、何も興味なかったんだな」

 「うん」

 和真はうわあ、と言って半眼で竜平を見た。だけど、その手の攻撃は竜平には効かないと知っているからすぐにまた話を続ける。

 「崎村に河原の花火大会を見せてやるんだって。有料席買ってやるらしいよ。一般席は人ごみで無理だけど、有料席のちゃんと椅子があるトコなら行けんじゃないかって」

 「七千円じゃきかなくない? あそこ、高いでしょ」

 「でもあと三千円だから」

 「ああ。……で、それを譲ってくれって? 無理じゃない?」

 「頼んでみなきゃわかんなくねえ? 元々武井たちが勝手に言い出したことで、崎村が花火大会行きたいっていったわけじゃないんだし」

 「でもなあ」

 渋る竜平に和真はまあまあ、と気楽に言う。

 「とりあえず言うだけ言ってみようって。どっちにしろ他に手はないんだし」

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