スピード攻略
黄金の迷宮の攻略を進める為に、まずは中盤の街までの戻し作業をする事になる。
しかし、持っていた武器は扱うには不向きだったので対策を考える事にした。
逸は裏技『アイテム無限増殖』を使った。
その方法は、アイテムをアメーバの肉片、増やしたいアイテム、アメーバの肉片の順番に袋の中に入れておき主人公が回転するという裏技だ。
逸は、その手順に従いアメーバの肉片と聖なる水を袋にいれて袋を振り回してみた。
この袋は中身の質量が変わっても外見上の違いは見られないらしく、どの程度アイテムが増えたのか解らない。
「こんなものかな」
試しに袋から聖なる水を取り出すと、200個に増えていた。
しかし、この裏技のデメリットはアメーバの肉片も同じく比例して増殖する為、400個のアメーバの肉片が生成されてしまう点だ。
アメーバの肉片は、道具屋で売っても0Rの価値しかないクズアイテムなのだ。
聖なる水は、身体を清める事でモンスターと遭遇しなくなる画期的なアイテムだ。
ただし、自分のレベルよりレベルが高いモンスターには効果がない。
ハリスンのレベルは確か28のはずだが、そのまま引き継がれているかどうか定かではない。
「これだけあれば、次の街まで戦闘しなくてすむかな」
武器を持たない逸が、無事に中盤の街まで戻るにはモンスターと戦わないのが最善の手だ。
「あとは、念のためにアレを使うか」
逸は裏技『ハイパーダッシュ』を使った。
このゲームは基本的な操作にダッシュが使える。
モンスターと遭遇する確率は、歩いている時よりも高くなるが画面上は早く移動できる。
ダッシュは、歩くより少し早い程度のものだった。
この裏技『ハイパーダッシュ』は、画面切り替わり時のタイムラグを利用して一瞬で移動できる裏技だった。
村を出て西の祠に5分、次の町まで2分、ダンジョンの地下道を10分で移動して、最初の刺客と闘った場所までスキップで向かった。
「思ったより、このハイパーダッシュは疲れるなぁ 」
ゲームを操作するのとは異なり、自分自身が走ったり登ったりしなければならないので、思うように先には進めない。
また、聖なる水の効果が持続しうるギリギリの距離感で清める必要もあった。
何度か休憩を繰り返して、次の街に着く頃にはヘトヘトに疲れてしまった。
「もし、このまま宿屋で一泊したら、一瞬で朝になって疲れがとれない仕様だったら困るな 」
空はまだ明るいままで、日が暮れそうな気配は微塵もなかった。
しかし、逸にしてみればここまでの距離はマラソン大会を一日に二回走ったようなものだった。
「とりあえず、宿屋に行こう 」
真っ先に宿屋に入り、宿泊を申し込んだ。
「いらっしゃいませ。長旅ご苦労様でした。こちらの部屋へどうぞ 」
通された部屋はビジネスホテルくらいのスペースにベッドがあるだけだった。
テレビもトイレも風呂もない。
この世界に来てから腹が減るという概念はないようで、薬草饅頭もただ咀嚼して飲み込んだだけだった。
ベッドに横になると、急に睡魔に襲われた。