第5章 オーク狩
装備を買いこんだ俺たちは森の奥に進んだ、オークは人間と同じ位のサイズの豚モンスターだ、俺が1対1で戦うと多分引き分ける程度の強さだ。ゴブ吉は多分体重差で負ける。他の2匹は撲殺か体を引き裂かれてやられるだろう。その位ゴブリンとは差があるモンスターなんだ。
そこで普通の初級冒険者は穴を掘って落ちたオークを槍でブスブス刺して狩るのが主流だ。問題はオークが通る道を事前に調べる事と、人間が落ちない様にすることだ。穴の中に逆向きの槍なんかを埋め込むのは人間が落ちた時に悲惨な事になるので禁止されている。そしてもう一つの方法はオークが食べそうな物に毒を仕込むやり方だ。増えすぎたオークを減らす時などに使われる。これも毒の取り扱いが難しい事から普段は使われない方法だ。
で、俺がやるのは別のやり方だ、ゴブリン達はリーチが短いのでオークの頭や喉には攻撃が届かないのでナイフを持たせて、膝かアキレス腱を狙わせる。俺は木の上から棍棒でオークの頭を狙い落下する方法だ。俺がもう少し体重が有れば正面から狩れるが、まだオークより小さいから無理だ。
「よし、お前たちここまでオークを誘い出して来い。捕まらない様にするんだぞ。」
俺は2匹のゴブリン達をおとりにして、オークを木の下まで連れてくる様に言った。
「ゴブゴブ!」
2匹はやる気みたいだ、ゴブ吉と違って何を言ってるか分からない、、多分知能が低すぎてまだ言語になっていないから、俺に理解できないのだろうと思う。人間の赤ん坊が言葉を喋れないのと同じだ。彼らも結構レベルが上がってるのでゴブリンにしては足が速い。そして森の中では小さい方が小回りがきいて逃げやすいのだ。
2匹を送り出した後、俺は木に登る。手には3キロ位の石を縛り付けた棍棒を持っている。いや既に棍棒ではなくて小型のハンマーだな。そしてそのままオークがくるまで待機だ。ゴブ吉は近くの茂みに隠れている、万が一の場合に槍で俺を助ける役目だ。
30分程後で森の中が騒がしくなる、木の枝の音が聞こえる。ゴブリン達が帰ってきた様だ。茂みの中からゴブリンが2匹転げ出てくる。
「ゴブゴブ!ゴブ!」そして木の上の俺を必死の形相で見ている。
ブモ~!咆哮と共にオークが茂みから飛び出して来た!身長170センチ程の標準サイズのオークだ。
2匹のゴブリンに気を取られているオークに俺は木の上から飛び掛かった。
「うお~!!!」
大声を上げて自分自身を鼓舞しながら、棍棒を思いっきりオークの頭に叩きつける。
ボコっと言う割と大きな音をたてて俺の棍棒の石の部分がオークの頭のてっぺんに叩きつけられた。俺は落下の勢いのままオークに体当たりだ。着地に失敗して地面を転げまわるが直ぐに立ち上がった。
その時は既にオークは地面に倒れ、最後の痙攣をしていた。頭は顔の半分まで粉砕され口や鼻から緑色の血を噴き出していた。
「やったぞ!オークを倒したぞ!」生まれて初めてオークを倒した俺は両手を上げて叫んだ。
「シショウ・ツヨイ!」
「「ゴブゴブ!」」
ゴブリン達も大喜びだ、自分たちでは絶対に勝てない相手を一撃で倒した俺を称えていた。調子に乗った俺はその後も同じ方法で3匹のオークを狩った。
オークの魔石は1個1万ゴールドになるので、既にゴブリン40匹分の稼ぎだ。
しかし、そこで俺はこの方法の問題点に気が付いた。ゴブ吉達が全然育たないのだ。オークを一撃で倒すので安全なのだが、俺しか育たない。俺は育っても意味がない、強くならないから。
そこで攻撃力を落とすために棍棒に縛り付けていた石を外した。これで首か頭を殴り気絶させる作戦だ。そして囮役の2匹に狩らせて、成長させる。そうしないと2匹がオークに食われそうだ。
「よし、今度はオークを気絶させるからな。その後の止めはお前たち2匹でやれ!」
「ゴブゴブ!」
俺を完全に信用している2匹は何となく分かったみたいだ。ゴブ吉も何か言って説明してる様だ。それで俺達は午前中に4匹のオークを気絶させる事に成功し2匹のゴブリンに狩らせた。
「「ゴブゴブゴブ・・」」
2匹のゴブリンが何やら騒がしい、そろそろ囮に嫌気がさしたのかな~?などと考えていたらゴブ吉が言った。
「シショウ・・コイツラ・クラス、アガル」
「「ごぶごぶ!」」
2匹が跪いて俺を見上げている。
「え!こいつらクラスチェンジすんの?」
「シショウノ・チカラ・・ミセル」
何か俺のステータスが光ってるので見てみると、ゴブ吉の時と同じくクラスチェンジのアイコンが出ていた。大きい方のゴブリンはこうだ。
ゴブリン ⇒ ゴブリンウォーリアー Or ソードゴブリン
「おい、お前ウォーリアーとソードゴブリンどっちが良い?好きな方にしてやるぞ。」
「ゴブゴブゴブ」
凄く嬉しそうに何か言ってるが、よくわからなかったので、ソードゴブリンにしてやった。一瞬ゴブリンが光ったと思ったら次の瞬間には変身が終わっていた。
「オヤブン・・チガウ・・・」
クラスチェンジした最初の言葉がこれだった。どうやら俺は間違えた様だ。本人はウォーリアーになりたかった様だ、すまん俺が実質ウォーリアーみたいなもんだから剣士にした。
その後俺とゴブ吉が剣士の方がカッコ良くて強いんだと必死に説得したら凄く喜んでいた、実際150センチ位になってゴブリンにしては体型もスマートだ。
名前 なし
種族 ソードゴブリン
レベル 1
HP 100
MP 30
力 90
体力 100
知力 90
速さ 90
スキル 剣士レベル1 忠誠レベル1
うん人間並みの能力になってる、というかあれだけ苦労してやっと普通の人間並みだ。元が弱いせいでここまでしてやっと人並みとはゴブリンってマジ悲惨。名前が無かったのでつけてやる事にした。
「よし、今日からお前の名前はアーサーだ!人族の英雄の様に強くなれ!」
「オレ・アーサ!・・・カッコ・イイ!」
大変な喜びようだ、踊りだしている。その一方でゴブ吉が落ち込んでいる。
「オレヨリ・カッコイイ・ナマエ・・・・・」
その後俺の古着をやったら喜んで着ていた。チョット大きいがその内丁度良くなるだろう。さてもう一方のゴブリンだが違う方向に進化したようだ。
ゴブリン ⇒ ヒールゴブリン Or メイジゴブリン
「お前はヒールゴブリンかメイジゴブリンになれるぞ。メイジゴブリンはゴブ吉が居るから、ヒールゴブリンでいいか?」
「ゴブ!」
多分良い様なので、クラスチェンジさせた。一瞬光ってやはり少し大きくなった。
名前 なし
種族 ヒールゴブリン
レベル 1
HP 90
MP 100
力 80
体力 90
知力 100
速さ 90
スキル 回復魔法レベル1 忠誠レベル1
こっちも人間の回復魔法使い並みになった、凄いじゃん俺より役に立ちそうじゃん。やはり名前が無かったのでつける事にする。
「お前の名前はバーバラだ、世界一綺麗な回復魔法の使い手になれ!」
「アリガトウ・マスター」
そう、このゴブリンは雌だったのだ、進化して140センチ位になったら、胸が出ていたので気が付いたのだ。最もサルみたいなもんで、女では無くて雌だ。裸なのもチョットかわいそうなので布でマントを作ってやった。
「マスターヤサシイ・マスターニ・ツクス」
何か変な喜び方だった、可愛い兎耳ちゃんに言われたら嬉しいだろうがゴブリンに言われても正直余り嬉しくなかった。
「ヤッパリ・オレヨリカッコイイ・・・」
ゴブ吉が更に落ち込んだ。
あれこれって普通の冒険者パーティーみたいなもんじゃネ、剣士・攻撃魔法使い・回復魔法使いだもんな俺が盾と槍持ったら普通のバラスの良いパーティーだわ。正面からオーク2匹位ならいけるんじゃね?でもその為にはまず装備だ。剣のない剣士は弱い、魔法使いにも防具と魔法強化用の杖が必要だ。初心者用装備でも2人分で100万ゴールドはかかる、つまりオークを後100匹狩らなくて一人前には成れないのだ。
「よしお前ら、オークを100匹狩って装備を買うぞ!」
「「「オー!!!ごぶ。」」」
それから俺は囮役をアーサーに任せ、バーバラはバックアップに回した。誰かが怪我をしたら直ぐに治してもらうためだ。そうすると直ぐにアーサーがレベルアップした。
「レベル・アガッタごぶ」
名前 アーサー
種族 ソードゴブリン
レベル 2
HP 100 ⇒ 105
MP 30 ⇒ 30
力 90 ⇒ 95
体力 100 ⇒ 105
知力 90 ⇒ 90
速さ 90 ⇒ 95
スキル 剣士レベル1 忠誠レベル1
これは凄いケンタと同じような伸びだ、これは強くなる。やる気を出した俺達はその後3匹のオークを倒して元の森の住処に帰って、晩飯を食べて寝た。
アーサーの身体能力が上がったせいで楽にオークを狩れる様になった俺達は僅か1週間で100個の魔石を集める事が出来た。当然アーサーとバーバラのレベルも上がった。
1週間分の稼ぎをギルドに持って行った俺は110万ゴールド程を受け取ると、武器屋に行きアーサー用の中古の剣と盾、バーバラ用の杖とマントを買った。そして余った金で調味料とパンを買い、森に戻る。肉は森で沢山取れるので買う必要がないのだ。俺は完全に野生化していた。
そして装備を整えた俺達は更に楽にオークをジャンジャン狩っていた、森のオークが全滅する勢いだ。なにせレベルアップして剣と盾を装備したアーサーはオークなら1対3でも勝てる位強くなった、バーバラはライトの魔法を使い相手の目をくらませている。バーバラは非常に頭が良くなったのだ。
そんな生活を1ヶ月続けていると又クラスチェンジがやって来た。
「マスター・クラスチェンジデス」
「お~又強くなるな、お前達。凄いぞ!」
今回はバーバラを先にしてみた、光って又少し大きくなって150センチ位になって、又胸が大きくなって今度はCカップ位になった、見た目もゴブリンから少し不細工な人間並みになった。
名前 バーバラ
種族 ハイヒールゴブリン
レベル 1
HP 120
MP 200
力 100
体力 120
知力 105
速さ 110
スキル 回復魔法レベル2 忠誠レベル2
すげー成長だ。すでに人間の中級魔法使いクラスのステータスだ。それよりも俺はおっぱいが大きくなった事と少し可愛くなった方が嬉しかった。
「アリガトウ、マスター。マスターオセワスル」
バーバラのおっぱいを見ていると妙な気がしてくるので、アーサーのクラスチェンジをした。これまた光った後で体が少し大きくなった。俺と同じくらいの身長だから170センチ位になった。
名前 アーサー
種族 ハイソードゴブリン
レベル 1
HP 200
MP 40
力 200
体力 150
知力 100
速さ 160
スキル 剣士レベル2 忠誠レベル2
うん凄い!人間ならばCランクの剣士です、もう1流と言われるステータスです。因みにBランクは達人級、Aランクは怪物級です。Sクラスは勿論伝説級です、今はいませんから。
「シュジンニ・コノ・ケンヲ・ササゲル」
知能が上がったせいで、アーサーの言葉が増えたようだ。
「うん、まあ頑張ってくれ。」
そこで俺はある事に気が付いた、俺とゴブ吉全然レベル上がってね~!!!まずいジャン。