第33章 王城消失
船に帰って来ると浮浪児達が増えていた。痩せてボロボロの服を着た小さな子供達が5~6人いたのだ。
「よう、ただいま。」
「おかえり男爵。」
「駄目だよジュン君!男爵様って言わないと殴られるよ!」
「はは、心配するな俺はそんな事気にしないぞ!」
公爵から奪った金や食料をドンドン船に積み込む。馬車5台分の財宝が有ったので結構な量だ。食料はもっと多いので船に載らないかも知れない。乗らない場合は1隻船を貰っていく事にする。操船できないが、俺達の船にロープで繋げば大丈夫だろう。
「お前達腹減ってないか?一緒に飯食うか?」
「減ってる!食う!」
「そうか、沢山食えよ。」
「ゴブリン共よ、食い物を集めてこい!」
丁度ここは港だ、いろんな物が沢山有るのでゴブリン達に集めさせることにする。子供達に倉庫の場所を聞いて色んな目ぼしい物を集めた。金なら公爵の城から持ってきたのが山ほど有るので物を貰ったらその場に少し金を置いて来た。人が全然居ないので払えないのだ。子供達にも服なんかを取って来てやったら喜んでいた。結局船2隻分の食料や日用品を貰っていく事にした。これ以上は船に載らないので仕方がない。
「うわ~美味しい!」
「こんなに一杯食べて良いの?」
「いいぞ、ドンドン食え。公爵のおごりだ。」
「男爵って海賊なの?」
「違うぞ、普通の領主だ。」
子供達のなんで攻撃が始まったので、今までのいきさつを話してやったら納得していた様だ。かれらは子供だが非常に現実的だ、じゃないと生きていけないから。へたな大人より現実の厳しさを知っている様だった。ここまで来たらついでだこの子達を連れて帰って育てる事にする。ゴブリンは細かい手作業が苦手なので彼らが補ってくれれば良いと思った。ゴブリンは力仕事や狩が得意なのだ。
「お前ら、俺の領地に来い。腹いっぱい食わせてやるぞ。」
「本当?」
「本当だ、ただしちゃんと働けよ。」
「でも俺達、小さいから力がないんだ。」
「力仕事はゴブリンがするゴブよ、皆は出来る事をすれば良いゴブ。」
「そうですな、勉強もしてもらわないといけませんな。」
「わたし、服をつくりたいな~。」
「私は花やさんに成りたい。」
「よしよし、何でもなりたいモノになれ。俺の村は自由だからな。頑張れば何にでもなれるぞ。」
次の日俺達は王都に向けて出港した、後ろに荷物を満載した船を曳いてるがゴブリン達はものともせずに漕いでいる。海が荒れなければ3日位で着きそうだ。ゴブ吉は早速子供達に読み書きを教えていた、エリカ達女衆は女の子達に料理を教えて楽しんでいる様だ。俺は暇だったので魚を釣って皆の食料に少し貢献していた。レベルがやたら高いせいなのか物凄く沢山釣れた。
「主殿、王都が見えますぞ。」
「おお、海からみるとデカイな。」
王都、この国最大の都市である。人口は50万人近い巨大都市だ。
「王都の警備艇が来ます。」
「偉く沢山警備艇がいるな。早馬か何かで俺達の情報が回ってる様だな。」
「どうするゴブか?」
「いつもと同じ、邪魔するヤツには容赦しない。赤い鎧は皆殺しだ。」
流石は王都、20隻程の警備艇や軍艦が俺達を止めにきた。どれも小さな船だ一番大きい船でもこの艦の半分位しかない。しかし結構士気は高い様だ、横一列でこちらに向かってきている。
「ゴブ吉、派手に行け!」
「ふふ、使ってみたい大技が有るゴブ。」
「おお、どんどんやれ。魔力なら貸すぞ。」
「じゃあ、やるゴブ。ファイアボムは飽きたゴブ。」
今まで無詠唱で魔法をぶっ放してきたゴブ吉が、珍しく詠唱を始めた、指で印まで結んでいる。何だか俺からの魔力供給量も洒落にならない多さだし周囲にやばそうな雰囲気が漂ってきた。俺達の船の上空にオレンジ色の巨大魔法陣が浮かび上がる、とても綺麗な魔法陣だ。夜ならいい見世物になりそうだ。
「アルティメット・ファイアーランス!発動!」
魔法陣から100メートルを超える炎の槍が出現した。急激に加速して敵の艦隊の中央付近に着弾し爆発する。敵艦隊は一瞬で爆散し辺りは水蒸気の白い霧に包まれる。腹に響く爆発音に続いて、爆発の余波の高波が俺達の船を襲った。
「皆、何かに掴まれ!高波が来るぞ!」
「やり過ぎたゴブね~。」
「はは、こっちも沈みそうだぞゴブ吉。」
「笑い事では、有りませんわマスター、ゴブ吉様は悪乗りし過ぎですわ。」
最近では俺やゴブ吉に意見出来るのはエリカ達雌ゴブリンだけになっていた。何せ二人とも神の領域に達しているので配下のゴブリンは逆らわないのだ。しかし、彼女達は俺達のことを手のかかる子供みたいに思っている様で色々言うのだ。そして俺達2人は女に弱かった。
「すまんゴブ、」
「うむ、もうちょっとだけ考えて行動しような、ゴブ吉。」
10メートル程の高波をやり過ごし港に突撃する。巨大なファイアーランスは港や海上からも見えたようで皆俺達の船から逃げようとしていた。しかし桟橋には兵士が大勢整列して俺達を待ち構えている様だ。大体5000人位か?流石は王都の兵士だ、逃げないとは立派な心がけだ。しかし、あのファイアーランスを見て逃げないのだから馬鹿でもあるな。
「魔道部隊、合唱魔法用意!」
「魔道部隊も新しいのをヤルみたいゴブよ。変なスイッチが入ったみたいゴブ。」
「よかろうやれ!二度と俺達と戦争する気が無くなる様な奴を見せてやれ!」
「合唱魔法攻撃開始!」
敵の上空に今度は赤い魔法陣と青い魔法陣が浮かび上がった、それぞれの魔法陣から赤い、炎で出来たドラゴンと、青い、水で出来たドラゴンが飛び出して来た。巨大な2匹の竜が桟橋の上の兵士たちを襲う。魔法で出来たドラゴンなので物理攻撃は通じない、魔法には魔法で対抗するしかないのだが、国中の魔導士を集めても俺の魔道部隊にはかなわないだろう。くぐって来た修羅場の数が違うのだ。
3分程で兵士を食らいつくした2匹のドラゴンは又魔法陣へ帰って行った、どうやら合唱召喚魔法だったらしい。ドラゴンを呼び出すとは凄く羨ましい魔法だった。
「ゴブ吉、今の召喚魔法なのか?」
「そうゴブ。召喚こそ最強~!とか言ってあいつ等練習してたゴブよ。」
「もしかして、俺のまねか?俺は召喚出来ないけど。」
「勿論そうゴブ、召喚士はゴブリンの憧れのスキルだゴブ。」
「主殿、拙者達も活躍したいでござる。」
「次は地上戦だ、アーサー達が主役だ、敵を蹴散らして王の城まで道を切り開け!」
上陸した俺達は王の住む城に向けて行進する。先頭はアーサー達ソードゴブリン隊、次に旗を持たせているキングゴブリン隊、そして俺とゴブ吉とヒーラー隊、その後ろは魔道部隊、そして最後がジェネラルウオーリアー隊だ。キングゴブリンは有名なので王都の人間も名前ぐらいは知っているだろう、1匹で村や町を滅ぼす災厄なのだが、俺達の部隊にはキングゴブリンが400匹いるのだ、2メートル半の緑の巨体を揺らしながら行進する彼らは如何にも強そうだった。
途中で僅かな迎撃隊が現れたが、一瞬で道にまき散らされて死んでいった。王都の人間は息をひそめて家に閉じこもっていた。物陰からの視線を強く感じる。そうだ、良く見ておくと良い、これが俺の軍団だ、人間ごときが勝てる様な生温い軍団ではない。俺達ゴブリンを見かけたら人間共は息を潜めて隠れるしか生き残る道は無いのだ。人間が強いと勘違いしていた愚か者共に真の強者を見せてやろう。
「何だか見た事る連中が居るゴブね。」
「そう言えば、見慣れた連中がいるな。」
街の城門の正面に5000人程の冒険者達が陣地を造って俺達を待っていた。街を守ろうという事だろう。立派な心掛けだ、拍手したくなるな。
ゴブリン軍団が構わず行進していくと、陣地の中からギルマスが出て来た。
「男爵!一体何のつもりだ。なんで謀反なんて起こすんだ!」
「何の事だ、俺は謀反なんて起こしてないぞ。」
「辺境伯と公爵領を滅茶苦茶にしたそうじゃねーか!」
「当たり前だ、兵士を送り込んで俺の村人や嫁を殺したんだ仕返しするのが当然だ。」
「えっ!反乱じゃねえのか!」
「お前は、強盗が家にやって来て家族を殺されても仕返ししないのか?ギルマス。」
「仕返しするに決まってるだろ、皆殺しだ。」
「意見が一致して嬉しいぞギルマス!俺の邪魔をするなどけ!」
ギルドの職員が陣地の中から走って来た。鑑定スキル持ちの職員だ、俺達をさっきから必死で鑑定していたので好きにさせておいたのだ。妨害するのは簡単だが力の差を知るのは良い事だ。蟻が魔獣に勝てると思うならやると良い。
「そんな!・・・レベル999・・・神級スキル!・・・馬鹿な・・・」
「分かったかねギルマス。お前らに勝ち目は全然無いぞ。死にたいなら殺してやろう。」
「アーサー!進軍だ!時間が惜しい。」
「全軍前進!」
緑の軍団が再び動き出す、冒険者は進路から慌てて逃げ出している。当然だ冒険者は匂いで強者が分かるのだ。
「扉をぶち壊せゴブ吉!」
「了解!メガ・ファイアーボム!」
城壁の正門を吹き飛ばし俺達は王の城へと進む、冒険者共は消し飛んだ正門からこちらを見ている様だ、手出しをすれば正門と同じ運命を辿る事に気が付いた様だ。
「マスター、あれが王の城ですか?」
「そうだ、この国の貴族の親玉が住んでる所だ。」
「ほう、兵士達が青い顔をして守ってますな。」
「俺達の家よりだいぶデカいゴブな~。掃除が大変そうゴブ。」
「それはいかんな、掃除がやりやすい様に小さくしてやろう。ゴブ吉粉々にしてやれ!」
「丸ごと吹き飛ばして良いゴブか?」
「公爵が消し飛ぶと困るな。じゃあ城の上だけ吹き飛ばしてくれ。」
ゴブ吉が城の上部を見つめると、次々と爆発が起こり少しずつ城が削れていった。城壁を守っていた兵士は信じられない物を見たという顔をして、城の方を食い入る様に見つめている。城の中からは悲鳴が聞こえて来て中から人がワラワラ飛び出して来た。
「そろそろ、中も空になったころかな?魔道部隊合唱魔法用意!城をぶち壊せ!」
「お任せ下さい神に捧げる究極魔道をお見せしましょう。」
魔道部隊もノリノリだ、この日の為に頑張った成果を俺に見せたくてしょうがない様だ。この国の王や貴族共に特大の魔法を見せてやるが良い、愚か者共が未来永劫忘れない様に。
城の上空に6色の巨大魔法陣が浮かび上がる、ゆっくり回転している魔法陣は中々綺麗だった。100メートル程の巨大魔法陣なので王都に住む全ての人間に見えるだろう。今日と言う日とこの魔法陣を死ぬまで忘れないだろう。
「師匠、魔力貸すゴブ!」
「いいぞ!ゴブ吉もやるのか?」
「当然ゴブ!師匠と俺が加わって完成する魔法ゴブ!」
ゴブ吉が詠唱を開始すると魔法陣に1色加わり7色になった。これで完成する魔法陣の様だ虹が円を描いて回転している様な幻想的な景色だった。
「神級究極魔法・神の光!発動!」
7色の回転する魔法陣から真っ白な光がゆっくり降りて来た。真っ白なのに眩しくなく、音もまるでしない。しかしその光りに触れた建物は音もなく消え去ってゆく。真っ白なな光が消えた時、王や貴族や人間が何年もかけて作り上げた城が跡形もなく消滅していった。
そして全ての兵士と王は俺達に降伏した。城に隠れていた公爵は俺に引き渡された。王族や貴族は自分達よりも遥かに上位の存在が有る事にやっと気が付いた様だった。男爵である俺の前に全ての貴族と王族がひれ伏したのだ。
「やったなゴブ吉!俺達の勝ちだ。」
「当然ゴブ!これからどうするゴブか?王族ボコるか?」
「ふっ、俺に考えが有るんだ。任せろ。」
「召喚神様に任せるゴブよ。」
「ふん、任されたぞ!魔導神様!」
俺達ゴブリン軍団はゆっくりと何も無くなって更地になった王城跡地に入って行った。王都のど真ん中に俺達の緑の旗が悠然と翻っているのは意外とカッコ良かった。




