第32章 ゴブリンの旗
さてもう少しで終わりですね。後少しだけお付き合いし下さいませ。
人外魔境に帰った俺達は船を造る事にした。陸路は遠いし人間たちに出来るだけ被害を与えたくないからだ。木は大森林に腐るほどある。魔道ゴブリンも大勢いるので木の加工も簡単だった。大勢のゴブリン達には畑を造らせたり、森に狩に行かせたりして過ごしていた。今回の船は200本のオールを持つ大型艦だった。壊された造船所を修復拡大し2隻同時に造っている。これが出来上がった時が公爵の最後だ。
「男爵、ナルト伯爵が来たゴブよ。」
「おお、そうか。」
わざわざナルト伯爵が俺に会いに来てくれた様だ。
「よお男爵。元気そうだな。」
「やあ、伯爵お久ぶりです。」
「今回は大変な目に会った様だな。村の奴らから聞いた。」
「ええ、大勢死にました。」
「あの馬鹿共は一体何を考えてるんだ。見栄で村人殺すとか頭がおかしいんじゃないか!」
「ええ、辺境伯は馬鹿でした。もう二度と悪さは出来ませんけどね。」
「そうか、やったのか。」
それからナルト伯爵と色々な話をした。中身の無い貴族が増えた事、平和過ぎて馬鹿が貴族に大勢なった事、昔は馬鹿は戦争に負けてすぐ死んだので、それなりの才能が有る人間しか貴族になれなかった事など。
そしてもう少し俺の村人達を預かって貰う事にした。公爵を討伐しないと又襲ってくるかも知れないからだ。
「伯爵、この手紙を王に渡してもらえますか?」
「何だこれは?」
「宣戦布告です。」
「今度は国と喧嘩するのか?」
「はい、馬鹿が国を治めると碌なことに成りませんから。」
「はは、スゲ~な男爵!応援してるぜ!思いっきりやれ!」
今の国は腐っていた、平民を守る為に国や貴族が有る訳ではなく、ただ平民に寄生しているのが王都に居る貴族達だ。平民から集めた金で毎晩パーティーを開いている馬鹿共だ。俺はこの国の貴族を全部首にするつもりだ。ナルト伯爵の様にまともに領民に慕われている貴族は又領主となって活躍するだろうし、辺境伯の様な無能は住民によって裁かれるだろう。つまり今までの生き方が住民によって裁かれるのだ。裁かれない場合は俺が直接裁くだけだ、俺には王以上の戦力が有り誰にも止められない。結局、貴族だの王だの言うのは武力が裏付けに有るだけで動物同士の縄張り争いと同じなのだ。
「ゴブ吉、何だか凄い事になって来たな。」
「神ってのは大変ゴブな。」
「はは、お前も神だろ?魔道神だったか?」
「そう言えばそんな感じだったゴブね。」
「男爵にならなくて、今でも森に住んでたらどうなってたんだろうな?」
「今でも森で魚取って、皆で仲良くいられたのかな?」
「いられたかも知れないし、強い魔物に、皆食われてたかも知れないゴブね」
「先の事は分からないって事か?」
「過去は変えられないし、未来は分からないゴブよ。」
「そうだな、精一杯頑張るだけだな。今までもそうだったし、これからもそうだ。」
2週間で巨大戦艦は出来上がった。強大なゴブリンの実力が見て取れる戦闘用の船だ。200本のオールを漕ぐのは全てジェネラルウォー以上のゴブリンなので信じられない程の速力と持続力が有った。今回は船に各600程のゴブリンを連れていく事にした。10万を超えるゴブリン達全員が行きたがったが、船に乗れないので、俺達の領地を豊かにしてもらう事にした。全部で1200のゴブリンだが公爵や国を倒す位なら十分な戦力だ。
村に残るゴブリン達に人魚を紹介して仲良くして貰う様にした。人魚が魚をくれたら、ゴブリンが森や畑で採れた物をあげる簡単な関係だ。今は戦闘に特化したゴブリンばかりなので難しい事は出来ないが、俺が落ち着いてきたらもっと平和なゴブリン達が生まれて来るはずだ、女のゴブリン達も大勢いるので将来的には以前より豊かな強い領地になるだろう。
「さて行くかゴブ吉、最後の戦いだ。」
「人間に本当の恐怖を叩き込むゴブ!」
「二度と俺達の領地に来ない様に、徹底的にやるぞ!」
船が完成したので早速、公爵領に向けて出発する。人魚が公爵の港を教えてくれるので一緒に出発だ。
「人魚さん達、ありがとう。宜しく頼むよ。」
「任せて男爵、あの人達を懲らしめてね。村の人達に酷い事したのよ。」
「任せて、二度と悪い人間がオオイタに来ない様にするからね。」
人間の船で4~5日掛かる工程を2日でこなし公爵の治める領地の港に着いた。周りには結構な数の小船がひしめいている、漁船や交易船だろうか。俺らの船が珍しいせいか皆関心が有る様だ。手を振って来る船には愛想良く手を振り返してあげた。
「マスター、いよいよですね。」
「ああ、やっと敵がうてるよ。」
今回の遠征にはエリカが付いて来ていた、襲撃の際に受けた傷は今も当時のままで、左腕が無かった。自分で治す力は持っているのに公爵を殺すまでは治さないのだそうだ。痛々しいから治す様に言ったのだが、彼女はどうしても譲らなかった。多分彼女なりのケジメなのだろう。片腕で俺の世話を色々やくのは結構痛々しいものがあったが、彼女の気が澄む様にさせておいた。
「マスター、警備艇です。赤い鎧の兵士が載っています!」
「ゴブ吉、攻撃用意!赤い鎧を着たヤツは皆殺しだ!」
「了解!派手に行くゴブか?」
「ああ!派手に行くぞ!ゴブリン様のお通りだ!」
俺の船に緑色の旗が翻る、ゴブリンを表す緑色と2本の角の生えた怒ったゴブリンの顔が描いてある旗だ、これが俺達ゴブリンの国の旗なのだ。一月もたてば知らない者はいなくなってるだろう。
「行くゴブ!メガ・ファイアーボム!」
警備艇が海面から消し飛んだ、破片が100メートル程上空まで吹き上げられている。少しして色々な物が海面にバシャバシャ落ちて来た。生きている人間が居るとは思えないが、いたとしても人魚が許してくれるとは思えない。
「やるなゴブ吉!派手で良いぞ!」
「ファイアボムの1000倍の威力が有るゴブ。音も1000倍煩いゴブ。」
警備艇が吹き飛ばされるのを見て、周りの船は俺達が危険な船である事に気が付いた様だ、急いで離れようとしていた。港の奥の方にある軍艦らしきものも出向の準備を始めた様だ。
「主殿、後ろから軍艦が一隻来ますぞ。」
パトロールでもしていたのであろうか、いつの間にか一隻の軍艦が俺達の後ろから近づいて来ていた。と言ってもたったオール30本の小型艦なので積んでるバリスタも大した威力は無い。
「ゴブ吉、後ろの艦にも攻撃させろ。」
「了解、魔道部隊、迎撃するゴブ!」
両艦が射程距離に入った瞬間、バリスタと魔導士100人の撃ち合いが始まる。当然だが相手の船は爆発炎上して沈んでいった。これを見て港は更に大騒ぎになっていた。
「ゴブ吉、奥に居る戦艦は全部沈めろ!」
「了解、魔道部隊攻撃用意!」
「アーサー上陸部隊の用意を開始しろ!」
「準備良しでござる!」
「エリカ、ヒーラー達をまとめろ。全員で上陸だ!」
「はい、マスター。ヒーラー隊集合!」
港の武装艦は全て沈める、兵士の乗った船も同様だ。公爵だろうがなんだろうが二度と俺の領土に入らせない。良い兵士は死んだ兵士だけだ。
「全員、上陸開始!」
船を桟橋に横付けし甲板から3メートル程下の桟橋に飛び降りる。赤い鎧の兵士達が俺達の上陸を阻止しようと集まって来るが無駄だ。赤い鎧を見て怒り狂ったゴブリン達に八つ裂きにされて地面にばらまかれている。
「アーサー、隊列を組ませろ。」
「了解、戦闘陣形を取れ!」
1200のゴブリンを綺麗に並べて、公爵の屋敷に進軍する。魔獣の強さと人間以上の統制を見せつけてやるのだ。
「うあわ!食べないで!」
痩せた子供が俺達を見て悲鳴をあげた。ボロボロの服を着た浮浪児か孤児だろうか?
「お前を食ったりしないぞ。兵士と公爵は殺すがな。」
「俺なんか食っても不味いから!」
「お前、怪我してるじゃないか。おいエリカ治してやれ。」
俺達から逃げる大人に巻き込まれて怪我をしたようだ、港で働いて小銭を稼いでいる浮浪児だった。小さな子供達を養ってるらしい。
「お前は中々見どころが有る様だな。俺の領地に来るか?いっぱい仕事が有るぞ。」
「えっ、俺達を使ってくれるのか?俺達浮浪児だぞ。」
「それがどうした、俺は孤児だし、こいつらゴブリンだぞ。」
「あんた変わった貴族だな。」
「そうだ、俺は変な男爵だ。来る気が有れば船を見張っておいてくれ。公爵をぶち殺したらすぐ帰って 来るからな!」
「分かった、見張っとくよ。」
「頼むぞ坊主!全軍前え!進め!」
なんで浮浪児を俺の領地へ誘ったのかは良く分からない、多分昔の自分に似ていたからだろう、精一杯頑張ってるんだから腹いっぱい飯が食える様にしてやりたかったんだと思う。
「見えました主殿、あれが公爵の屋敷でしょう。」
「ほう、豪勢なもんだな。」
街の一等地に馬鹿でかい城が建っていた、城壁と堀まである立派な城だ。城門を固く締め兵士が中で大騒ぎしている。
「ゴブ吉!派手に行け!」
「魔道部隊、俺に合わせるゴブ!ギガファイアーボムと合唱魔法を同時に撃つゴブ!」
「ゴブ吉、魔力足りるか?」
「ちょっと厳しいゴブね。魔力を供給して欲しいゴブ。」
「任せろ俺は無駄に魔力が有るからな。」
レベル999の俺は魔法が使えないのに膨大な魔力量を持っていた。ただの飾りかと思ったら、ゴブ吉や配下のゴブリンに魔力を供給出来る事が分かった。其れからはゴブリン達の非常用の魔力タンクとして俺は常に魔道部隊の傍にいる事にした。
「魔道部隊ぶっ放せ!」
城門を中心に巨大な魔法陣が発生し、そして爆発した。城門から半径100メートル程は消失して城も半分崩壊していた。城の中からは悲鳴やうめき声が聞こえて来る。
「全軍突撃!公爵を捕まえろ!」
抵抗できる兵士はごく少数しか居なかった、丸腰の村人には元気が良くても魔獣相手には魂が抜けて悲鳴を上げて逃げる事しか出来ないらしい。勿論抵抗しようとしまいと関係なくドンドン殺してゆく。こいつらは背中を向けると切り付けて来るクズだからだ。
戦闘員ではないメイドの恰好をした者や執事みたいな者は逃がしてやる。俺は赤い鎧を着た連中と公爵の命が欲しいのだ。
「主殿、どうやら公爵はいない様ですぞ。」
「くそ、逃げたか?」
「ちょっと誰か捕まえて聞いてみるゴブ。」
逃げ出した執事を捕まえて聞いてみる事にした。
「おい、お前。公爵はどこだ?」
「公爵様はただいま王都にいらっしゃいます。」
「何だと!」
「勘弁してください、殺さないで!」
「殺さないから安心しろ。ついでに宝物庫の在り処を言え。」
公爵はここには居ない様だ、だが王都に隠れていても無駄だ。今から俺達が行くからな。折角公爵の城まで来たので財宝や貯めこんでいた食料を全部持って行く事にした。
「アーサー。公爵の貯めこんでた物は全部かっさらえ!」
「了解。ゴブリン共!食い物と金を全部持ってこい。」
公爵は城の地下に大量の金や財宝を貯めこんでいた。俺は金や財宝に興味はないが。公爵に嫌がらせをする為に全部奪ってやった。荷車や馬車を分捕って船へと帰る。何だか海賊になった様な気分だ。
「なあゴブ吉、男爵やめて海賊になろうか?」
「面白そうゴブね、悪い奴だけ襲う海賊。」
「主殿、拙者も付き合いますぞ。」
次は王都だ、公爵を捕まえて王もぶん殴ってやるのだ、平和ボケした連中に恐怖と真の強者を見せてやる。




