表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリン召喚士  作者: ピッピ
29/34

第29章 辺境伯軍


 海賊退治の終わった俺達の村は順調に交易をおこなっていた。造船も慣れて来たのか2か月半で新しい船が出来上がった。海賊の教訓を生かしてこの船も前後に大型バリスタを装備していた。また、クニサキからも船の注文が2隻入ったので、造船所をもう一か所増やして同時に2隻造れる様にした。

 景気が良くなってきたので村の人口もどんどん増えて来た、今では800人程が暮らしている。ゴブリン達は進化した影響か余り増えなくなっていた。ほぼ人間並みの増え方に落ち着いてきていた。


 「村長、順調だな。」


 「そうですな男爵。」


 「交易も観光も順調、作物の出来も良いようだ。」


 「この分だと今年も豊作になりますよ。人も増えてきて益々景気が良くなります。村の皆も大喜びで   す、貧しかった昔が夢のようですな。」


 「ここは海と山と温泉の有る良い所だからな。」


 海賊の襲撃が有ったもののそれ以外は非常に上手く行っていた。オオイタ村始まって以来の好景気だった。そこに更に嬉しい知らせがやって来た。


 「マスター、大変です!バーバラ様が!」


 「どうした!エリカ。」


 「ご懐妊です!おめでとうございます!」


 「何だって、懐妊!」


 「おお、これはめでたい!男爵様おめでとうございます!」


 バーバラ懐妊の知らせは瞬く間に村中に知れ渡り村はお祭りムード一色になった。ゴブリン達も大層喜び皆俺とバーバラにお祝いを言いにやって来た。なにせゴブリンの神とその妃に子供が出来たのだ、ゴブリン達は一族を上げて盛大に祭りを開くことにした。


 「マスター、私恥ずかしいですわ。皆が大喜びなんですもの。」


 「俺も皆が喜んでくれてるのが、嬉しいような恥ずかしい様な感じだな。でも子供が出来たのは素直に  嬉しいよ。」


 「恥ずかしくないゴブ。おめでたい事ゴブ!」


 「そうですぞ主どの、拙者も次の主君の顔を早く見たいでござるよ。」


 俺も嬉しかったのだが、バーバラと俺の子供がどんな姿で生まれてくるのかが心配だった。俺に似た人間の子として生まれて来るのか、それともバーバラの以前の姿のゴブリンとして生まれて来るのだろうか?まあゴブリンとして生まれてきたら、又ゴブ吉の様に、俺が背負ってクラスチェンジを繰り返せば良いだけだ。


 「エリカ、エリザ、バーバラの事はよろしく頼む。」


 「任せて下さい。マスター。奥様のお世話は私たちがしますわ。」


 全てが上手く行っていた。造船・農業・道・交易それに俺の子供。皆が頑張った結果が出てき始めたのだ。そういう時だった。


 「主殿、辺境伯に動きが有るようです。」


 「そうか、又来るか。」


 「しつこいゴブね。」


 こちらの農作物の取入れが終わったと言う事は、向こうも終わったと言う事だ。戦争を仕掛ける食料と兵士が集められている様だ。


 「こちらも迎撃の準備をしなくてはいけないなアーサー。」


 「そうですな、今回の敵は如何程でしょうな?」


 「どっちにしろ、村を荒らされる訳にはいかないゴブね。」


 「そうだな、国境で迎撃する必要が有るな。」


 俺達は又辺境伯軍を迎え撃つ準備を始めた。今回は国境での迎撃戦なので森の外側だ、大量の物資を運ばなくてはならない。戦闘員のゴブリンが500名と物資を運搬するハイゴブリンを300名程選抜する。村の馬も総動員だ、折角の豊作もこの迎撃戦で使い果たしそうだ。辺境伯のお陰で大迷惑だった。


 「主殿、辺境伯軍が進軍を開始したようです。」


 「そうか、ならこちらも国境まで出撃だ。」


 辺境伯の領地に偵察に出して居た者から情報が入って来たので、こちらも出撃の準備をする。少数の部隊を動かすだけなら周りに知られずに行えるが、大きな舞台を動かすには食料等の補給物資も大量に用意しないといけないので、監視していれば容易に部隊の規模や活動時期が分かるのだ。勿論向こうも観光客か商人としてこちらの領地に入って活動しているはずだ。


 「主殿、出撃準備整いました。ご命令を!」


 「よし、前軍出撃。」


 「マスター、お気をつけて下さいね」


 「うん、行ってくるよバーバラ。」


 「師匠は大丈夫ゴブ、俺達がついてるゴブよ。」


 今回は全部で800名のゴブリンを連れて森の中を通る、こっちの方向には道を作っていないので国境までは約4日の道のりだ、人間ならば1週間程かかるかも知れない。狭くて曲がりくねっているからだ。隣と交易でもするのなら、道を作れば2~3日で森を超える事が出来るだろうが、隣が軍隊を送って来るので危なくて道も引けなかった。そしてバーバラは今回は村で待機だ、お腹が大きくなってきてたので、こんな事はに連れて来る訳には行かなかった。


 「今度の相手はどの位だ?アーサー。」


 「情報によるとかなりの人数です、推定8000人。」


 「凄いな、辺境伯が動員出来る限界じゃないか。」


 「今回は本気と言う事でしょうね。」


 前回は300人という中途半端な人数を出した為に一瞬で全滅した反省なのか、面子の為なのか知らないが今度は最大動員数を派遣して来ていた。ナルト伯爵が辺境伯をけん制する為に国境に2000名の軍隊を送って駐留させてくれていたので、ナルト伯爵の方面にも辺境伯軍が2000名程向かっている事を考えると今回は1万人の兵士を動かしている。

 数の上では圧倒的に不利だが、質では完全にこちらが勝っている。アーサーとゴブ吉に勝てる人間はいないし、他にもロードクラスのゴブリンが大勢居るのだ。むしろこの位の数の差が無いと戦いの成らないだろう。

 

 森を抜けると辺境伯の軍勢を迎え撃つべく、陣地を作る。向こうの方が数が多いのでこっちは森の端ぎりぎりに位置に作る。本当は敵が分散する森の中に作りたいが、敵に後方や横に回り込まれるのが分からないのは怖いので、なるべく相手の動きがわかる様にこの位置に作る、万が一劣勢になったら森に逃げ込んで各個撃破で戦うつもりだ。

 ゴブリンは森の中が一番強いのだから。


 「そろそろ、来る頃だな。」


 「そうですな、主殿、こちらの準備は終わってます。近接攻撃部隊は防御主体で行きます。総員440  名です。」


 「魔道部隊も準備よいゴブ、近づいて来たら吹き飛ばすゴブ。こっちは40名ゴブ。」


 「ヒーラー部隊も準備良いですわ、マスター。各部隊に3名づつ付いてます。全部で20名です。」


 「バリスタ隊準備、良いです。総員300です。」


 今回は海賊退治で活躍したバリスタを輸送隊の武装として持って来ていた、船につけたヤツよりも小型だが人間が扱う弓より大きいサイズなので、射程と威力はこっちが有利なのだ。接近戦は戦闘スキル持ちのゴブリンがするので完全に中距離攻撃の部隊だった。危なくなったら直ぐに逃げる様に言ってある。


 「これで準備は完了だな、後は相手が来るのを待つだけだな。」


 「主殿、今回は拙者の傍から離れないで下され。少々危険でござる。」


 「うん、俺も師匠の傍で守るゴブよ。」


 今回流石に10倍の相手は苦しい、狭い山間の道とか橋とかあればアーサーとゴブ吉が無双するのだが森が広すぎて多分乱戦になる、おまけに包囲されるのも時間の問題なので、退却のタイミングが重要になってくるはずだ。


 そして翌日、辺境伯軍の先頭が見えて来た。のんびりした雰囲気でゆっくり行軍している。こちらの陣地を見て彼らも離れた所に段々集結し始めた。

 そのご補給部隊等も集まってきて陣地を作っていた、この場に居座るつもりらしい。


 「何か、変だなアーサー?」


 「そうですな、何故攻めてこないのでしょう?」


 「前回の戦いで酷く負けてるから、慎重になってる?ゴブか。」


 こちらが堅個な陣地を築いているので全軍休ませてから攻撃をするつもりらしい。今なら少しはこちらが有利かもしれないが、陣地から出て10倍の人数に突撃するのは無謀だった。例えアーサーでも100人切り殺している間に、100人の魔法攻撃と100本の弓で狙われたらやられるだろう、とにかく相手の数が多すぎて厄介だ。

 それに戦いたいのは向こうで、こっちは戦わなくて良いなら戦いたく無いのだ。相手がこのまま帰ってくれると助かるのだが。


 そして次の日になっても辺境伯軍は陣地から出て来なかった。時折偵察が俺達の陣地の様子を見に来るだけだ、


 「おかしいですな、主殿。あやつら戦う気が全く有りませんぞ。」


 「そうだな、戦いたくない気持ちはわかるが、食料なんかどうする気だろうな。」


 8000人の兵士が居るので一日の食費だけでも結構かかるはずだ、長引けば辺境伯の財政に結構な被害が出るはずなんだがな。それでも負けるよりはマシと思ったのかな?


 「おや、主殿。村からの早馬です。」


 「うん、何かあったのかな?」


 馬に乗ったハイゴブリンが大急ぎで、森の中を突っ切ってきた。


 「男爵様!大変です村が襲われました!」


 「何だと!一体どうやって!」


 「それが、夜明けに船が沢山やって来て、いきなり村中に火を放ち、村人を殺し始めました!」


 「くそ!こっちは俺達をおびき寄せる為の罠だったのか!本命は村か!」


 俺達が海賊相手にやった事をそのままやられた様だ。戦闘員はほとんどこっちに来てるので村は非常に脆い、皆早めに逃げてくれれば良いのだが。


 「どうするゴブ?急いで村に帰るゴブか?」


 「だめだ、あいつらの追撃を受けて酷い事になる!」


 「いったん、ここで受け止める必要が有りますな。」


 向こうにも村急襲の知らせが届いたのだろうか、動き始めた様だ。益々、俺達は動けなくなった。初めからこのつもりだったのだな。俺はただ辺境伯軍を追い返そうとしていたが、間違いだったらしい。相手は俺達を皆殺しに来てたのだ。俺の考えが甘かった、こちらも辺境伯の領民全員を殺す気でやらなければいけなくなってしまった。


 「皆!聞け!俺達の村が襲われた、今、目の前にいる連中の仲間が俺達の仲間を殺しているのだ!」


 「「「ぐお~!!!」」」


 「あいつ等を殺せ!人間を皆殺しにしろ!俺達の領地に入ったゴミを燃やし尽くすのだ!!」


 俺の気もちが乗り移ったゴブリン達は怒り狂っていた、俺の心配や怒りがゴブリン達を不安定で凶暴な魔獣へと変えていた。こうなったらもう止められない、手加減どころか自分達が死ぬまで戦いを辞めないだろう。人間の様な弱さや慈悲などの全くない魔物が今800匹生まれたのだ。勿論この魔獣を生み出したのは辺境伯だ、平和を愛する大人しいゴブリンから、人間並みの知能と道具と魔法を使う魔獣へと変わったゴブリンの強さを自軍で試してみる事だ。


 「バーバラ。無事でいてくれよ。直ぐに帰るからな!」


 そして、慈悲の心を無くした。ゴブリン軍団と辺境伯軍の国境沿いの戦いが始まった。


 




 







 




 



 


 









評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ