第26章 男爵の憂鬱
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辺境伯軍300を壊滅させた俺達はゴブリンの町に帰って来た。そして又戦勝祝いが始まった。面倒だったが伯爵が大事な事だから必ずしろというので、大々的に行った。皆功績が有ったので辺境伯軍の装備を皆に配った。また、馬が300頭もいては世話が大変なのでナルト伯爵に100頭あげた。伯爵は大層喜んでいた。馬の代金をくれようとしたが、また辺境伯の情報を貰うことで何とか説得して貰ってもらえた。
次の日から俺は村長と話し合い、村の子供とゴブリン達に読み書きの他に数の数え方等を教える学校を作る計画をはなした。村長の息子は税の計算をするので、彼に学校の専属になってもらう事にした。そして村人とゴブリンが協力して学校を作ったのだ。
「ゴブ吉も、子供たちに教えるのか?」
「教えるゴブよ、ゴブ吉の本も全部学校に寄付するゴブ。」
「拙者は剣術を教える事になり申した。」
「私は、料理と治療を教えますわ。」
うむ見事にいつも通り俺だけ仕事がない。俺が教えられるのは魚とりと料理だけなのだ。何だか少し悲しく成ってきたら、すかさずエリカとエルザが俺を慰めに寄って来る。
「マスターは何もしなくても良いのです。居るだけで私たちは幸せなんです。」
「そうですわ、雑用は部下に任せてマスターはどっしり構えて下さいませ。」
彼女達が本心で言っている事は分かっているが、何だか虚しく感じるのは何故だろう?戦いでもゴブリン達が活躍したお陰で勝てたのだし、俺は何時も役に立っていない様な気がする。アーサーやごぶ吉は戦いでは無敵だし、バーバラは治療のスペシャリストなのだ。
何だかもやもやするので村長に相談しに行く、こういう時は年寄に聞くのが一番だ。長生きしてる分色んなことを知っているのだ。
「と言う訳なんだ村長、俺はどうしたら良いんだろう?」
「男爵は自分の評価が低すぎるんですよ。良く周りを見て下さい、この村は立派になったと思いません か?ベップ温泉は凄いと思いませんか?」
「いや勿論オオイタ村は立派になった、人も増えたし畑も増えた。ベップ温泉は最高の温泉宿だと俺も 思う。でもこれは皆が頑張ったからで俺の力じゃない。」
「そこが間違いです。これは全部男爵の力なのです。男爵は自分でした事以外は価値が無いと思ってる ようですが、人の上に立つ人間には器というものがいるのです。」
「人の器?」
「そうです、器が大きい程、優秀な人材が集まります。男爵の周りの人達が優秀なのは男爵の器が大 きいからなのです、逆に器の小さな人間の周りには小さな人間しか集まりませんから大した事は出来ません。」
「つまり、俺は結構優秀って事なのかな?」
「そうです、男爵の器は大きい!ゴブリン達までも従える器はいずれ大陸を飲み込むかも知れません な。」
「はあ、何だか分かった様な分からないような・・・」
そこで俺は今度は海辺を散歩する、波の音を聞いていると落ち着くのだ。考えてみれば俺は孤児院出身で学が無いのだ。難しい事がわかるはず無いのだ。でも領主が馬鹿だと領民が可哀そうだから、今日から俺も勉強しようと思った。読み書き計算は出来るので、流石に子供達と一緒に学校に行くのは憚られた。
「男爵様、男爵様。こんにちわ。」
「おう、人魚さんたちか。こんちわ。」
「難しい顔です、お腹減った?」
「いや、お腹は減ってないよ。大丈夫。それより人魚さんたちは困って事とか無いかい?」
「最近、サメが来るから怖いです。ブルブルです。」
「サメか~、俺達じゃどうにもできないな。サメが来たら陸に上がるんだよ。」
「ありがとう、男爵さま。」
「そうだ、ちょっと待っててくれ。良い物持ってくるから。」
人魚達は最近増えて30人程が浜辺で暮らしていた。俺達に魚や貝や船の水先案内をしてくれるのだ。俺達はお返しに人魚の家や食料等を人魚にあげていた。人魚は上半身が人間だからサメに襲われればひとたまりもないだろうな、俺は村の武器庫に行って槍を5本と、革の鎧を持って来た。俺達人間は弱いけど武器を使えば結構魔獣と戦えるのだから、人魚も武器が有ればサメと戦えるんじゃないだろうかと思ったのだ。武器は辺境伯軍から分取ったのが沢山あるのだ。
「人魚さん、これ使ってみて。」
「何ですかこれ?」
「やりって言う武器だよ、こうやって使うんだ。サメが来たらこれで刺すと良い。嫌がって逃げるかもしれない。」
「へ~、やりですか。」
俺は人魚達に槍を5本やって使い方を教えた。教えたと言ってもただ突くだけだから簡単だ、海の中で振り回しても無駄だろう。少なくとも魚取るのには使えるだろう。ついでに人魚の上半身に革の鎧を着せてみた、貝殻や岩位なら防護出来るはずだ、サメに嚙まれたら意味ないだろうが。
「男爵様、ありがとう。いっぱい練習する。」
「おう、頑張れよ!危なく成ったら逃げろよ。」
そして次の日、ゴブ吉達が学校に教えに行ったので暇になった俺はまた浜辺を歩いていた。
「人は何処から来て、何処に行くのだろう?」
「人は皆大河の一滴というが俺もそうなのだろうか?」
昨夜村長から借りた難しい本を読んで、益々訳が分からなくなった俺は黄昏ながらフラフラ歩いていく。
「男爵様、男爵様。」
「おう、人魚達。おはよう!」
「おはよう男爵様、また怖い顔。」
「いや~すまん、難しい事を考えてたんだ。人は何処から来て、何処に行くのかなって。」
「変な男爵様、あっちから来てあっちに帰るんでしょう?」
「・・うん、そうだね。その通りだ。多分これが真実だ、俺達の知らない世界から来て、又知らない世 界へ帰ってゆくのだ。何だか少し賢くなった気がした。」
槍や鎧は大変良い物だそうだ、特に槍が有れば今まで取れなかった硬い魚が捕れるのだそうだ。鎧は泳ぎにくいが体が傷つかないので有難いらしい。
そして沢山魚を貰ったので、皆で焼いて食べた。鍛冶屋に言って魚を突く銛を30本程作ってもらう事にする、人魚達が魚を楽に捕れるはずだ。それに、近くのサメは漁師達にも危険なので人魚にもっと槍を渡す事にする。人魚がサメを追い払ってくれると人魚も漁師も安全だ。
「男爵様、ナルトから商人が来てますぞ。ぜひ男爵にお会いしたいそうです。」
「やあ、村長。いったい何の用だろう?」
自分の家に帰る事にする、男爵なので屋敷と言った方が良いのだろうか。2階建てで部屋数8部屋の小さな屋敷だ。だだし庭がやたら広くて村人全員が集まれる程広いのだ。
屋敷に帰ると、応接室にナルトの商人が待っていた。エルザとエリカがちゃんとお茶を出してもてなしていた様だ。既に二人は人間と同等に優秀になっていた。彼女達はクラスが上がるほど学習能力が上がるのだ。
「やあ、お待たせしました。商人さん。」
「男爵様、突然押しかけて申し訳ございません。私クニサキで伯爵様の専属商人をやっているモジと言 う者です。」
「ああ、伯爵の知り合いでしたか。」
「はい、実は伯爵が男爵様の船を大層気に入りまして、買って来る様に言われたのです。」
「成るほど、そういう事か。」
以前伯爵がここに遊びに来た時は船でやって来たのだ。うちはクニサキに週1回定期便を出して居るのだ、その時に人も少し運んでいるのだが陸より速くて、歩かなくて良いので非常に好評だ。温泉客が毎週やって来る様になっている。
伯爵に言わせると、俺の村の船は荷物が載らない代わりに、早くて揺れないのだそうだ。とても価値が有ると以前興奮していた記憶がある。
「どうでしょう?伯爵が5隻程欲しがっているのですが?出来れば私にも売って頂きたいものです。」
「まあ、売っても良いが、造るのに時間が掛かるぞ。今の船は村人総出で半年かけて2隻だからな。」
「半年で2隻なら、慣れれば3隻はいけますな。この村も大いに潤いますぞ。」
「えっ、船って儲かるの?」
今ある2隻の船は、村の皆やゴブリン達で造ったので幾ら金が掛ったか分からない。木は俺の領地の木だから沢山あるし、村の皆とゴブリンは手弁当で船を造ったのだ。お陰で作物が売れて皆喜んでいる状態だ。船乗りの仕事で金が入るようになって漁師も喜んでいるのだ。
「あの船なら、高値で売れますぞ。こちらとしても出来るだけ高く買い取るつもりです。」
「分かった。明日まで待ってくれ。船大工や皆とはなしてみる。」
その夜俺は村人やゴブリンの代表を集めて会議をした。なにせ村人やゴブリンの力が無ければ出来ないのだ。
「と言う訳で、伯爵が俺達の船を欲しがっているんだ。皆、船を造って売ってみるか?」
「仕事が有るのは良い事だ、やって見ようぜ!」
「俺達の船が認められるのは気分が良いな!」
「お金が有ると、何かと安心ゴブな。」
「じゃあ、皆。賛成で良いか?」
「「「「お~、頑張るぞ~!オオイタの底力を見せるぞ~!!!」」」
村人がやる気なので、船を造って売る事にした。ゴブリンが木を伐りだして加工して、それを村の男たちが船にするのだ。値段が分からないので。商人に値段をつけて貰った。
一人一日1万ゴールドで50人が45日で船を造るので。2250万ゴールド。材料費がその半分で1125万ゴールド。それに利益を1000万のせて4375万ゴールドでどうかという事だった。
村の皆は、一日1万ゴールドを働いた分だけ貰えるので喜んでいた。なにせ前は1年で5万ゴールドだったのだ。ゴブリン達も船1隻分の木材加工で1125万ゴールド入るので喜んでいた、服や金物を買うのだそうだ。
そして利益の1000万は俺の物になった、税なのだそうだ。別に金は欲しく無かったが皆がどうしても貰って欲しいと言うので貰うことにした。そう言えば、俺の屋敷の連中に給金を払った事が無かったのだ。今度からちゃんと払う事にした。
こうして何故かオオイタは造船事業を始める事に成った。




