第18章 ダンジョン攻略
前回死者が出たにも関わらず、今回の52階層攻略に多数の偵察スキル持ちが参加希望を出したそうだ。この攻略パーティーに入れれば超1流だと認められる事になるのだとか。前回片腕を失った重騎士も冒険者ギルドで教官になる事が決まったらしい。
重騎士は今回の魔狼に対して無力なので今回は連れて行かない事になった。最低でも前の階層のサイクロプスの攻撃を一人で耐える耐久力と装備が必要だとギルドが判断したためだ。今回は索敵・罠探知要員2名マップ作製要員の3名を連れていく事になった。荷物は俺とエリーゼとマップ作製員が持つ。バーバラ達は最低限の個人装備だ。
「では男爵、お気を付けて。」
「行ってくる。」
大勢の人間に見送られながらダンジョンに潜る。最近は入場料がタダになった。51階層は既にマップが出来ているので楽に進む。ギルドの3人も先行する必要が無いので俺の傍で固まっている。普通はもっと広く散会して危険を分散させるのだが、アーサーの剣で守ってもらうには近くにいる必要が有るのだ。
51階層で4匹の魔狼を倒し52階層に到着、偵察の2名を前方に出し、直ぐ後ろにアーサーを護衛に付ける。俺達はそのすぐ後ろに全員固まっている。ここも林のステージで見通しが悪い。
「右から3匹来るゴブ!」
ゴブ吉がイージスで相手の接近を教えてくれる。偵察2名は直ぐに俺の傍に逃げて来る。
林から魔狼が襲ってきた時には既にアーサーが迎撃位置についているので、魔狼は出てきた瞬間真っ二つにされる。
「うお~スゲ~!」
偵察に入っている冒険者がアーサーの強さに驚いている。重騎士の鎧ごと腕を食いちぎる魔獣を瞬殺するアーサーの強さは初めて見る者のは脅威的だろう。
「アーサー何匹位までいけそうだ?」
「来る方向が分かれば、何匹でも平気でござるよ。」
アーサーの言葉通りその後も危なげなく進んで52階層終点に夕方頃たどり着いた。直線的に来れればここまで、3時間位でたどり着けるのだが罠解除やマップ作製、53階層への階段を探していると時間が凄くかかるのだ。この調子で行けば56階層に有ると思われる安全地帯まで後2日はかかりそうだ。
「さて、これからどうする?」
偵察で疲れ切ってる、2名に聞いてみる。俺は散歩してるだけだから、全然疲れていないのだが、罠の発見や解除、魔狼への警戒等でこの2名は既に疲労の限界の様だ。
「男爵さえ良ければ、ここまでにして帰りたいのだが。56階層にたどり着くのに後二日、それに安全 地帯がある保証もね~ですから。」
「そうか、ならば引き返そう。」
俺は56階層に安全地帯が有るものとして考えていたが、確かに有るかどうかは行ってみないと分からないのだ、流石はベテラン冒険者だすべて疑う事で今まで生き延びてきただけの事はある。俺は彼らの忠告に素直に従って引き返す事にした。
警戒しながら、休息と食事を取って直ぐに地上を目指す。直線なら51・52階層合わせて4時間しかかからなかった。
「男爵、お帰りなさい。今日は全員無事かスゲ~な!」
夜中にも関わらず、ギルマスが俺達を舞っていた。
「今日は52階層を調べて来たよ。」
「お~では、マップを見せてもらう間、休んでいてくれ。何でも好きな物注文してくれ。俺の奢りだ。 あと魔狼の魔石は明日オークションにかけるから期待していてくれ。」
魔狼の魔石は貴重過ぎてギルドで買い取れないのでオークションで売る事になっている。前回の魔石は貴族達が家に飾るとかで1個平均1500万ゴールドになった。今回15個の魔石はそこまで高くはないだろうが、かなりの額になるだろう。因みに売り上げの2割はギルドの手数料になるのでギルマスはホクホク顔だ。
ギルド1階にある冒険者専用の居酒屋に行くと、大勢の冒険者が俺達の帰還を祝ってくれた、皆の奢りで色々な食べ物が次々と運ばれてくるのだ。俺達と一緒に行った偵察員やマップ師なんかも冒険者に囲まれて嬉しそうだ。
「マスター、あ~ん」
バーバラは相変わらず俺の面倒を見ている。
「ウン、凄く美味しいよバーバラ。バーバラも沢山食べてね。」
「マスターの笑顔が一番のご馳走ですわ。」
バーバラは最近凄く色っぽいのだ、唇から除くピンク色の舌と唇の横の黒子が何故か魅力的なんだ。最近は胸や太腿じゃなく唇ばかりガン見する程だ。
「師匠、あ~んゴブ!」
「おう、ゴブ吉。ありがとう。」
「お前も、あ~ん!」
ゴブ吉にお返しに特大の肉を口に詰め込んでやった。皆に喜んでもらえるので気分が良かった。
次の日はオークションの為ダンジョン探索は休みになった。
「おはようゴブ。」
「おう、おはようゴブ吉。」
「あれ?アーサー達はどこ行ったんだ?」
「アーサーはギルドに剣術の指導ゴブ。バーバラは教会に呼ばれて行ったゴブよ。」
「そうか、エリーゼは冒険者の講演とか言ってたな。」
俺達はこの町の人気者になっていた、アーサーはギルドや貴族の兵士に剣術の指導を頼まれるようになり、バーバラは教会に聖女認定されて教会のボランティアに駆り出される様になった。エリーゼも冒険者達にダンジョンの話をよくせがまれていた。俺も貴族から毎日パーティーの誘いを受けていた。
こうして1階攻略する度に、歓迎会とか祝勝会とかが1週間ある生活が1ヶ月程続いた。
「アーサー大丈夫か?様子が変だぞ。」
「大丈夫でござる。」
「バーバラも疲れている様に見えるぞ。」
「マスター私は、大丈夫ですわ。」
最近、アーサーとバーバラの様子がおかしかった。元気が無いのだ。俺も最近は祝勝会に出るのが、嫌になってきたのだが、貴族の付き合いとかで無理やり参加させられていたのだ。
「ゴブ吉、二人は何で元気が無いんだ?」
「多分、人間の相手をするせいゴブ。」
「そうか、お前ら我慢してたんだな。」
今は人間みたいに見えるが、こいつらは元はゴブリンだったのをすっかり忘れていた。俺の都合でゴブリン達をいい様に利用してただけだったのだ、これじゃあ俺の周りの貴族やギルドの連中と同じだと気が付いた。
「アーサー、バーバラもう人間の誘いは無視して構わないぞ。」
「主殿それでは、立場が無くなりますぞ。」
「マスター私たちは大丈夫ですから。」
「なあバーバラ、俺は貴族とか金とかどうでも良いんだ、また皆で仲良く暮らそう。」
そして俺達は街を出て、自分の領地に引っ込むことにした。明日の60階層を最後にこの街から出ていくのだ。
エリーゼにだけは俺達が出ていく事を伝えた。何だか悲しい顔をしていたが、ゴブリン達の事情を分かってくれた様だった。そして、最後の挑戦にはギルド職員の同行を断って俺達だけで出発した。
「さあ、階層主の部屋だ!皆これで最後だ頑張ろう!」
「任せるゴブ!」
「瞬殺でござるよ。」
「なにも心配はございませんわ。」
60階層の階層主はケルベロス、頭が3つ有る地獄の番犬だった。しかし、普通の平原にいたのでゴブ吉の敵ではなかった。
3つの口で咆哮をあげた瞬間、口の中でファイアーボムがさく裂し続いて6個の耳が爆発した所で勝負はついた。見通しの良い場所ではゴブ吉は無敵なのだ。
そして、その日の夜俺達は街を出た。街の家はエリーゼにやった。エリーゼは街に残るそうだ。今日の報告と魔石も彼女に託した、オークションで売れたら俺の口座に金を入れてくれるそうだ。
「さあ、皆行くぞ。俺達の領地でのんびり暮らそうな。」
「愉しみゴブね。」
「我らが領地でござるか、何だか灌漑深いでござるな。」
「皆頑張りましたものね。」
人外魔境とか僻地とか言われているが俺達は気にしない。元々森で魚を取って暮らしていたのだ。金も今では沢山持ってるし。人が少ないのは大歓迎だった。




