第16章 重み
ダンジョン全然分かりません。誰か代わりにダンジョンの中の事書いてくれればよいのに。
分からないのに書く方もどうかと思いますけどね。でもまあダンジョンって実物ないから何でも有りですね。
バーバラのクラスチェンジにすっかり満足した俺は家で幸せを満喫していた。金はギルドに腐るほど預けてあるし、稼ぐ必要もなかったからだ。エリーゼとゴブ吉も仲良く買い物に行ったり、エリーゼのレベルアップの為にダンジョンに潜ってたりしていた。アーサーは家で瞑想したり、ケンタに剣術を教えたりしていた。
「うち、レベル40になったッスよ。もう次のダンジョンに行けるッス。」
「へ?次のダンジョン?」
「あれ?次のサイクロプス階層に行かないんスか?」
「行って何するんだ?」
「何って、階層主倒して貴族になるんじゃないんすか?」
「別になりたくないけど。」
「じゃあ、賞金1億ゴールド?」
「もう、あるし。」
「・・・・・」
エリーゼは貴族とか賞金に興味があるようだが、俺は興味がなかった。俺は皆で楽しく生きていければ幸せだったから。だから、ゴブリン達と森で生活していても結構幸せだったのだ。
「勿体無いっすね。あの3人なら50階突破出来るっすよ。100年ぶりの快挙ッス。」
「確かにあいつらなら出来るかもしれないな。」
「じゃあ、皆に聞いてみるか」
その日の夜、晩飯を食べながら皆に今後の事を聞いてみた。
「これから、どうしたい?」
「ウチは、サイクロプス階層を走破して有名になりたいッス。」
「師匠のやりたいようにすれば良いゴブ。」
「拙者は主が領主になる手伝いをしとうござる。」
「私も、マスターを貴族にしたいですわ。」
何だか3人やる気があるようだ。ゴブ吉は俺と一緒で欲が無いのでどうでも良いみたいだ。
「それじゃあ、サイクロプス階層に一応挑戦してみるか。」
「今の最高到達地点が49階層だから、目標はそこにしようか。」
次の日俺達は1週間ぶりにダンジョン前に並んでいたのだが、様子がおかしい。何か周りが異様に興奮してるのだ。俺は並んでいた冒険者に訳を聞いてみた。
「今日は何で皆興奮してるんだい?」
「何だ、お前知らないのか?今日はクランが50階層に挑むんだぜ!」
「5年ぶりに勇者達が現れたんだ、皆興奮するぜ!」
「100年ぶりに階層突破出来るかもしれねえんだ、お祭りみたいなもんだ!。」
何でも49階層までたどり着てる、有力クランの内の一つ・黄金の輝き・の5人が階層主に挑むそうだ。
もうすぐ現れるらしい。この49階層まで到達しているクランは現在3つある。
〇黄金の輝き
貴族中心の大手クラン、構成員300名で豊富な資金と人材で攻略している。マジックアイテム等を多数 所持している。また大金でスキル持ちを雇っている。人数にアイテムに物を言わせた力押しが主体。
〇ドラゴンバスター
冒険者主体の正統派クラン、構成員300名様々なスキル所持者によって攻略している正統派、派手さは 無いが堅実な戦い方に定評がある。
〇真紅の風
女性のみで構成される大手クラン、構成員150人。巨人族のチチ、鬼人族のヒメの圧倒的な攻撃力とハ イエルフの攻撃魔法を中心として攻略する。人気が最も有るクラン。
だそうだ。
「おっ、来たぜ!」
5人のパーティーの登場だ、先頭に2名の重騎士がいる、フルアーマーでデカイ盾と3メートル程の長さの槍を装備していた、いずれも重騎士のスキル持ちらしい、次がリーダーの剣豪スキルを持っている男、前騎士団長だ、金ぴかの鎧に2メートル位有る大剣を背中に装備していた。そして、最後の2人は魔導士らしいローブをきて高価そうな杖を持っていた。
「お~、スゲー!強そうだな。」
「あれが貴族の筆頭パーティーか。」
「何でも、凄い訓練していたらしいぜ。」
彼らは、この5年間40階層でレベルアップをしていたそうだ、5人全員がレベル50を超えたので今回階層主に挑戦する事にしたらしい。今から潜って明日には結果が出るだろう。
この凄まじい熱気や興奮に何だか水を差されたので、俺達は今回はダンジョンに潜るのを止めて家に帰って来た。それに、俺はあのパーティーを見て全然強そうな感じがしなかったのだ。
「なあ、アーサー。お前あのパーティーに勝てるか?」
「ふ、主殿。何秒で倒せるか聞いて下され。」
「ごぶなら、3秒で倒せるゴブ」
「私は、5秒位ですわね。」
あれが今の最強パーティーだとしたら弱すぎる、いやこの3人が強すぎるのか?
「なあ、エリーゼ。あいつら弱すぎると思うんだが?どうやって階層攻略してるんだ?」
「ああ、クランの攻略方法は基本力押しっすよ。黄金の風なんて300人で軍団組んで進むっすよ。」
「はあ、300人でミノタウロス2~3匹と戦うのか?」
「そうっス、だから安全で楽っす。でも階層主の部屋は5人までしか入れないからその前で止まるッス」
成るほど弱そうなのも納得だ、彼らが自力で49階層まで来た訳じゃないのだ。300人でやっと49階層にこれただけの冒険者だったのだ。つまり49階層に来るには300人居ないと来れない程の雑魚なのだ。
そして次の日、案の定攻略失敗の知らせがギルドに届いた、階層主の部屋に入った5人が夜になっても出て来ないそうだ。俺はそれをギルドで聞いた。非常用のポーションを更に買いに来ていたのだ。次の日から俺達はサイクロプス階層に挑む予定だ。
「さあ行くぞ!」
「お~!!!!」
ダンジョン前は皆暗かった、皆の希望の星がヤラレタからだ。あのメンバーで攻略出来ないならどうすれば良いのか皆分からないのだ。レベルが50でも足りない事は皆分かった様だ。
俺達はそれを横目で見ながらダンジョンに潜った。ウチの3人が居れば大丈夫だという安心感があったのだ。
ぐろぉ~おおお~!!
目の前にサイクロプスが居る、身長3メートル程の大型の魔獣だ。物凄い筋肉で3メートル程の太い棍棒を振り回している。こん棒というよりは、家の柱だな。
そして、俺とエリーゼは顔が真っ青になっている。あんなので殴られたら、俺達の大盾なんか役に立たないからだ。俺とエリーゼにこの階層は無理の様だ。最初のサイクロプスに殺される自信がある。
アーサーがサイクロプスに近づきサイクロプスが棍棒を振り回すが、アーサーにかすりもしない。そして次の瞬間サイクロプスの首が落ちた。何でも風刃とか言う剣聖スキルなのだそうだ。10メートル以内の物は大抵切れるらしい。
「ふ、弱いでござるな。」
サイクロプスはミノタウロスより遥かに強い魔物なのだが、俺達とは相性が良かった。俺達にただひたすら向かってくるのだ。遠距離攻撃も連携も待ち伏せもしないので、ゴブ吉とアーサーの餌食になるだけだった。
「来たぞ、ゴブ吉。」
「任せるゴブ!」
前方から3匹のサイクロプスが走って来る、大きくて重いので地面が振動している。普通なら恐怖で金縛りにあう処だろう。
ボム!ボム!ボム!
ゴブ吉のファイアーボム3発であっけなくサイクロプスは倒れた。デカイ魔石に変わる。1個20万もする高級品らしい。片手で掴むのがやっとの大きさだ。重さも2キロ位有るので貯まると重い。
「なあエリーゼ、大盾捨てようか?重いだけだし。」
「そうっスね、どうせ盾じゃサイクロプスの攻撃は防げないから重いだけっすね。」
サイクロプスの魔石が貯まって来てうんざりしてる、俺達荷物運び要員は盾を捨てた。盾術のスキルがないとサイクロプス級の攻撃を防ぐのは無理そうだ。それなら盾より魔石を運んだ方がマシだと思ったからだ。俺とエリーゼの背嚢が80キロ位になったところで安全地帯にたどりついた。
「えっ、何でこんなに混んでるんだ?」
「クランが3つも常駐してるからっすかね?」
安全地帯の中は大変な混雑だった、仕方なく俺達は隅の方に行って食事の支度をした。アーサーとゴブ吉の不気味な雰囲気のお陰で少しスペースが広くなったのは有難かった。持ってきた食材を沢山使って晩飯の支度をする、水も大量に沸かして体を拭いた。俺とエリーゼの荷物を軽くするためだ。
多分明日は兜や胸のアーマーも捨てる事になるだろう。有っても防御出来ないからだ、サイクロプスの棍棒を頭に食らえば首が千切れるだろう、どこに当たっても致命傷になる威力がありそうだった。だったら重い物は捨てて躱すか逃げた方が良い。俺とエリーゼじゃどんなに頑張ってもサイクロプスは倒せないから。
最初は、300人で攻略するのは卑怯だと思ったが、俺達みたいな人間が攻略するには人数を集めて怪物に対抗するしかないんだと、ここまで来て気が付いた。正々堂々と戦う必要もないしわざわざ危険を冒すことも無いのだから。
そして次の日、俺達は簡単に階層主の前までたどり着いた。俺とエリーゼは鎧や兜を全部捨てた軽装だ。背中には100キロ程の魔石入り背嚢を背負っているだけだ。重すぎて持てないのでバーバラも50キロ程の予備の背嚢を持って貰ってる。アーサーとゴブ吉は戦闘員なので荷物は持ってない。
扉の前にいた、20人程の金ぴか鎧を着た冒険者が俺達に話しかけてきた。
「おい、貴様らこの先に進むつもりか?」
「ああ、そのつもりだ。」
「昨日、騎士団長が挑んで失敗したのを知らんのか?」
「それは、知ってる。噂はギルドで聞いた。」
「それでも行くのか?」
「ああ、行く。」
「ならば、お前らのパーティーの名前を教えて行け、死んだらギルドに報告してやろう。」
「・・・ナナシ・・俺達パーティーのなまえは、ナナシだ。」
「変わった名前だな、まあいい、検討を祈る。」
「ああ、ありがとう成功したら一杯奢るよ。」
こうして、俺達は階層主に挑み軽く突破した。100年ぶりの快挙だったので、転送先で大騒ぎになってギルドでまた大騒ぎになって凄く迷惑だった。
俺の印象はただひたすら背嚢が重かった事しか、覚えていない。アーサーとゴブ吉は散歩しただけだそうだ。バーバラは俺達のパーティーの名前がナナシだった事に驚いていた。
ハッキリ言って、パーティーの名前なんて考えた事はなかったし、必要もなかったから仕方ない。名前が無いから名無しってのはある意味当然だと思ったのだ。ナナシーとか言うとなんか可愛い感じがするのでバーバラとエリーゼは意外と気に入ってた。
そして何とか騒ぐ連中を振り切り、家に帰って来た俺達はいつもどおりにのんびりとその日の夜を過ごした
俺とエリーゼはバーバラに筋肉痛を治してもらったので気分も最高だ。
「明日から忙しくなるから今日は早く休んだ方が良いっすよ!」
「何で?」
「100年ぶりの快挙だから、ギルドとか色々呼ばれるハズっすよ。」
「そういえば、賞金とか爵位とかあったな。」
「ふふ、マスター早く寝ましょう。」
そうして、次の日に備えて俺達は早く寝たのだ。




