第12章 ミノタウロス
金を稼がなくてはいけなくなったので俺達は朝早くからダンジョンの入り口で順番を待っていた。今回は食料等は1日分しか持ってきてない。31階層からの魔物は強いらしいので今日は様子見の予定だ。ミノタウロスは頭が牛の魔獣でオーガより強く武器を使うらしいので警戒してるのだ。それに魔石が1個最低でも5万ゴールドするらしいので数をこなす必要が無いのだ。1個で俺達の1週間分の生活費になるのだ。
「あの~、ダイ君?」
「?・・・」
ケンタだった、この間の礼を言いたくて俺達を探していたらしい。
「ダイ君この間はありがとう、お陰で助かったよ。」
「なんだ、気が付いてたのか。」
「ゴブリン連れた人間って聞いて直ぐに分かったよ。」
「そりゃ、そうだよな。はは、」
「命の恩人にお礼を言いたくて、探してたんだ。」
「礼なら、このバーバラに言ってくれ。お前を治したのはこの子だ。」
「ありがとう、バーバラさん」
そう言ってケンタはバーバラに深々と頭を下げた。それから、俺と別れた後の事をポツポツと語りだした。俺と別れた後2人で冒険者ランクを上げようと頑張ってたらしいが、エルザがだんだん放漫になってきて、金とランクの事しか言わなくなってきたらしい。余りにも金に執着するので嫌気がさして分かれたそうだ。それから新しい仲間を探してダンジョンに潜っていたそうだ。この間はまだ仲間との連携がうまく取れないのでオーガにやられたそうだ。
「これからは、もっと地道に頑張るよ。」
「そうか、無理するなよ。死んだら終わりだからな。」
「ダイ君の方は強そうだから、大丈夫そうだね。上手く40階層突破してBランクになれると良いね。」
「Bランク?」
何でも40階層を突破したら無条件でBランクになれるらしい。また、今の最高到達階層49階層を突破して50階層にいければ無条件でAランクだそうだ。そしてここ50年程突破出来てない50階層を突破すれば賞金1億ゴールドと男爵位が国から与えられるそうだ。
この賞金と男爵位欲しさに無茶をする冒険者が後を絶たないそうだ。
「うん、まあ頑張るよ。」
ランクや名誉に興味が無い俺は適当に答えて、ケンタとわかれた。
「ダイさん、頑張るっすよ!貴族っすよ!」
「貴族?」
エリーゼは貴族と聞いて興奮している様だ、俺は元々孤児なので貴族にはさっぱり興味がない、何だか威張っている嫌な連中としか思ってないのだ。
「さあ、それれより生活費を稼ぐぞ!いいか皆。」
こうして、俺達は31階層へと転移した。
31階層は平原だ、俺達はいつも通り先頭アーサー、ゴブ吉次にバーバラそして俺とエリーゼでゆっくり歩いていた。
「主殿!危ない!」
「え!」
アーサーに言われてふと攻略本から顔を上げると、何やらデカい物が俺達の方へ飛んで来ていた。
ボス!
俺達の直ぐ傍に3メートル近い長さの槍が突き刺さった。よく見ると前方50メートル位にミノタウロスが3体いた。ミノタウロスの遠距離攻撃だ。
「ゴブ吉!やれ!」
「むり!ごぶ。遠すぎごぶ!」
「バーバラ、行けるか?」
「無理です、遠すぎます!」
「どうするんですかダイさん?」
「どうにもならん!」
俺達のパーティーは遠距離攻撃には無力なのだ、ゴブ吉の魔法は20メートル、バーバラのホーリーカノンで30メートル、アーサーは剣士なのでせいぜい5メートル位の攻撃範囲しかないのだ。
「仕方がない、槍をよけながら近づこう。」
槍を避けながミノタウロスに近づこうとしたら、あいつらはこっちが近づいた分だけ離れていくのだ。ミノタウロスの方が足が速いので全然近づけない。ミノタウロスは魔導士相手の戦い方を知ってる様だ、今までの人間を見かけると襲い掛かって来た魔物と全然違うのだ。
「危ない!ごぶ!」
どごん!どごん!
今度は違う方向からデカイ石が飛んできた。さっきのミノタウロスと違うやつらが別方向から俺達に投石しだした。
「こんなの当たったら、死ぬッス!」
拳より大きな石がミノタウロスの怪力でどんどん飛んでくる。ダンジョンに入って初めてのピンチだそれも即死しそうなピンチである。一方向からなら楽に避けられるが、2方からの攻撃を避けるのは物凄く難しい。簡単に避けられるのはアーサーだけである。
「アーサー、突っ込め!」
もう一組ミノタウロスが現れたら、俺とエリーゼが確実に死にそうなのでアーサーに突撃させることにした。アーサーが駄目なら俺達は逃げだすしかないのだ。
アーサーが凄いスピードで最初の3匹のミノタウロスの元に走ってゆく。アーサーが突撃したのでそっちからの攻撃は無くなった。やっと、片方の攻撃をかわす事に集中出来るようになった。
「俺達も、反対側に突撃するぞ!」
これ以上のミノタウロスのチームに囲まれる訳にいかない俺達は、アーサーとは違うミノタウロス達に突撃する。
俺とゴブ吉は足が遅いが、バーバラとエリーゼはミノタウロスに追いついて行く。
「ハイライト!」
「うお~お~!」
バーバラのハイライトでミノタウロスの視力を奪い動きを止めた、エリーゼがその隙に戦斧でミノタウロスの足に攻撃する。エリーゼは身長が無いので頭や首に攻撃が届かないのだ。バーバラも別の奴にメイスで攻撃をかけている。そこにやっと俺達がたどり着く。
「ゴブ吉!」
「ごぶ!」
ごぶ吉のファイアボムで3匹のミノタウロスの頭が吹き飛んだ。近づけばゴブ吉の攻撃は圧倒的だ。安全に近づければ良いが,万が一接近中に石が当たれば悲惨なことになりそうだ。
アーサーがオーガよりも更に一回り大きな魔石を3個持ってやってきた。3匹相手に勝ったらしい。
「アーサー大丈夫か?」
「あの程度、何匹居ても問題ござらん。」
流石剣豪のスキル持ち、格下の魔物3匹は楽勝らしい。問題は俺だ。ミノタウロスの攻撃が当たると死ぬかも知れない。完全に準備不足なのだ、即死しなければバーバラの治癒魔法で治してもらえるので、頭などを守る防具を装備する必要があったのだ。だが、今は金を使い果たし防具を揃える金がない。つまり金が必要だ。
「どうする?戻るか?」
「拙者に、お任せ有れ。主たちは安全な所にて待機していてくだされ。」
俺はいったん引き返して、オーガ層で金を稼いで防具を買って再び挑戦しようと考えてたが、アーサーはこのまま行きたい様だった。皆に意見を聞いてみると俺以外は先に進みたい様だ。仕方ないので付き合う事にした。
ただし今度はゴブ吉の体に草を沢山取り付け、俺達の前20メートル程を中腰で先に行かせる。こっそりゴブ吉が近づいてミノタウロスを狩る作戦だ。離れてみると小柄なゴブ吉は草に紛れてかなり見えにくくなっていた。俺も攻撃に当たりたくないので草で全身を覆ってカモフラージュした。アーサーだけは良く目立つ様に何もなしだ。
「主殿!」
「ゴブ行け!」
アーサーがミノタウロスを見つけて教えてくれる、それを隠れているゴブ吉に俺が教えてゴブ吉を生かせる。ゴブ吉はコソコソ隠れてミノタウロスの後ろに回り込む、アーサーが突撃してこっちに注意を向けてる間に20メートルまで接近して倒すという方法で36層までたどり着いた。
安全地帯で食事をしてそのままここで1泊する事にする。今日は緊張の連続なのでみな疲れている。ゴブ吉は半日中腰で動き回っていたので特に消耗が激しい様だ。
「ごぶ、大丈夫か?」
「何とか・・」
ゴブをつける余裕すらないので相当疲れてる様だ、一方エリーゼはここまで30個の魔石を手に入れたのでホクホク顔だ。これで大体150万位か?簡単な防具なら買えるし、生活費なら半年位もつ、なにより40階層が目前なのだ。Bクラスに手が届きそうなのである。
「ゴブ吉さん、頑張るっすよ!マッサージしてあげるッス。」
「ありがたい、ゴブ!」
相変わらずエリーゼはゴブ吉の世話を焼いている、ゴブ吉もやる気を出してくれるのでいいコンビなのだ。
「マスター、マッサージいたしましょうか?」
「俺は大丈夫だ、バーバラこそ大丈夫か?」
「私、肩が凝りますの胸が重くて。」
胸をもんであげようかと思ったけど、周りに仲間がいたので我慢した。
そして、次の日。
昨日と同じ作戦でいっていたのだが、ゴブ吉が罠にかかりそうになった為に攻略本を持っているおれもゴブ吉の隣を移動する事にした。はっきりいって隠れながら移動するのは大変だ。地面を這いながら進むのだ。泥だらけになりながもゴブ吉と根性で先に進む。
地獄の半日の後40階層に着いた。俺とゴブ吉は泥だらけで既にヘロヘロだ。
「よし、最後の階層だ!ここは階層主の部屋だから逃げられる心配はない、何時ものように行くぞ!」
「ゴブ吉、アーサー入ったら突撃だ!」
「おう!ゴブ!」
「お任せ有れ!」
そして階層主の部屋へ皆で入った。5匹のミノタウロスが50メートル先にいるが、構わずアーサーとゴブ吉が突っ込んでゆく、遠距離を諦めたミノタウロスが迎撃の構えを見せるが、20メートルまで近づいたゴブ吉の敵ではなかった。あっという間に、ゴブ吉に倒されて魔石に変わった。
「疲れたゴブ!」
「ああ、今までで一番つかれたな、ゴブ吉。」
「早く帰って、美味い物食おうな。」
俺達は5個のデカイ魔石を拾って転送陣をくぐった。その後ギルドで魔石を買い取って貰いBクラスのタグ、金のタグを受け取って家に帰った。初めてダンジョンで苦労した日だった。




