3 さりどの宿命
まずはさるどについていっておかないといけないと思う。
つまりそれは前説明したように俺たちのプレコギ能力のことなんだ。
プレコギとはつまり、プレコギニッション(未来予知)。それはいわゆる未来のことをあらかじめ知るという特殊能力、予知だ。預言とかいうのとは違う。厳密にいうと預言は神がその自分の計画を人つまり預言者に託して知らせるものということになるそうだ。
プレコギはそれとは違い個人的な要素が強い。予知夢とかと近いものなのだがそれをさらに進化させたもので、何のことを語りかけてくるのかわからないという将来の出来事を夢で見るというのが予知夢なら、プレコギは実は寝ている必要がなく、おきているときにも目の前に見えてくるものだ。そしてより具体的なことが多い。
そして俺の特徴はその夢を見たことはわからないないでいてもその夢に対応して何か体を使って準備周到にしたりするというわけ。プレコギの中でも実践的な部類の能力だ。本来プレコギはどちらかというと防御的なものだから戦闘には使えないことが多いものなんだけど、俺のは役に立つ。
ただいつも働いてくれるというわけではないのがたまに傷なんだ。こちらから能力を発動できるタイプの能力とは違い受動系なので、くるときをまつしかない。ただし自分の身が危ないときは必ずやってくるので、そこは便利なのだが。
逆にいうと能力がやってくるときはそれは危険が近づいているときだという証でもあるんだが。
この辺のことは能力を理解しないやつらにはわかってもらえないんだよ。
まあそんな俺のグチはどうでもいいことだからこの辺にするが、実はさるど(SALD)はレベルDのSALたちが集まっている場所なんだが、俺が属しているさりど(SALID)は特別なセクション。俺みたいなインタプリターたちが集まる場所だ。
つまりSALの中のIのレベルDという意味だ。レベルはEまでしかなくその上は特別ランクだからDはかなり最後の方。まあ一応これでもエリートというわけだ。といっても給料いいわけじゃないし、何か名声があるわけでもない、ただの実働部隊とは違うから危険は少ないセクションではあるのだが、逆に苦労も耐えない。
それは下手したら俺たちの活動いかんでは人類に危機を及ぼすこともあるからだ。それについてはおいおい説明していくが、俺たちはまさに世界をインタプリターつまり解釈している。ある意味作り上げているといってもおかしくない。
ほらよく、病は気からなんてこともいうだろう。それと同じで意識が世界を作り出すという考えもあるんだが、俺たちのセクションのメンバーはそういう意識源泉を感じ取る能力にたけていて、そのプロトタイプの意思を見つけ出すことすらすることもある。
これが人間の意志につながっているその原型となっているということだから、そもそも世界におけるすべての人間の意志につながりかねないというわけ。それで、下手すると、つまり扱いを間違うと妙な事象が世界に発現してしまうこともあるといえなくはないんだ。
といってもこれは仮説だから、実際にそうなったことはないけど俺の能力をみてとればある種俺たちインタープリターは世界を操れたりもするものを持っているのだ。だから厄介なんだ。しかし大抵、俺たちのような能力をもつものは、その操るとかいう政治的な意思とは程遠い、どちらかというとのほほんとした性格のものが多いらしい。
なので今までその能力を悪用したりするやつがいなかったし、それに顕在化して何か意識源泉が作用して世界に危険を及ぼしたこともない。ただ意識的にそれを使えるわけでもないので、徳したという記憶はない。それより幼いころは少し怖がられた。だから、ある程度大きくなったら比較的無口な男になっていたと思う。
緊張するのだ余計なことを言ってしまうとまずいという神経が働いてしまうんだ。だからプレコギはおとなしいやつが多い。そしてレベルDはそういうのが極度なやつも多いんだが、扱いを間違うと大変だよ。なにぜ理論上は、人の意識によってすべての未来が決定されてしまうという仮説もあるぐらいだから。
次回予告 さりどの宿命 CONT
お楽しみに!