1 プレコギと俺
心の中で何かがはじけとんだ。
いつの日からそうなったのか俺は知らない。
すぐさま自然に体が動き、目の前にある炎の中に
無謀にも飛び込んだ。その先にはエレベーターがあり、
俺は扉を手でこじ開けた。
(うわ、なんだ。危なすぎる)
理性の声はうなりをあげたのだが、
体は言うことを聞かない。
そのままエレベーター本体がない
闇の空間に飛び込んでしまった。
(落ちる)
と思った瞬間、俺は勝手に動き
なにやら装備からとり、
ワイヤーに結びつけたらと思うと
自ら壁を蹴り、落下速度を落とした。
そしていつのまにかつけていた装備の
手袋ごとワイヤーをするすると降りていったのだ。
(また予知か。そういえばあの時)
この事件がある前に演習のための基本装備を準備していたのだが、
その時ビジョンを受けていたらしく
他のメンバーとは違う装備を集め持ち込んでいた。
そればかりか手には通常必要のない、頑強な手袋までつけていた。
俺はこういった感が働くときは逆らわないことにしている。
なぜなら、何度もおれ自身の命をそれはすくってくれたと
解釈できるところがあるからだ。
それに実践だったらまだしも演習なので
多少の装備で重たくなるのはやむ得ない。
もっというと手袋とワイヤーに掛けて降りるための
カラビナつきの命綱だけだ。
重さもわずかなものだ。その時はそれぐらいの感覚だった。
すぐさまエレベーターの上に降りると、
非常脱出ハッチをあけて、
実に俺はその開け方すらわからないのに
スムーズにあけたんだ。
(我ながら驚くよ)
なんて変なうちの声も聞いたりしながら、
意識が二つに分かれているように、
不思議な状態のまま、中に飛び込んだ。
中には煙が少しあって、
なにやら2人がダイナマイトか何か
を差し出していっているようだが、
上から降りるときに、回転しながらその二人を
あっというまに制圧してしまった。
(何だよ。運動音痴で、拳法なんかやったことないの)
と思う暇もなく、
装備からロープをとりだして、
のされた二人の後ろでにし縛り付けた。
と顔をあげると、
何がなんだかわからないという顔をしている
4人ほどの乗客に手で合図を送り、
早くエレベータの非常停止スイッチを解除し、
下にいくように指示した。
あわてて、その中の女性の一人がそれを実行すると、
ゆるやかにエレベーターは動き出し、
そしてしばらくして止まった。
すると窓があいたら、そこには機動隊がちょうど
かけつけてきたみたいで、うまいぐらいに4人は救出。
また犯人らしき二人は確保された。
俺はというと、先ほど進入した上の扉から
いつのまにか上にあがり、ロープを先ほどのカラビナの装置で
上にあがっていったのだ。
よく見ると上の扉はかなりすぐそこにあった。
そして、エレベーターが動きだすより前に
その扉を抜けて床に転がり込んだ。
所用時間数分。炎がそのフロアにはあったが、
なぜか知らないが突如動き出し、
いろいろな回り道をしていつのまにかチームの後ろのドアにたどりついた。
仲間は炎に向かって叫んでいた。
ところいつものように、
汚れてはいるが何事もなかったように現れた俺を発見して、
呆れ顔になるのだった。
何度みても、今度は無謀なことゆえに
だめなんじゃないかと思うらしい。
もちろん一番そう思っているのは俺なんだが、
実際その処理する時間が短かすぎるため、
そんなこともおれ自身は考えてはいられないのだが、
あとで結構体にくる。
夢にも見るし、しばらくたぶんエレベーターも乗れない。
普通の俺は、どちらかというと草食系でインテリだけのどうにもならない
非ワイルド系な男だから、
正直心臓に悪いと思っている。
しかしこの能力と自分をわけるすべも知らないので
つきあうことにしている。
本当なら研究室にいるはずなのに、
なぜかSALDに入ってしまった。
それが運命なのだろうな。
俺の名前はジョージ、
さりどで一番の戦闘的プレコギ能力を持つ男だ。
▽▽〇〇▽▽〇〇▽▽〇〇▽▽
俺はSALのレベルDエージェントだ。
通称SALDと呼ばれている
エリートランクDのいわば極秘チーム。
他のSALメンバーとは違い俺たちは
特殊な工作部隊で扱っている内容も実は
国家機密
いや国家どころか世界的にも機密事項
それだけやばい仕事というわけだ。
どんな内容かというと
それは意識原体というものについての調査とそして
実はそれの操作もしている。
簡単にいうと人の無意識を操作するということになる
人の根底にある、物事を認識するための基礎となっているものだ
人間が認識をするためにはその基礎となるものがないといけない
どんなことも自動的にはされないものだ
その根拠となっているものが意識原体なのだが
実際これは機密事項、通常言われているのは
価値観とか判断基準とかの表現がされている
哲学者などもそれについて言及されているが
その意識原体について意識について様々な調査をするセクションだ。そもそも人間が何かを考えるときにこのプロトタイプが影響を及ぼしていると考えられているのだが、実のところそれの形がどういうものであるのかということはわかっていないのだ。
人類は自分たちの意識の源泉がなんであるのか宗教やら哲学やら、果ては科学で求めてきたのだがもちろんはっきりしたところがわからない。
だからSALDの俺たちが、探索しているというわけなんだが。
俺たちの探索の成果として、人を形作る意識原体というものがあり、
それが人間の意識の源泉であり、また認識の成立させるための先験的な要素であることが哲学学者がいうように重要なことだとわかってきた。
しかしその意識原体の具体的な形は不明なまま。
俺たちが毎日せこせこ活動しているのであるが、実はあまりこれが進まないんだな。まあそれはおいておくとして、でも制限もあるんだけどね時間的なね。
それは予言。
2〇18年になると光と闇が交差し、顔をだしてくるという。だからそのときの準備をしないといけないと日夜活動しているというわけ。あと数年しかないのだから、その時までと一応俺たちも気合が入っているのではある。
ということで、俺たちはどこにあるかいつ作動するかもわからない、意識原体と毎日ランデブーというわけさ。
時には実にわけの分からないあやかしのような方法を使うこともあるんだが、実は通常はとても地味な方法でしか実務はおこなっていないのだ。
簡単なところでは、例えばマスコミやSNSもなどを使い、人々の反応をみたりするという初歩的なものが一番よくやる方法だ。
それはわかりやすい。マスコミがやっていた情報操作と似たような方法論。しかしボクらがするのは意識の形式を調査するため、認識の源泉を見つけ出すためのものだから確かに少し違った形になる。
どちらにせよこの方法だと、分析対象が言葉になるから、単純で目で見えるものだ。だからレベルAかBの段階の分離となる。俺らはレベルDだからこれをする実行部隊ではないのさ。
まあこの意識操作についてはあまり語るとのちのちエージェントが活動しにくくなるかもしれないので若干にしておくが、最近はそれは知られてしまったり、あまり露骨に使えなかったりしてきている。
しかしまだまだ気づいていない人も多いので、実際便利に使えているのだ。
いろいろなデマ情報を流して、それを人がどう受け取るのかなどを分析したりもしているが、
余計に情報を流しすぎると、情報に妙な意図的なものを感じてしまうらしく。
感のいい敏感感覚者と呼ばれている人たちにそれを逆手に利用されてしまいますたなんてことも結構あるのだ。
どのレベルでも俺たちは、隠密に行動するエージェントなのだからそれは本当に死活問題なのだ。
だから数人のエージェントに潜入捜査ではなく、潜入操作として表舞台に立たせる場合もある。彼はわれわれの活動を隠すための隠れ蓑として、違うスケープゴートを準備して人の目先をそらしたりしているのだ。
これらはSALAかSALBの役割だし、また極秘ミッションのレベルが高くてもSALDの通常チームがする。俺はある事情によってその任務には訓練でしかついたことがない。聞いたところによると、この潜入操作は、単純なんだが結構つらい任務らしい。
普通ならそれをいくつも経験してからでないとレベルDにのぼり、いわゆるエージェント資格を得ることはできないのだが、ただ一つ特殊なセクションがある。
それがSALIDなんだ。俺はそのさるどさりどのエージェントというわけ。