【第8話】
“また芹沢先生が相沢を殴っている。あの人のやり方は間違っている。”
部活ノートの1ページ目を開くと、そこには芹沢の、部員に対する体罰が詳しく書かれていた。
「ここに登場する相沢って子は?」
「一年部員でした。あの人が執拗に体罰を繰り返していて、その所為で転校していきました。」
「転校するほど、体罰は酷かったの?」
真弓の言葉に、里華は静かに頷いた。
「ええ。表向きは“転校”になってましたけど、本当は違うんです。」
「違うって、どういうこと?」
「実は・・」
真弓が次の言葉を継ごうとした時、玄関のドアが開いた。
「あら真弓ちゃん、来てたの?」
「お邪魔してます。」
「今夜、真弓さんを泊めることにしたの。いいわよね、伯母さん?」
「構わないわよ。夕飯はもう食べたの?」
「うん。真弓さん、今夜は一緒に寝ましょう。」
「わかったわ。じゃぁ、お風呂入るわね。」
「ごめんなさいね、大したおもてなしも出来なくて。」
「いえ、いいんです。大変な時にお宅に伺って申し訳ありません。」
真弓がそう言ってみつ達に頭を下げると、彼女達は笑顔でこう言った。
「いいのよ、わざわざ来ていただいてありがとう。」
その夜、里華の部屋で部活ノートを広げながら、真弓は彼女を見た。
「ねぇ、芹沢さんから暴行を受けていた一年部員、“転校”じゃないのは何で?」
「実は・・相沢君は芹沢の体罰で、脳に重い障害を負ったんです。それで、長野に・・」
「本当なの、それ?」
もしそれが事実なら、大変なことだ。
「ちょっとここで待っていてください。」
里華はそう言って総司の部屋に入ると、彼のノートパソコンを抱えて部屋に戻ってきた。
「これ、相沢君のお母さんがやっているブログです。」
パソコンには、『部活事故の真実を求めて~息子に何があったのか~』というタイトルのブログが表示されていた。
「兄は、相沢君のお母さんに時々メールを送っていたそうです。」
「じゃぁ、芹沢の体罰を公にしようとしてたんだ、総司は。それなのに自殺なんて、絶対におかしいよ!」
「そうでしょう?兄は芹沢の悪事を暴こうとしていた。このノートとブログが何よりの証拠です。真弓さん、これを世間に公表して下さい。」
「どうすればいい?これを公表するにしても、あたし達は未成年だから伯母さん達の許可が居るよ。それに、土方先生にも・・」
「伯母さん達や土方先生にはわたしが話します。だから、このノートは暫く真弓さんが預かって下さい。」
「わかった。明日、メールして。」
「わかりました。真弓さん、今日はうちに来てくれてありがとうございました。」
「何言ってんの。」
その夜、真弓は里華と雑談したあと眠った。
これから長い戦いになる。
「真弓、鳴ってるよ。」
「あ、ごめん。」
真弓は鞄でスマートフォンが鳴っていることに気づき、教室から出た。
「もしもし、里華ちゃん?」
『土方先生に、部活ノートを見せることになりました。ノート、持ってますか?』
「うん。ちゃんと家の金庫に入れてるよ。」
『そうですか。じゃぁ放課後、それを持っていつもの店に来て下さい。』
「わかった。」
放課後、真弓がファストフード店へと向かうと、奥のテーブルで歳三と里華が彼女を待っていた。




