【第6話】
「それで、話って何?」
「真弓さん、お兄ちゃんと最後に会ったんでしょ?」
「うん。近くのコンビニで会ったよ。あたしさぁ、何で高校最後の試合に出なかったのって聞いたけど、答えてくれなくて。」
“静かな所で話がしたい”と里華が言ったので、三人は駅前のカラオケボックスに入った。
「お兄ちゃん、もう芹沢さんが居る限り剣道辞めたいって言ってたんです。」
「そうなの?芹沢って、剣道部の顧問の先生でしょ?総司とそいつ、仲が悪かったの?」
「仲が悪いっていうレベルじゃない。憎しみ合ってたよ、二人とも。」
平助はポテトを摘みながら、そう言って真弓を見た。
「あいつ、周囲からも評判が悪かったこと、真弓だって知ってたろ?うちの一年の部員が、そいつに体罰されて入院したことがあったの。」
「知ってる。でもそれと総司が自殺したのと何の関係があんの?」
「そいつが部員に体罰しているところを、総司が動画に撮ったんだよ。そうだよね、里華ちゃん?」
平助の言葉に里華は頷くと、あの動画を見せた。
「酷いね、これ・・」
初めてその動画を観た真弓は、芹沢が一方的に部員に対して体罰を加え、恫喝しているのを知り絶句した。
「そういや、HRの前にクラスの子達がスマホ見ながら話してたけど、あの子達が見てたの、これだったんだ。」
「あたしもうあいつのことが我慢できなくて、この動画をネットに流したの。もう今頃大騒ぎになってるよね。」
そう言った里華は、何処か嬉しそうな顔をしていた。
「それで、芹沢は何て言ってるの?」
「あいつは逃げた。近藤さんや土方さんに面倒な事押し付けて。でも、もう二度とそんな事は出来ないと思う。ばっちり顔も写ってるし、居場所だってすぐに特定されるでしょ。」
「でもさぁ、仕返しとかされたらどうなるの?」
「そんなの怖くない。お兄ちゃんの分まで、あたしが戦うの。だから真弓さん、協力してくれるよね?」
里華の言葉に真弓は静かに頷いた。
「じゃぁ、俺あっちだから。」
「平助さん、今日はどうもありがとうございました。」
「いいよ。俺にも出来る事があるから、連絡してくれよ。じゃ!」
カラオケボックスの前で平助と別れた真弓と里華は、病院に向かって歩き出した。
「伯母さん達には、もう連絡した?」
「さっきトイレに行った時、メールしました。真弓さん来てくれなくてもいいのに。」
「あたし、何処か責任感じちゃってるんだよね。昨夜、あたしがあんなこと言ったから・・」
「それは違うと思う。だいいち、お兄ちゃんは他人にどうこう言われて傷つくようなナイーブな性格じゃないから。だから真弓さん、自分を責めないでください。」
総司が自殺してしまったのは、試合の事を聞いたからではないのかと自分を責め始める真弓に対して、里華はそれをきっぱりと否定してくれた。
「もうここで結構です。暫く学校に来れないと思います。」
「わかった。何かあったら連絡してね。」
「はい。じゃぁ、さよなら。」
里華はポニーテールを揺らしながら、病院の中へと入って行った。




