【第3話】
彼はシャワーを浴びながら、昨夜総司から送られてきたメールのことを思い出していた。
“土方さん、どうしてもあなたがあの事を公表しないつもりなら、僕にも考えがあります。決してあなたを疑っているわけじゃないけれど、今はもう誰も信じられないし、あんな事があった後だから・・”
メールは書きかけの状態のまま送信されていた。
その後彼の身に一体何があったのかわからなかった。
何故あんなメールを送ったのかを、歳三は総司に永遠に聞けないまま終わってしまった。
それよりもこれからどうするか。
浴室から出てきた歳三は、髪をドライヤーで乾かしながら、さっきのテレビのニュースを思い出した。
総司の家に行こうにも、今頃マスコミが殺到しているだろうし、彼の家族はまだ病院に居るだろう。
暫く考えた後、歳三は手早く身支度を済ませ、車のキーを持ってマンションの部屋から出て行った。
エレベーターで地下の駐車場へと降りると、何処からともなくマスコミがテレビカメラやマイク、そしてICレコーダー片手に歳三を取り囲んだ。
「沖田君が自殺したのは、剣道部内でいじめがあったのが原因では!?」
「副顧問の芹沢さんが日常的に部員達に体罰を行っていたという噂がありますが、それは本当でしょうか?」
「今回の件について、コメントを頂きたいのですが!?」
油断したー歳三は舌打ちしながら、足早に車に乗り込むと、エンジンを掛けて駐車場から出て行った。
気を紛らわす為にラジオをつけると、90年代のJ-POPを特集しているFM有線放送が流れていた。
総司の遺体が収容されている病院までひとつ前の交差点で信号待ちをしていると、スマートフォンがけたたましく鳴った。
「もしもし?」
『トシ、今何処だ?』
「今、病院に向かってるところだ。なぁ近藤さん、本当なのか?芹沢さんが部員達に体罰をしてたって・・」
『その話は後でする。トシ、申し訳ないんだが、学校に来てくれないか?』
「今からか?」
『今回総司が自殺して・・学校にマスコミが殺到しそうなんだ。その前に、芹沢さんとお前と三人で話がしたいんだよ。』
「わかったよ。」
歳三は信号が青になったので、急いで車線変更してUターンして学校へと向かった。
「お兄ちゃんが死んだのに、どうしてあの人が来ないの?」
「里華、やめなさい。土方先生だって忙しいんだ。」
一方病院の霊安室で兄の遺体と対面した里華は、歳三が来ないことに苛立ちを募らせていた。
「あの人、逃げたのよ。上辺ではお兄ちゃんの事応援していながら、厄介事を抱え込むのが嫌で逃げたんだわ!」
「やめなさい、里華ちゃん!お願いだから落ち着いて・・」
「伯母さん達に何がわかるの?唯一の肉親であるお兄ちゃんがこんな死に方されて、妹のあたしが今どんな気持ちになっているのか考えてよ!」
里華はそうヒステリックに叫ぶと、病院から飛び出していった。
「駄目だわ、繋がらない!」
「里華の奴、一体何処へ・・」
(もしかして、あの子・・)




