【第2話】
「皆さんに、残念なお知らせがあります・・」
壇上に立った校長は、ハンカチで額の汗を拭いながら、マイクを握り締め次の言葉を継いだ。
「先程、沖田総司さんが搬送先の病院で死亡が確認されました。警察は、自殺だと判断し・・」
「嘘よ、兄が自殺する訳がないわ!」
生徒達の中で総司が自殺した事による動揺が漣のように広がる中、一人の女子生徒が泣き腫らした目で校長を睨みつけているのを、真弓は見た。
彼女は確か、総司の妹の、里華だ。
「兄は自殺するような人間じゃありません!」
「黙りなさい!」
「兄が自殺したなんて嘘よ!警察はちゃんと調べてくれたんですか?もしそうじゃなかったら、名誉棄損であなた方を訴えます!」
「部屋に遺書が残されてたんですよ、自殺でなければ・・」
「嘘よ、兄が自殺なんかするわけない!」
里華はそう叫ぶと、気絶した。
彼女を数人の教師達が体育館へと連れ出したのを遠目に見ながら、真弓は総司が自殺した事をまだ信じられなかった。
昨晩コンビニで、真弓がアイスを買おうとしてコンビニへと向かった時、そこで総司と会ったのだ。
『久しぶり。この前の試合、出てなかったけど、何かあったの?』
『うん、ちょっとね・・』
そう言ったきり、総司は口を噤んだ。
真弓と総司は、家族ぐるみで仲が良かったので、総司が私立の男子校に行き、真弓が共学の私立校に行っても友人としての付き合いは続けていた。
二週間前、高校最後の試合に、総司は出場しなかった。
そのことが気になっていた真弓がその事を総司に尋ねると、彼は何も言わなかった。
『ねぇ、もうすぐ受験だね。大学、どうするの?』
『今、考え中。姉さんからは、気を遣わなくても学費くらいは出してやるって言われてるんだけどね・・』
総司は両親を小学生の時に交通事故で亡くし、妹の里華とともに姉夫婦の元に引き取られ、この高台にある住宅地で真弓とともに育って来た。
傍目から見ても、総司と伯母にあたる姉夫婦との関係は良好だと真弓は思っていたが、家庭の問題など表面から見てもわからないのが当たり前だ。
あの時、総司はどこか悩んでいるような顔をしていた。
「真弓、どうしたの?」
「あのさぁ、総司が自殺したって校長先生、言ってたじゃん?あたし、昨夜コンビニで総司に会ったんだよね。」
「え、それマジ!?」
「うん、マジ。あいつに、高校最後の試合に何で出なかったのか聞いたんだけど、答えてくれなくて・・受験の事も聞いたら、言葉を濁しちゃってさ。何か、すごく重いものを背負っているような顔をしてたような気がする・・」
教室に戻った真弓が親友の湊にそう話していると、彼女は少し声をひそめて、こう言った。
「それ、警察に話した方がよくない?」
「何で?警察は総司が自殺したって考えてるんでしょ?だとしたら、あたしが総司と会った事を話しても意味ないじゃん。」
「そうだけどさぁ・・もしもよ、総司が自殺じゃなかったら・・」
「誰かに殺されたってわけ?そんな訳ないじゃん。だって、今朝担架に乗せられた時に総司に付き添っていた伯母さんが、“何で自殺なんかしたのぉ!”って叫んでるの、うちのママが聞いてたんだもん。」
「じゃぁあの子の言葉は?あの子、嘘吐くような子じゃないじゃん。」
「そうだけどさぁ・・」
総司の死は自殺なのか、他殺なのかーそんな憶測が校内に広がりつつある中、マスコミは彼の死を大々的に報道した。
“17歳男子高校生、自宅で変死。遺書には、自殺を仄めかすようなメモが残されていた。”
テレビのニュースを観ながら、土方歳三は溜息を吐いた後テレビのスイッチを切った。




