【最終話】
「総司とは・・高校に入る前から内緒で付き合っていた。」
里華の目が驚きで大きく見開かれるのを横目で見ながら、歳三は一旦言葉を切った後、話を続けた。
「あいつは、高校に入ってから変わった・・急に荒れて・・その時、俺に縁談がきて・・」
「それで、先生はお兄ちゃんを捨てたんですか?」
「俺は総司を捨ててねぇ。暫く距離を置こうと、あいつに言っただけだ。」
「だから・・お兄ちゃんは高校最後の試合を放棄したんだ。誰よりも信頼していた先生に、裏切られたから!」
里華はそう言うと、歳三の頬を叩いた。
「先生を信用したあたしが馬鹿だった!先生がお兄ちゃんを殺したんだ!」
「総司は・・」
「お兄ちゃんは自殺したけど、先生が間接的に殺したのも同じじゃない!先生との関係を伯母さん達に話せなくて、悩んで・・今まで先生は、わたし達のことを可愛がってくれたのに、それは全て偽りだったのね!」
「違う、俺は・・」
「言い訳なんか聞きたくない、出て行って!」
興奮した里華は、そう叫ぶとその場で泣き崩れた。
「里華・・」
「真弓さん達には真実を話したりはしませんから、安心してください。兄も、それを望まないでしょうから。」
「わかった・・」
「帰ってください、もう二度と、ここには来ないで。」
歳三は一度も里華の方を振り返らず、リビングから出て行った。
(総司、俺はこれからどうすりゃぁいいんだ?)
あてもなく車を走らせながら、歳三は漸く総司の死を実感した。
どれほど彼に謝っても、彼はもうこの世には居ない。
里華が言ったように、自分は総司を間接的に殺したのも同然だ。
彼に謝ることしかできない。
歳三は溜息を吐くと、近くのコンビニに車を停めた。
店で買った缶コーヒーを飲みながら、歳三は総司と一緒に乗ったあの観覧車に再び乗ろうと、横浜へと向かった。
春休みとあってか、そこは家族連れやカップルで賑わっていた。
(ここは、何にも変わってねぇな・・)
観覧車から外の景色を眺めながら、歳三は暫しの間総司との幸せな思い出に浸っていた。
(総司、俺は・・お前の想いにもっと早く気づいてやれたら・・こんな事にはならなかったのかもしれねぇ・・)
観覧車越しに見える海は、青く澄んでいた。
【完】
この作品は2013年に書いたもので、当時問題となった体罰問題を題材にしたサスペンス風の作品にしたかったのですが、見事に挫折しました。
もうちょっと色々と話を広げて、サスペンス仕立てにしたかったんですけど、尻切れトンボ状態で終わらせてしまいました。
後味の悪い最終話になってしまった・・




