【第23話】
「わたしが出ます。お二人は、暫くお茶でも飲んで待っていてください。」
「うん、わかった・・」
真緒はそう言うと、真弓とリビングで静かに里華から出された紅茶を飲んだ。
「真弓って、呼んでいい?」
「いいよ。」
「あのさぁ、あんたはあの子の兄貴とどんな関係なの?」
「付き合ってるとか、そういうのはないよ。ただの幼馴染。」
「羨ましいなぁ、あんなイケメンと毎日話せてさ。あたしみたいなデブでブスは、遠くから眺めることしかできないもんね。」
「総司、葛城さんのこと知ってたよ。いつも自分のバイト先に来て、美味しそうにハンバーガー食べてるって話してた。」
「うっそ、マジ!?何か照れんだけど。」
そう言って顔を赤らめる真緒を見て、彼女は根が悪い子ではないなと真弓は思った。
今まで真緒とは話した事がなかったが、一度話してみれば、彼女とは仲良くなれると思った。
「お待たせしました。」
数分後、里華が歳三を連れてリビングへと戻ってきた。
「この人は?」
「兄が生前、お世話になっていた先生です。土方先生、こちらは杉浦真弓さんと、葛城真緒さんです。」
「初めまして。」
「初めまして・・」
「二人とも、突然来て悪ぃな。真緒さんって言ったっけ?あいつの事、知ってんのか?」
「ああ、芹沢豊?あいつなら知ってますよ、中学の時から。あいつ、いじめられっ子だったんですよ。親が金持ちだから、よく不良グループに集られてたなぁ。一度あたしが助けようとしたら、“俺に構うな、ブス!”って怒鳴られましたよ。いくらイケメンでも、あれじゃぁ何処行っても駄目ですね。」
真緒の豊に対する評価は厳しいものだった。
「あいつの家の近所に住んでるおばさんからの情報によると、両親は離婚して、父親は愛人と高層マンションで優雅に暮らしているみたいです。原因は旦那のDVと浮気、それと嫁姑問題。あいつは母親の方に引き取られて、ボロイ木造アパートに住んでるって。」
「そんなに家が貧乏なのに、何で私立の学校に通えるの?理事長の息子だから?」
「まぁ、それもあるんじゃない?まぁ私立行っても公立行っても、いじめられる奴はいじめられるし。」
真緒達の話を聞きながら、歳三は黙って紅茶を一口飲んだ。
「先生、あいつはまだ学校に居るんですか?」
「まぁ、すぐに退学って訳にはいかねぇだろ?父親があんなふうに死んで、あいつもショックを受けてると思うんだがな・・」
「そうかなぁ?あたしがさっき会った時、あいつ里華ちゃんに暴言吐いて逃げてったよ?父親があんな風だから、息子も余程の根性悪だね。」
「確かに・・平助君も前はあの子と仲良くしてたんだけど、いつも金にものを言わせてクラスのみんなから嫌われてたらしいよ?」
「まぁ、あいつが退学するのは時間の問題か。まぁ、あいつが居なくても何の関係もないけどね、あたしらにとっては。」
「それはそうかもしれねぇが・・」
「先生、もしかしてあいつを庇うんですか?やめてください、そんな事をするのは。あいつは、兄を殺したのも同然なんですよ!」
そう叫んだ里華の目は、怒りに滾っていた。
一方、豊はタイヤが切り裂かれた自転車を押しながら、やっとのことで母親と住んでいる木造アパートへと辿り着いた。
自分達の部屋の前へと豊が向かうと、そこには中傷ビラが無数にドアに貼られていた。




