【第22話】
その日真緒は、好きな銘柄のポテトチップスを買いに近所のスーパーへと出掛けた。
食料品売り場を通り抜け、彼女が菓子売り場へと向かおうとした時、鮮魚売り場で怒鳴り声を聞き、真緒はそっとそちらの方へと向かった。
「どうする、やらねぇのかよ?」
「やらなかったら、また痛い目に遭わせるからな!」
派手な金髪の不良数人が、そう恫喝しながら芹沢豊を取り囲んでいた。
彼は完全に怯えきっており、今にも失禁するのではないのかと真緒は思った。
「やめろよ、こいつは関係ないだろう。」
「うるせぇ、てめぇ俺達に逆らう気か?」
「剣道部のエースだかなんだか知らねぇけど、偉そうにしてんじゃねぇぞ!」
これはヤバい―真緒が店員に知らせようとした時、総司がいきなり、不良達に向かって土下座したのだ。
「こいつのことは見逃してくれ。」
「ふん、だったらお前がこいつの代わりに万引きしろよ。そうしたら見逃してやるよ。」
「いい友達持ったなぁ、豊ちゃん?」
不良達はゲラゲラと笑いながら、その場から去っていった。
「余計なことすんなよ!」
「はぁ!?お前何言ってんの?」
「お前の所為で、また俺が恥かいたじゃねぇか!」
(何だ、こいつ・・ムカつく!)
不良から助けてくれた総司に感謝もせず、逆に彼を責める豊の姿を見て、真緒は腸が煮えくりかえった。
「それで?兄は万引きを・・」
「ううん、寸での所で止めたみたい。まぁ、助けて貰って礼も言わないで恨み言をぶつけるような奴に恩を売りたくなかったんじゃないの?」
「許せない、そいつ・・さっき、殺せばよかった・・」
「やったら最後、あんたもそいつと同じレベルに落ちるよ。そんなことになったら、収支がつかないよ?」
「でも真緒さん、わたし悔しいんです!どうすれば、兄の無念を晴らせるのか・・」
「あんたの兄さんが自殺した原因がわからないとねぇ。それさえわかれば、いいんだけど・・」
真緒がそう言って溜息を吐いた時、里華のスマホが鳴った。
「もしもし、真弓さん?今家ですけど・・」
「真弓と知り合いなの?」
「はい。兄とは仲が良かったから・・真緒さん、真弓さんのこと知っているんですか?」
「同じ塾に通ってんの。真弓、ここに来るの?」
「ええ。」
「じゃぁあたし、まだここに居ようかな。」
数分後、真弓は沖田家のリビングで真緒と会った。
「里華ちゃんと知り合いなの、あなた?」
「うん、まぁね。あんたも、こいつらと知り合いなんだろ?」
「まぁね。それよりも二人で今まで何話してたの?」
「何って・・あんたには言いにくいんだけどさぁ・・この子の兄貴が、T高校の奴らに万引きを強要されてるのを見たって話したんだよ。」
「総司が、そんな目に!?」
真弓の眦が上がるのを見た真緒は、慌てて次の言葉を継いだ。
「万引きはしなかったよ。あの芹沢豊が暴言吐いたからね。」
「芹沢豊って、あの理事長の・・」
「あいつ、父親があんな風に殺されたのに、まだあの学校に居るんだって。ねぇ、図々しいと思わない?」
真緒がそう言った時、玄関のチャイムが鳴った。




