【第19話】
「芹沢さん、居るんだろう?」
芹沢が住むタワーマンションのエントランスから彼の部屋がある階数までエレベーターで向かった歳三は、彼の部屋のドアチャイムを鳴らしたが、中から返事はなかった。
(何だ、居ねぇのかよ・・)
偉そうに自分を呼びつけた癖に、わざと出掛けたのだろうかーどこまでもムカつく野郎だと思いながら歳三はドアノブに手を伸ばした。
鍵は掛けられておらず、それは難なく開いた。
「芹沢さん・・?」
室内は不気味なほど静まり返っている。
歳三がリビングに入ると、ソファに芹沢が座っていた。
「ったく、居るんじゃねぇか。だったら早く出て来い・・」
芹沢に悪態を吐こうとした歳三だったが、彼の前に来て歳三は絶句した。
芹沢の胸には深々とナイフが刺さっており、彼の血で白いバスローブは血に染まっていた。
そして彼の側頭部は歪な形にへこんでおり、ソファの近くには血まみれのゴルフクラブがあった。
芹沢の惨殺死体を発見した歳三はすぐさま警察に通報しようとスマートフォンを取り出そうとしたが、廊下から悲鳴が聞こえた。
「きゃぁぁ~、人殺し!」
歳三が振り返ると、玄関先では高価な毛皮のコートを羽織った水商売風の女が恐怖の表情を浮かべながら彼を見ていた。
「おい、俺は殺してねぇぞ!」
「誰か、誰か来てぇ!」
女が甲高い悲鳴を上げたので、マンションの住民達が何事かと部屋から出て来た。
「この人が殺したの、誰か通報して!」
「俺は殺しちゃいねぇんだよ!」
「おはよう。」
「おはよう。はじめ、数学の宿題やったか?」
「また見せて欲しいとかいうんじゃないだろうな、平助?」
翌朝、藤堂平助が同じ剣道部に所属している斎藤一と話しながら登校しようとしていると、校門の前にマスコミの中継車と思しき車が10台ほど停まっていた。
「何かあったのか?」
「さぁ・・」
二人が校門の中へと入ろうとすると、突然無数のマイクが二人に突き付けられた。
「土方先生はあなた達の担任よね!?」
「土方先生が理事長を殺したって本当なの?」
「土方先生も体罰に関与していたって本当なの!?」
カメラのフラッシュから顔を守るかのように平助と一は両腕で顔を覆い隠しながら彼らを撒こうとしたが、無駄だった。
「平助、斎藤君、こっちだ!」
マスコミにもみくちゃにされている二人の前に、近藤が現れた。
「近藤さん、一体どうなってるの?」
「二人とも、落ち着いて聞いてくれ・・トシが、土方先生が警察に逮捕された。」
「嘘だろ、そんなの!?なぁ、一体何があったんだよ!?」
思わず近藤に詰め寄る平助を、一は彼を制した。
「平助、落ち着け。」
「何でだよ、何で土方さんがそんな目に・・」
「芹沢さんが、自宅で誰かに殺された。偶然その場に居合わせたトシが、犯人だと疑われて・・」
「あいつのこと、土方さんは殺したりしねぇよ!」
「わかっている、わかっているが・・」
そう言った近藤は、苦渋の表情を浮かべていた。




