【第18話】
“総司・・”
“今まで僕、人を殺せるなんて思いもしなかった。でも、あいつを見た途端、自然を身体が動いて・・”
“もういいんだ、総司。もういい・・”
そう言って拳を象った両手を震わせている総司を見た歳三は、そう言って総司の肩を抱いた。
“ねぇ土方さん、もしまた今度のようなことが起こったら、次は止めないでくださいね。”
“そんなこと、出来る訳ねぇだろう!”
“そう言うと思った、土方さんなら。”
歳三が憮然とした様子で総司を見ると、彼はニヤリと笑っていた。
いつもの彼に戻ったのだと、その様子を見て歳三は安堵した。
それから2年後、高校受験を控えた総司は、歳三の母校である試衛館高校に進学する事を彼に告げた。
“公立はどうするんだ?”
“滑り止めなんて必要ないですよ、私立一本で決めますから。”
“そんなこと言ってもなぁ・・。だいいち、伯母さん達には話したのか?”
“ええ。総司が頑張りたいならいくらでもお金は出すって言ってました。”
総司の伯母夫婦には、子どもが居ない。
姉夫婦の遺児である総司と里華を、大学まで行かせることが自分達に課せられた義務なのだと、彼らは思っているらしい。
それに、彼らには莫大な資産があった。
“頑張れよ。”
“わかりました。”
一年半後、総司は試衛館高校に見事合格した。
今にして思えば、試衛館高校に入学する前が、総司にとっては一番幸せな時期だったのかもしれない。
高校に入ってから、総司は変わった。
表面上は陽気に振る舞っていても、その笑顔には何処か翳があるように歳三は思えてならなかった。
どうしてこんなことになったのか・・歳三がそう思いながら観覧車を見つめていると、上着の内ポケットに入れていたスマートフォンが着信を告げた。
彼が液晶画面を見ると、そこには“芹沢”と表示されていた。
「もしもし?」
『貴様、よくもやってくれたな!ただで済むとは思うなよ!』
「それはあんただろう?もうあんたの悪事は全てバレてんだよ。今回の事で、あんたは全てを失うだろうな。」
『強がっていられるのも今の内だ、土方。まさか火の粉が自分に降りかからないと思っているんだろう?』
憎たらしいほど余裕綽々の表情を浮かべた芹沢の顔が、歳三の脳裡に浮かんだ。
「ふん、強がっているのはあんたじゃねぇか。」
『お前、あいつとの関係をわたしが知らないとでも思っているんだろう?』
「なんだと・・」
芹沢の言葉に、歳三の眦が微かに吊りあがった。
『後で話したい事がある。夜8時に、わたしのマンションに来い。』
「わかった・・」
芹沢との通話を終え、歳三はスマートフォンの電源を切った。
周囲の喧騒に耳をすませながら、歳三は観覧車に背を向けて歩き出した。
芹沢に指定された時間に彼が住むマンションへとタクシーで向かうと、雨が降って来た。
嫌な用事は早く済ませようー歳三はそう思いながら、マンションのエントランスで芹沢の部屋番号を押して、中へと入った。
それが、新たなる事件の始まりだとは知らずに。




