【第12話】
「真緒、あんたまた太ったんじゃないの?」
夕食の時、母はいつものようにそう言いながら真緒を見た。
「いつもハンバーガーばっかり食べて・・ママが作ったお弁当、ちゃんと食べてるんでしょうね?」
「食べてるわよ。」
「じゃぁどうして間食なんかするの?」
「何よ、どうしてわたしばかり責めるの?広樹だって間食してるじゃない。どうしてあたしは駄目で、広樹はいいのよ?あたしがデブだから?」
「そんなつもりで言ったんじゃないわよ。」
「じゃぁどういうつもりなの?仮にダイエットしても、こんな不細工な顔じゃ誰にもモテないわ!痩せたら整形費用を出してくれるの!?」
何故だろう、いつもは聞き流している母の小言が、妙に真緒の心を苛立たせる。
「真緒、お願いだから機嫌直して。ママが悪かったから・・」
「姉ちゃん、いい加減にしろよ。姉ちゃんがデブなのは事実だろう?」
「うるさい、あんたに何がわかんのよ!」
自分を馬鹿にしたような笑みを浮かべている弟に苛立った真緒は、テーブルの上に置かれていた物を全て薙ぎ払った。
「あたしの何がわかるっていうのよ!そうやって人を見下して楽しい訳!?パパもママも、みんな大嫌いよ!」
「ごめんなさい真緒、許して・・」
「黙れ、クソババア!」
癇癪を爆発させ、暴れる真緒を何とか鎮めようとした母を、彼女は蹴った。
「真緒、待ちなさい!」
父の怒声を背に受けながら、真緒は二階へと上がり、自分の部屋へと引き籠った。
「どうしたんだろう、姉ちゃん。突然キレるなんて・・」
「あたしが悪いのよ。あたしが、あの子に小言ばかり言うから・・」
床に散らばった食べ物を片付けながら、真緒の母・美津子は深い溜息を吐いた。
「受験が近いから、ストレス溜まってんじゃないの?それに、姉ちゃんいじめられてるし・・放っておいた方がいいよ。」
「明日、学校に行ってみようかしら?先生なら、何か知ってるかも・・」
「やめときなよ。そんなことしたら姉ちゃん、ますますいじめられるからさ。放っておくのが一番だって。」
階下で交わされる家族の会話を階段の近くで聞きながら、真緒は部屋の中へと戻って行った。
翌朝、美津子が真緒の部屋のドアをノックすると、中から真緒が出てきた。
「ねえ、今日学校どうするの?」
「頭が痛いから休む。」
「受験近いのに、大丈夫なの?」
「あたしがいつ大学行くって言った?」
「え・・」
「ママ、あたしのことちゃんと見てるの?いつも広樹のことしか見てないじゃん!」
「ちゃんと見てるわよ、真緒の事も。あなたが学校でいじめにあっていることも知ってるし・・」
「はぁ、何それ?あたし、いじめられてなんかない。クラスのみんなからシカトされてるだけ。」
美津子と話しているとまた苛々してきたので、真緒はピシャリと彼女の鼻先でドアを閉めた。
(一体どうしちゃったんだろ・・いつもはあんな子じゃなかったのに。)




