【第10話】
「伯母さん、犯人が見つかったって、本当なの?」
「ええ。お金も盗まれていなかったわ。」
「そう。」
数分後、警察署で伯母から連絡を受けた里華が彼女と会うと、みつは彼女に鞄を手渡した。
急いで里華が中身を確かめると、教科書もノートも、財布の中身も無事だった。
「犯人は?」
「それが、近くに住む大学生だそうよ。何でも、人に頼まれたって。」
「そう・・伯母さん、あたし学校に戻るわね!」
里華はみつから鞄を受け取ると、学校へと戻って行った。
昼休み、里華は一人で弁当を広げながら食べた。
教室内では仲良しのグループがそれぞれ固まって弁当を食べているが、里華はいつも一人で弁当を食べていた。
この学校には、高校受験で入った。
里華は同じ中学校の友達と公立の高校に通いたかったが、みつ達が住む住宅地とは学区が違うので、一人でこの高校に入ることになった。
誰も知り合いが居らず、いつも弁当を一人で食べる日々は、虚しいものだった。
里華は途中で弁当を食べるのを止め、教室から出て行った。
「真弓さん、一緒にお弁当食べても良いですか?」
「いいよ、おいで!」
三年の教室に里華が入ると、真弓は笑顔で彼女を出迎えてくれた。
「ありがとうございます。お昼、いつも一人なので・・」
「確か、中学は違ったんだよね?だったら心細いよね。」
「あ~、わかる!あたしもさぁ、中学受験でここに入った時、はじめは結構心細かったんだぁ。でも真弓が声掛けてくれたから6年間楽しく過ごせたし。」
「真弓のお蔭だよねぇ。」
「真弓さまさまってカンジィ~!」
「やだなぁ、もう。あたしそんなに偉くないってぇ~!」
そう言いながら笑う真弓の横顔を見ながら、里華は彼女が羨ましいと思った。
自分も、こんな風に友達と笑い合いながら弁当を食べてみたかった。
でも無理だ。
教室では既存のグループが出来あがっており、そこに自分が入れる隙間などなかった。
女子校の中で良い人間関係を築くには、最初が肝心だ。
だが、入学式の時点で里華は友達作りに失敗した。
それから、里華はクラスメイトに無視されるようになり、里華も彼女達と仲良くなることを諦めた。
「ねぇ里華ちゃん、余り同じクラスの子とは上手くいってないの?」
「上手くいくどころか、向こうも仲良くなりたくないみたいだし・・」
「あのさぁ、ちょっと一言いいかな?」
里華の話を黙って聞いていた真弓の友人・真帆はそう言って彼女を見た。
「里華ちゃんって言ったっけ?向こうも自分と仲良くなりたくないんじゃないかって勝手に思い込まない方がいいよ?あたしだってさぁ、真弓に話しかけられる前はいつも人の視線を気にしてビクビクしてたんだから。あんまり、マイナスに考えない方がいいよ?」
「そうですね。わたし、色々と考え過ぎてたのかな。お兄ちゃんがもし生きてたら、真帆さんと同じ事を言ってくれてたかな・・」
「ごめん、あたし言い方キツかったよね。」
「いえ、ハッキリ言ってくれた方が助かります。」
「そう?里華ちゃん、せっかくだからメアド教えて?」
「わかりました。」
昼休みが終わり、里華が教室に戻ると、隅の方で数人のクラスメイト達がヒソヒソと何かを話していた。
「わたしに何か用?」
「ねぇ、沖田さんのお兄さんのことだけど・・」
「兄は死んだわ。言っておくけど、兄のことで変な噂を立てないでよね?」
「そんなつもりないわよ、ねぇ?」
「そうよ。」
クラスメイト達はそう言うと、自分の席へと戻って行った。




