【第9話】
「待ちました?」
「いや、今来たところだ。それよりも何か飲むか?」
「ええ。ホットコーヒー、お願いします。」
「わかった。」
歳三が注文カウンターの方へと歩いて行くのを見ながら、真弓は里華に向き直った。
「先生は何て?」
「今すぐ公開した方がいいって言ってました。念のため、原本は保管して、コピーを公開するって。」
「そうだね。でもさぁ、こんな立派な証拠品、うちに置いておくのは危ない気がするんだ。でも、いい隠し場所がないし。」
「銀行の貸金庫はどうだ?あそこなら、利用者以外は開けられない。」
歳三はそう言うと、真弓と里華にコーヒーを手渡した。
「それはいいですね。善は急げっていうし、早速コピーを取りに行きましょう。」
数分後、真弓達はノートのコピーを取りに、近くのコンビニへと向かった。
「じゃぁ、これは俺が預かっておく。」
「土方さん、今日は忙しい中来て下さりありがとうございました。」
「いいってことよ。じゃぁな、気をつけて帰れよ。」
交差点の前で歳三と別れた二人が歩き出した時、車道から一台のバイクがやって来た。
「きゃぁ!」
バイクにぶつかられ、里華は地面に身体を叩きつけられた。
轟音を唸らせながら、バイクは里華の鞄を持って走り去っていった。
「大丈夫?」
「はい。それよりも、あのバイクどっかで見た憶えがあるんだよね。」
「え?」
「取り敢えず、病院に行った方がいいんじゃない?後遺症が出てからじゃ遅いし。」
「そうですね。あと盗難届も出さないと。」
帰宅した里華は、みつ達にひったくりに遭ったことを話し、彼らとともに警察へと向かった。
「バイクに乗っていた男の特徴は憶えていますか?」
「はい。面長で、釣り目でした。あと、バイクのナンバープレートをスマートフォンのカメラで撮りました。」
里華はそう言うと、制服の胸ポケットに入れていたスマートフォンを取り出した。
翌朝、真弓が友人達と登校していると、里華が彼女達の方へと駆け寄ってきた。
「里華ちゃん、大丈夫だった?」
「ええ。スマホでバイクのナンバープレートを撮ってたので、犯人はすぐに捕まると思います。それだけを報告に来たんで。それじゃぁ!」
里華は真弓に手を振ると、一足先に校舎の中へと入って行った。
「真弓、いつの間にあの子と仲良くなったの?」
「うん、ちょっとね。あの子のこと悪く言う奴が居るけど、話してみれば良い子だよ。あんた達も仲良くなってみたら?」
「そうだね。それよりも真弓、今日の放課後空いてる?期末テストが近いから、勉強会しようと思って。」
「いいね、それ。じゃぁ、駅前のカフェで4時に集合ね!」
「了解!」
真弓達が楽しく談笑しながら教室へと入って行くのとは対照的に、里華は溜息を吐き、どこか沈んだ様子で教室のドアに手をかけると、それを一気に引いて中へと入った。
周りのクラスメイト達は賑やかに話したりしていたが、誰も里華の周りには近寄ろうともしなかった。
HRの時間まで、里華はスマートフォンを弄りながら黒板をじっと睨みつけていた。
その時、みつから一通のメールが届いた。
“警察から、犯人が捕まったと電話あり。”
彼女はさっと椅子を引いて立ち上がると、教室から出て行った。




