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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第5章 Legend、開幕
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第11話 Implement the moon ―月現―

【月】の名を持つ土地の具現者。

その者が月の力を手にするのは、必然なのだろうか。

「知っているだろうが、フィフィのすんでいる場所は【月陰の地】だ。月陰と言っている以上、太陽とは真逆の力が浸透しているだろう、ということは簡単に予想できるはずだ」

「ええ、そうね」

「そこでだ。月って何だ?って話になる。あれは太陽とは真逆の存在だ。いやもうちょい詳しく見れば違うかも知れんが、俺らの視点だと対なる存在ってことになるだろうな。太陽は昼の間に、月は夜の間にしかないしよ」

『んー、なら地名だけが理由ってこと?』

「いや、それだけだったら弱い。問題は俺の存在だ…ああ、俺って言うよりウィウィ本人って言った方がいいか?」

『つまり、私たちがよく知っている、光側のウィウィのことですね?』

「そう、そっちだ。その力の方向性は、ウィリー。知ってるよな?」

『えっと、火と…土?』

「まあそうだ。あと俺から言えば光も適正だな。使ってる様子はないが…いや、あの白い火とかはそうか」

「確かにあれは光っぽいわね…」

「で、だ。そっちはどうだ?」

「私?水と風ね。逆ってこと?でも、それでも私が闇側って点には至らないと思うの」


 その言葉を聞いて、ウィウィは少し考えるような表情を見せた。


「…んー、これはウィウィの記憶から引っ張り出したんだけどよ」

「?」

「一度、ツェルと戦ったことあるよな。フィフィって」

「そうよ。その時に仲間になってくれたんだから」

「今は妾の下僕じゃがな」

『下僕じゃないですよ…』

「…まあいい。俺の感覚が正しければ、あの時空中に線を描いていたアレ、本来ならかなり難しい部類だったんだぞ?」

「え?」

「というより、そもそも本来なら動きにくかったはずだ。あの場所にいたのが、闇に特化したフェイアンと、具現者って点で力のあったウィウィ…その二人がメインで後ろにいたから掠れてたけどよ」

「…どういうこと?」

「ウィウィは自力だけでどうにかできたが、あそこはかなり闇が充満していたからな。そうだな…ウィリーが気絶していたのは覚えているか?」

「…あー…?」

「まあ気絶していたのはどうでもいいんだが。空中に線を書く辺りのこと、思い出してみたらどうだ?」

「そうね…そうしてみる」


 フィフィは、その時の様子を少し思い返してみることにした。


 ~~~~~~~~~~~~~~~


 ~過去(3章11~12話)のフィフィ視点~


「で、こんなところで何してるのよ」

『なにって、現世を謳歌しているだけですが?』

「そんな身で、現世なんてよく言うわ」


(集まりし水よ、風よ、我が意に沿い、動く意志を見せよ)

(流れし空よ、我が元に集まり、界を創れ)


 流れに任せてついつい承諾して、始まっちゃった魔術戦。まあ、久しぶりにやりましょうか…。まずは最初の一手…と思ったんだけど。


『こんなところで正気を保てているのも変わったものですけどね』

「これを正気と言っていいのかしらねぇ…」


(創れ、水を。そして、風を守り、守られよ)

(創れ、風を。そして、水を守り、守られよ)


 この人、強い。纏うマナが、尋常じゃない。きっと、霊になって、よりマナに浸透できるようになって、強くなれたのね。

 裏の詠唱からは、少しだけ闇の流れが感じられる。予想通り、死霊術を使おうとしているわね…。


『狂人から見た自分は正常だと聞きますが。果たして私はどうなのでしょうね』

「さあね。まあ、私と会話が成立しているし…」


(【水線(ウォーターライン)・カスタム】、セット)

(【風壁(ウィンドウォール)・カスタム】、セット)



 ・・・相手は受け身型ね。仕方ない、慣れてないけど行きますか。



「まずは常人だ、と言っておきましょうか!【発動(インヴォケイション)】!!」



 その一言で、私の中に作られていた魔法が発動する。一つは風の壁になって私を護り、一つは水となって私とツェルを囲む線を引く。二つ以上の魔法は、普通8歳なんかじゃ同時詠唱できない。でも、私には力があるからできる。というか、私にとってはこの程度、容易いことだ。


『…っ!【発動】!』

「あら、気づいた?でも…」


 そうしているうちに、ツェルもその魔法の役割を理解したみたい。私を護る風はあまり気にせず、私たちを取り囲もうとする線を止めようと、簡単な土魔法を線の途中に置いた。でも、彼は気づいていなかったみたいだ。


「それ、複合魔法よ?」

『…こんなに簡単に、複合魔法を取り出してくる人は初めて見ましたよ…』


 そう。これは、水と風の複合だ。水を中心に置き、その周りを、ばれない程度に風で覆う。水にとって苦手な属性である、土属性へ対抗するために編み出した魔法。難しいものだけれど、作ってしまえば十分強い。ツェルの土魔法は、簡単に風で崩されてしまったみたいね。


『怖いですねぇ。本当にあなた8歳ですか?』

「事実よ。むしろあなたの年齢を聞いておきたいくらいだわ。死んでからの年齢をね」

『あー…どうでしたか。忘れました。いつ霊になったかも覚えてませんし』


 全体を水で囲み切った時点で、水は内側へと軽く浸食する。宙に浮く水が近づいてくるっていうのは、ちょっと怖いけど仕方ない。水は円状に囲ったそれに、人が歩く程度のスピードで、魔法文字を書いていく。


 ~~~~~~~~~~~~~~~


「…ああ、あの時ね。それがどうしたの?」

「あの時ツェル、『こんなところで正気を保てているのも変わったものですけどね』って言ってたよな。ってことは、何か魔法使ってたろ?」

『ええ?…まあそうですね。あの時は死の気配を、霊の力を使って充満させていました」

「まず一つ目。死の気配がどうこう言っているこれは…まあ想定がつくだろうが、闇だ。それが充満している中で動ける水っていうのもあれだが…その時動かしていた水ってよ、フィフィ。お前の力そのものじゃないだろ?確か魔法だったはずだ。あの時は自重していたみたいだしな」

「魔法は全力よ?」

「お、おう…ってそうじゃねぇ。水がどうやって空中を泳いでいた?」

「とはいっても…私は魔法を使っていただけよ」

「そうじゃない。水は…お前とツェルを囲んだあと、内側へ『侵食する(・・・・)』ように動いていただろ?」

「…ん、それがどうしたの?」

「闇は、光同士みたいに同属性でぶつかり合う力はあまり持ってねぇんだ。代わりに、侵食して互いを喰らう。闇と光の戦いでは、光が押して、闇が引く。どちらが強いかで決まるのは、闇が多少有利な点以外はまあいいんだが…」


 一拍置いて、ウィウィは口を開いた。


「もしフィフィが光側なら、しっかりした形を保って『円が縮まる(・・・・・)』ようになるはずなんだよな」


「…どういうこと?」

「あいつは辺りに闇を充満させていた。それに対抗するには何かそれに関係する力が必要なんだけどよ…要するにこういうことだ。ウィリー、火を出してくれ」

『え?…分かったわ…えいっ!』


 ウィウィに言われてウィリーが手に火を作り出した。火はゆらゆらと、ウィリーのファイアゴーレムの手の中で燃えている。


『これがどうしたの?』

「んじゃ、俺のを見せるわ」


 そういいながらウィウィがウィリーと同じように火を作り出した。その火は…


「…これ、空気を吸い込んでる?」

「お、フィフィ正解だぜ。正確には空気中のマナを吸っているってとこだ」


 ゆらゆらと、ウィリーのものと同じように揺れているウィウィの火。その火はパッと見ただけでは違いが分からなかったが、よく見るとウィリーのものが内側から吹き出しているように見えるのに対し、ウィウィのものは火のまわりの方が強くなっていたのだ。


「単純に火をつけるだけでも、その火の元になる人の魂によって、出方が違ったりする。あの時のフィフィの水は空気を侵食していたし、闇側だって言っていたのも分かっただろ?」

「…そうね。これならそういいたいのも分かったわ」

「ま、それ以前にフェイアンの闇に対抗できた時点で察してはいたけどな」

「…あー」


 フェイアンと初めて会った時に、闇のせいで死にかけたことは、あまり思い出したくない思い出である。


『あの時はどうなるかと思ったけど…あれも理由?』

「まあな。そもそも光側に完全に偏ってるならまだしも、普通の人なら闇に染まった時点で死亡確定だしな…っと」


 そこでウィウィは後ろを見た。そこには今もなお拘束されている堕天使がいる。


「さっきから話が逸れまくって済まねぇな。で、さっそくだが聞きたい。お前…いや、お前ら(・・・)は。一体どこで、その闇を手にした?さっきまでの話を聞いてりゃ、それが難しい事ぐらい分かるだろ」

「…」

「何かそれ用の装置があったか、それを可能にした闇属性のプロフェッショナルがいたか…どちらにしても、そいつを基礎にした体制っつーものが出来上がってるはずだ―――



 ―――答えろ。お前ら(・・・)どこから来た(・・・・・・)?」

ありがとうございました。

追記※ツェルとの戦いの考察に追記しました

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