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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第4章 神と人
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第19話 人ト世界ノ繋ガリ

フィフィの持つ壁を壊すために、必要なことは。

世界を知り、その外側から穿つことだった。

 ~フィフィ視点~


「ぁ・・・」

『あらら。起きちゃったみたいだね』


 完全に…不意打ちだった!油断していたわ、私・・・!


「ぅ・・・」


 今、私を担いで・・・いや、摘まんでるか。とにかく、さっきまで気絶していた私を運んでいるのは、先ほど私を攻撃してきた存在。


 大雑把にその前のことを思い出してみる。私は、ウィウィと離れたあと、周りにある程度気を配りながら、暇をつぶすためにゆっくりと寝ていた。

 ええ、周りには気を配っていたわ。周りには(・・・・)




 …まさか床の下から吹っ飛ばされるとは思わないでしょう。誰も。


 だって私寝てたのよ?ベットとかで寝ていたなら話は別だったかもしれないけど、私が寝ていたのは床。私の下に隙間なんてないでしょう・・・?


 ・・・ああいや、そういう可能性だって一応あったのか。なら考えられなかった私の落ち度ね。




 ・・・いや、無いわ。


『ちょっとは頑丈なのかも。なら、少しは安心してぶっ飛ばせるってわけ?』

「・・・」


 物騒すぎる。何でこの女はこんなに血気盛んなのかしら。


『…ほら、返事ぐらいしなさい』

「・・・え、えぇっ?」

『だらしない返事ねぇ。とにかく、返事できるってことは生きてるのかな?』

「ええ、まあ」


 あなたのせいでさっきまで気絶してたんだけどね。


『じゃ』

「え?」


 そういうと、彼女は私を投げた。


「きゃっ!!」


 危ない!・・・と思ったけど、割とやさしく投げられたわね。なんだか滞空時間が長い。

 ということでふわりと着地。


「・・・まあ、なんとなくはわかるんだけど」

『なら良し。行くよ?』

「ちょっと、待」

『そりゃあ!』


 待ちなさい、と言う前に私の元に飛んでくる水の槍。一本とはいえ、明らかに殺しに掛かっている気がする!


「ああもうっ!」


 もうこうなったらやってやる!水の槍へ、私の力を繋げる(・・・)


『おっ?』

「そうそう人を怒らせるなぁっ!!」


 そしてそのまま槍の射線を捻じ曲げる!私から、あの女へっ!

 水の飛ぶ勢いをそのままに、私の上で弧を描き、槍は彼女へと突き出された!


『あらら。ふんっ!』


 あと少しで彼女に届く・・・といったところで、彼女は自らの腕で槍を殴って消し・・・うそぉ?!

 そんなことできるの?!想定外よ・・・!


『ひゅう♪なかなかいけるじゃないか?ちょっと見直したよ』

「・・・うわぁ」


 楽しそうだし。戦闘狂というかなんというか。


「…でも、試練とされた以上、超えないわけにはいかないわね」

『あら。ヤる気になってくれた、というわけ?』

「・・・ええ。ちょっとは」


 これはグロウスの…[始まりの炎(グロウス・ウィウィ)]の作り出した試練。


「・・・」


 ―――ドクン、と。体の中で何かが動き出した。


「・・・っ」


 試練、というならば。そこからひとつ、上に上がるために。


「水の、精霊さん?」


 ―――空気中のマナが呼応する。水が、ところどころに生まれだす。


「あなたと、戦うというのなら」


 (ほのお)の一つや二つ、消せるくらいじゃないと水は成り立たないわね。


『・・・ありゃ。人の持つような魂じゃないね、それ』


 ―――ゴゴゴ・・・と、空気が震える音がし始める中。



殺る気(・・・)出さなきゃ。張り合い出ないわ。そうよね?」


『・・・ちょっとは見直したよ。精霊を多少とはいえビビらせるとはね』






 私と彼女は、互いに笑顔を浮かべた。






 その裏に、互いを殺す(・・)意思という名の、どす黒い()を持たせて。






 ―――――――――――――――


 ~ウィウィ視点~


「・・・っ?!」

『・・・うおっ?!』


 なにこれっ?!なんだか後ろからものすごい殺気を感じる・・・!


「敵?!」

『…いや、違うな』

「え?」

『これがさっきのあいつ・・・あの女だったら俺にまで殺気は来てねぇ』

「それもそうだね。俺にだけ向くはずだし」

『…ってことは、あいつらの覇気の余波か』

「えー…」


 そんな相手してて…フィフィ、大丈夫かなぁ。


 ―――――――――――――――


 ~フィフィ視点~


「っ!」

『鋭いねぇ・・・はぁっ!!』

「くっ・・・」


 体力は十分。でも相手は精霊。できる限り全力で、早く仕留めないといけない。


「近距離は駄目か。なら、【水弾(バレット)】・・・っと?!」

『あたしに水で敵うとでも?』

「…まあ、そうよね」


 …【水弾(バレット)】は弾かれてしまった。結構マナを込めてたんだけどな。


『今度はこっちから行くよ!』

「っと!」


 水の精霊は、私の残した【水弾(バレット)】を剣の形に変え、私へと斬りかかってきた。


「守るっ!」

『甘い!』


 ―――パキンッ!


「はやっ!」

『まあ、水の守りじゃだめね。何かが混ざってたみたいだけど』

「一応風も含めてたんだけど・・・」


 水のベールは、一撃だけで砕けてしまった。消えるのではなく、砕けるということは、おそらく水そのものに干渉したのでしょうね。


「ならっ!」

『せいっ』

「あうっ」


 近接攻撃を仕掛けようとしたら、軽くあしらわれてしまったし。


「…もしかして、手詰まり?」

『ほらほら、何してるの?』

「ぐあっ?!」


 少し油断すれば後ろに回られて、すぐ一撃。何故かこの精霊、武道派なのよね。


「少しぐらい魔法の一つや二つ、見せてもらってもいいじゃないの・・・!」

『はい』

「え?きゃああぁぁっ!」


 とか思ってたら、さっき不意打ちで食らった間欠泉攻撃をまた食らって。


「くっ・・・」


 このままだと埒が明かない。思考を分けよう。勝つために。


「せああっ!!(空間計算開始。マナ分析、思考展開・・・)」


 殴りかかりながら、自分と皆と、世界を視る(・・)


『はっ!・・・ん?疲れてる?』

「少し狙いがそれ始めてる、と?(マナ自体は大丈夫ね。いくらでも使える。空間は…よし。動かせる)」

『自分でもわかってるのかい?まあ遠慮はしないけどね!!』


 まず、この精霊に近接で勝つのは無理。もともと私の身体能力が低い(人としては高いけど)。そのせいでこの武道派熱血水精霊とは殴り合えない。殴る以外で何かしようにも、太刀打ちできるものがない。


「はっ!(あとは彼女と、もう一人。あの炎の方までぎりぎり出来ればいいんだけど…)」

『甘いっ!』

「・・・うん。なんだかやばいような気がするわ(…あー、良し、水の方は把握。炎の方はウィウィと似てる。けど繋がってないから、大丈夫そうね)」

『狙いが単調になってるよ?多少のホーミングは意味なんてない!』

「知ってるけど今はそれどころではないの!(…炎、把握。これならいけるわね。ウィウィは…いいや。どうせ勘で全て終わらせるでしょう。異端要素(ウィウィ)は今回は味方になるはず)」


 得意の魔法を放とうにも、魔法は大抵精霊を介して発動する、と考えられているところもある位、精霊の力は魔法に比べて強すぎる。魔法の作り出す限界・・・つまり、人間の想像力(魔法のイメージ力)が、精霊の力を大きく下回っているし。


「・・・ふっ!(あとはそれらの誤差の計算…良し)」

『お?狙いが戻ってきた』

「せい!はっ!とうっ!(それじゃ、まず試しに読み(・・)の計算結果は…)」

『うお?!っとっとっと・・・』


 でも、さっきまで見ていてわかった。精霊の力だって原理は魔法と同じ。マナを現象として取り出し、それを現実にまで引っ張り出す。あくまでも、その速度と許容量が大きすぎるだけ。

 ・・・たぶん、そう。


「・・・Q.E.D。(計算結果と同じ避け方。なら、きっとそれ以外も大丈夫ね)」

『急に狙いがよくなった?気のせい…?』




 一度距離をとり、思考を一つに戻す。





「よし。もう、この空間は計算できた(理解しきった)わね」

『どうしたの?急に独り言始めてさ』







 それなら。私の(・・)方が(・・)上位互換(・・・・)なのよ。





「正直不安でしかないけど、仕方ない・・・はぁっ!!」


 水を、呼び出す(・・・・)。空気中から作り出される、多量の水。それは、龍を形取り、精霊へと襲い掛かる。


『魔法?無詠唱でも同じ・・・って?!』


 それを魔法と同じ様に止めようとする精霊だけど。甘いわ。




 動け、水のマナよ。私の意志に従って、世界の理を捻じ曲げろ。


『魔法じゃないの?!マナが動いている・・・!!』


 何も出来ないまま龍へと呑まれていく、水の精霊。なぜだ、なぜ私の力で止められないんだと質問するかのような顔でこちらを見るけど。



「私の名前と、宿命を忘れたの?精霊さん」

『・・・っ!まさか!』




 たとえ相手が属性を司る神のような存在だろうと、私の力は通用する。




「この地で使えるかどうか不安だったけど、杞憂ですんでよかったわ」




 私が動かす水のマナ。フェイアンの龍のような形で、すべてを飲み込もうとするそれは。




 世界に縛られる(・・・・・・・)精霊には、絶対に操れない、具現の力(・・・・)




「【フィフィ()()リベルクロス(具現者)】。私のこの力が目覚めた今。この世界()、もう私たち(・・・)のものよ」

ありがとうございました。

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