第6話 パーティー準備と小さき意志
すいません遅れましたorz
これからはウィウィの一年ごとの出来事を書くことになりそう。
ウィウィが産まれてから早二年。彼はすくすくと成長していた。と同時に問題も起こしていた。そのほとんどは彼の持つ多量すぎるマナが原因であったため、ミルは早々に諦めた。その1年後ほどに村の人々も諦めた。どうにもしようがないのだ。
なにせ彼自身きちんとした制御の方法を知っていないのだ。ミルが言葉を伝えようにも会話なぞ1歳児相手にはできるわけがない。そして200人(推定)レベルのマナを持っているのだ、容易にそれに触れることはできない。諦めるという結論に至るのはごく自然のことだった。
そんな彼が今日2歳になる。
どんなところでも、どんな子でも、どんな時でも。やはりわが子が成長し、一年が過ぎたという証である誕生日は祝うべきものなようだ。ここもまた、彼を祝うために、着々と準備が始まっていた。
…何故か、村の人々全員で。
「おーい、そっちいいかー?」
「大丈夫だ!むしろそっちががんばれよー!」
ウィウィという異端児。産まれた時期も普通とは大きく外れ、力もおかしい彼は、すでにこの火口の村で知らない者はいないほどとなった。そんな彼の誕生日なのだ、日常に飽きはじめた村人たちが、暇つぶしのために遊び半分本気半分で誕生日パーティーを開こうとするのは普通なのだろう。村の真ん中にある食堂が飾り付けられ始めている。
「いや、おかしいから」
「ミルよ、誰に言っているのじゃ?」
「あ、何でもないです」
ミルと村長はこのパーティーのリーダーにあたる。といっても主に行動しているのは村長だが。
「はあ、なんでこうなったんだろう…」
その理由は数日前にさかのぼる。
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「あと数日であの子も2歳かあ」
ミルはすくすくと育つウィウィを見てふとそう思った。すでにいろいろやらかしている彼だが、元気な子で育てがいがあるのは事実なのだ。そんなわが子が生きている証の誕生日がきて嬉しくないわけがなかった。
1歳の時に祝わなかったのはちょうどお皿を土の素に還しているときだったのでどうも祝える環境ではなかったのだ。その日の後にも祝わなかったのは忘れていたからではない。決してない。
「ふむ、もうそんなに経ったのかのう…」
「村長?」
「ああいや、ふと来ただけじゃ。用事はない」
用事はないとは言いつつもどこか愉しんでいる、というか何かたくらんでいるような表情をしていた村長。
それを見てなんとなく不安になるミル。
「何か面白いことでもありました?」
「まあ、ふと思ったことがあっての。」
「はあ、そんな顔している人は、たいてい碌でもないことをしでかすって決まってるんですよ?」
「何で決まっとるんじゃ…」
「世界の理か何かです」
「たまにお主は何を言っとるのかわからん時があるわい」
「ですね、私もそう思っています」
「何故お主が?!」
そんな会話を暫くして、村長は提案をした。
「誕生日パーティーをする気はあるかの?」
「誕生日パーティー?」
「そうじゃ、パーティーじゃ。ウィウィを祝うための、な」
「簡単なものはやろうとしていましたが、なぜ村長がそんなことを?」
「もう十分にあの子は村の子じゃ、お主だけが祝うのはつまらんじゃろう?」
「はあ…何人で祝うつもりです?」
「ふむ、何人でもいいんじゃが…全員、かの」
「えっ」
「全員、じゃよ。村の皆で祝うのじゃ!」
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「ああ、あんなときに村長があんなことを言っていなければ、割と収まっていたのかもしれないわね…」
「なんじゃ?」
「何でもないです」
そうこうしている間にもゆっくりと準備が進んでいく。今飾り付けが終わったようだ。今いるここは食堂。大体100人は入りそうなこの部屋の全体がきれいに飾り付けられているのだが…
「たった一人の子のためにここまでしますかね?」
そう。これはあくまでもウィウィを祝う誕生日パーティー。それにしては豪華すぎる。もはや何かの神でも崇めようとしているのかと言いたくなるほどの豪華さなのだ。
だが、村長は言い放った。
「あの子には、このくらいしないと足りないと思うわい」
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そして、その主役の、今は家にて留守番中のウィウィは、ベッドで眠っていたのだが…
「うー…」
なにかにうなされているのか?否。その理由は彼のベッドを見ればわかる。
彼の赤と白に彩られたベッドのシーツは、彼の寝相の悪さのせいでいつもしわくちゃだ。だが、今回はどうもそれ以外の跡があるようだ。
泥が付いたような、焦げたような足跡。それも4足歩行の動物。それぞれの間隔は大人の親指の長さ一本にも満たない。小さい動物のようだ。一体何なのか?それは跡をたどることで全貌を知ることができた。
ハムスターである、と見る人が見ればそういっただろうそれ。炎のように橙色に染まった毛に、火のついた足。炎溶人にとってはポピュラーな、ファイアラットが、そこにはいた。本来なら人の住処には入らない、火の素から力を得るそれは、何故かこの家に入り込み、ウィウィの指に軽くかみついていた。
「うあー…う?」
「チュ?」
その少しの痛みになんとなく起こされたウィウィ。懐に置いた手にかみついたそれを見て、首をかしげる。それを真似するように首をかしげるファイアラット。意志疎通か?
「あーうー?」
「チュー!」
どうやらそのようだ。ウィウィが右手を挙げればファイアラットも器用に二本足立ちとなり鏡のように左手を挙げている。楽しそうだ。
「わぁーっ!」
「チューッ!」
両手を挙げれば相手も挙げる。異様なまでに早く仲良しになった、鏡写しなウィウィとファイアラットの遊びはしばし続いた。
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「よし、このあたりで終いじゃ!皆引けい!」
「「「おーっ!」」」
「どうしてこうなった…」
遂に誕生日パーティーの支度は終わったようだ。やり遂げた感満載の顔をした村人たちが村長の合図で解散し、あとにはスッキリとした表情の村長と、膝から崩れ落ちたミルが残っていた。
「よし、いい感じじゃな」
「どうしてここまでしてるんですか…」
「理由くらいわかるじゃろう」
「暇つぶしにしては度が過ぎているんですよ!」
「む?そうかの?」
「そうですって!耐火の魔法陣使う分には問題ないですけれど、なんで食堂の改造だとか飾り付けへの金属使用とかをしてるんですか!金属加工って難しいんじゃなかったんですか?!」
「まあ、そのあたりは職人にでも聞いてみといてくれい。」
「そうですね…ってそうじゃないです!指示したのは村長じゃないですか!」
「あーあー聞こえなーい」
「もう…やだ…」
彼女は仕方なく家に戻ることにした。脳の容量や疲労が限界だったからだ。しかし、家に帰った彼女を待っていたのは…
「あーうあー!」
やけに楽しそうにしているウィウィと…
「チューッ!」
それにぶら下がっている魔物だった。
「…えっ」
ミルの思考は止まった。
一年ごと書くとか言っときながらなんかこれ続きそう。
少し情報整理の時間をください。
(7月30日フレイムラットをファイアラットに名称変更、また8月13日修正しました)