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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第4章 神と人
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第8話 神ノ贋作ノ至リシ壁

フェイアンの持つ壁。それは、自らが神の贋作であることだった。

 ~フェイアン視点~


「・・・その言葉、(まこと)か・・・?」

「そうよ・・・だから、待ちなさい」


 妾は、ただ妾の同胞に、ここの場所と妾の行うべき事を聞いただけなのじゃが…。


「なぜ、[この場で待て]としか言われないのじゃ…?」

「お前だからじゃないか?」


 むむむ…。一体全体…。


「なぜこうなったのじゃ…?」


 とはいっても、理由なぞ少し前にしかないのじゃがな…。


 ―――――――――――――――

 ~フェイアンがここに来た直後~


「なあ、そこな同胞達よ」

「む?」

「何だ?」

「何よ?」

「何?」

「…?」


 上から順に、妾、光、火、水、風、土の、六属性の神龍。妾の同胞…なのじゃが、この場所に集められている意味が分からぬ。確か、妾らを鍛えるとか何とか、グロウスとやらが言っておったのじゃが。


 因みに、同胞らの見た目は妾の龍姿の色を変えた程度のものじゃ。妾も今は龍姿。喋っているのは龍語じゃな。


「想定しているものと違うぞ…?」

「何の話だ?」

「ああいや、光の。妾は確か、グロウスとやらに鍛えてもらおうとしたのじゃが、いつの間にかこちらに飛ばされてきていたのじゃ」


 光の。つまり光神龍の名前はグアン。趣味で園芸をやっているらしいが、龍の体型では難しい、とのことじゃ。その為にヒト型になるのを勉強しており、今では6人の中で一番ヒトに近い形をとれるじゃろう。


「ふむ。我は何の脈絡もなく、だったからな。闇のは理由を知っているようだ。しかし、精神体のようで助かった」

「時が流れぬから、か?」

「うむ。花にやるべき水をそのままにしてしまったからな」


 ふむ。光のは何も分からず、か。


「あ、俺なら一応聞いてるぜ?」

「炎のか。どうしたのじゃ?」


 炎の。炎神龍の名はフォイエン。少し元気すぎるやつで、風のをいつも困らせている。生命が持つ活発さは、こやつから始まっておる。


「いや、グロウスだろ?あいつだったら、今日ここに来る直前位に、なんか俺たちを飛ばすー、とか言ってたぜ。理由は詳しく教えてくれなかったけどな」


 ほう。炎のはグロウスを知っていたか。炎つながりで何かがあるのじゃろう。じゃが理由は知らぬ、と。


「まったく、それでいいのですかあなたは」

「水の?どうしたのじゃ」


 水の。水神龍の名はシュイ。炎のを抑えるストッパーの役割を持っておる。少しきっちりとした意識もつ彼女は、我らの中でもリーダーのような存在じゃ。話し合いは彼女を中心に展開されることが多いの。


「私も特にはなにも。ただ、少しだけ何かを忘れているような…」


 時間がかかれば思い出せるかもしれぬ。まあそっとしておこう。


「・・・」

「お、土の。どうしたのじゃ?」


 土の。ロンジョンの名を持つ土神龍の彼女は、言葉がほとんど口から出ない。というより、口数がないに等しい。何故か水のが苦手としておるのじゃが、そんな彼女がここに(こと)を言いにくるとは、珍しいこともあるものじゃ。


「・・・神様・・・試練・・・闇宛て」

「ふむ」

「・・・強くする・・・六神龍・・・道連れ」

「…何?」


 これはひどいことを聞いたものじゃ。妾はどうも、皆を巻き添えにした試練をされるようじゃな…。


「困ったものね。何があってそんなことを…」

「うむ、風の。すまない。どうも妾の身勝手が故のようじゃ」


 風の。風神龍フォンは、その場に合わせた言葉を使う。気を使う達人じゃ…が、何故か土のとは合わせられない。というより、合わせる前に土のが逃げる。妾らが集まるときには普通の口調となって、妾らをそこそこ仕切ってくれる、いいやつじゃ。


「それはそうとしても、なんで?詳しいことを私たちは聞いていないのよ」

「あー、それはじゃな。妾が壊世大陸を離れてからの話になるのじゃが…」


 とりあえず、皆に妾の今の状況を話すことにした。


 その結果…


「あー、うん。大体わかったぜ」

「闇のがよく行っていることではないか」

「まあ、フェイアンならよくやってますから、仕方ないです」

「・・・理解」

「旅ねぇ。行ってたのは知ってたけど、その途中でいつものようになるとは思わなかったわ」

「いつもの、とは酷いのう…」


 割と散々な評価をもらったのじゃった・・・が、そうやって話が終わった時に。


「まあ、そう気を落とさずに…ん?」

「どうした、水の」

「いや、今だれかから連絡が…」


 どうやって連絡を受け取っておるのじゃ、こいつ(水の)は。

 とにかく、どうも水のが何者かからの伝言を受け取ったようで、説明してくれた。


「おそらく、先ほど話に出ていたグロウスという男からの伝言です―――――




 ―――――[フェイアンよ、そこで待て。さすれば道は開ける]・・・以上です」


 ・・・・・・む・・・?


「…そ、それだけか?」

「はい」


 ・・・どういうことじゃ。


「風の、水のが話す意味…というより、グロウスの伝えたい意味は理解できたか?」


 風のは、言葉の中にある意味をとらえるのが得意じゃ。じゃから、もしかしたら何かが含まれているかもしれない、と思ったその言葉の意味を聞いたのじゃが…


「・・・あー、これには深い意味とかは無さそうね」

「・・・」


 ・・・何・・・じゃと・・・。


「・・・その言葉、(まこと)か・・・?」


 そうして冒頭に戻る、というわけじゃ。


 ―――――――――――――――


「待つのも暇じゃのう」

「だな。なにかやるか?」

「今は何も持っていないじゃろうが…」


 仕方なく、妾らは待っておった。深い意味が特にない、という風の言葉を信じるならば、ただここで待つしかない。時間が過ぎるのはよく感じることなのじゃが、意味のない待ちほど面倒なことはない。




 待つこと暫くして。それ(・・)は突然訪れた。


「ふぁああ・・・暇じゃn」


 ――ブチッ


「・・・ん?」


 目を閉じ、欠伸をしていた妾の耳に、何かが切れる音がした。何の音じゃ?


 仕方なく目を開けると…


「…成程、突然の変化、じゃな」


 妾の目には何も映らず、妾の同胞はすべて消えていた。そこには何もない世界が、広がっておった。闇も、光も。物も、人も。マナでさえ、何もなかった。


「いやはや、精神世界とは恐ろしいものじゃな・・・ん?待て。何もない(・・・・)、じゃと?」


 おかしいのう。妾は意志とマナの力でこそ動ける者。そのマナさえない(・・・・・・)というのに、何故動ける?


『…接続に時間がかかったのう』

「ん?」


 声のする方へ振り返る。


『仮にも神、か』

「むー、どちら様じゃ。名を名乗れ!」


 そこには妾に似た龍が佇んでいた。目に見えずとも、感じることはできている。色こそ分からぬが、どうも波長は妾と同じなようじゃ…。


 ま、十中八九妾の現身じゃろうな。


『何を。わかっておろうに』

「ははーん…それが試練、かのう?」

『いかにも、じゃな』

「接続云々とは?」

『妾をつくりだすための力よ』


 その龍から感じる波動が強くなる。


『この世界で、お主の力は世界に直結せぬ。妾は、神の力により強引な突破をしてきたお主を、今改めて元持つ性質に目覚めさせる必要があるのじゃ』

「難しいのう。ゴリ押しでも問題ないではないか」

『それではこの後、壁にぶつかるぞ?』

「その時に考える、で良いではないか…」


 はあ、仕方ない。妾の力を強くする。そう決めて彼奴(グロウス)に頼んだのじゃから、多少は我慢するかのう・・・


「六神龍が一つ、【(フェイアン)】。我が裏よ、いざ参る!」

ありがとうございました。

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