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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第4章 神と人
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第7話 最強ハ地獄ヲ逝く

自分に気づくとは、一体どれほどの罪なのだろうか。

モノは、自らの暴走と、己の代償を表す地獄への道に、一つの解を見つけた。

 ~モノ視点~


『【機関起動(スタート)】・・・あれ?』

「・・・」


 ボクは、僕が動かないことに疑問を持っているみたいだ。


『えっと・・・なんで【機関起動(スタート)】したのに動かないんだい?』

「・・・」


 それを言われても、僕は動かない。


『何かしているのかな・・・?』

「・・・」


 返答もなし。こうも止まっているんだから、殴ってくればいいのに。律儀に止まっているようだ。

 とはいっても、正直安心したよ。




 今、動けない(・・・・)し。


「・・・」


 それもそのはず。今僕が行っているのは・・・


「(5,.g@=thiy9d\gtyed@)4thiy9d\2@=rs:exyted{27.2735p57.8417x (7)602...}vz94ukfbbjw@tu?)」


 思考の短縮化、なんだから。


 言葉にならない言葉。それは、人間以外も持つことができる力のひとつ。僕たちが人として考えるために必要なものは言葉だ。でもそれじゃあ、ほかの動物たちはどう動く?どう動かなければいけない?

 そう。生きるためには、考えなくちゃ始まらない。本能でさえ、わずかな思考で考えに考え、それが紡がれて形となったものなんだから。


 じゃあ、そのときに使った言葉は何だ?って。そう考えて。


 その結果、今。コレ(・・)が、思い浮かんだんだ。


「(3ewskg)lfnq\d@2@ykatomnq\3sfsf@rq@:...)[[start(実行)]]」


頭の中でそのシグナル(言葉)が組まれたその時、僕は加速する。


『っ?!』

「2@=rsgs@4jub=s@ted@)mhv)4dwe...ハァッ!!」

『ぐっ?!』


 ブーストをかけたことにより威力の上がったパンチ。その暗号のような言葉に惑わされたのか、防御があまりきちんとできていなかったボクの胴にジャストミート。


「:exyc@Zb4\」

『くっ、その言葉・・・』

「x@v)4dwe{(159,175)}」

『がぁっ!』


 言葉を紡ぐ。そのたびにボクへと拳が当たる。


「{(59,107)(146,194)}」

『がっ…まさか、それって…!』

「{(95,196)(130,142)(150,213)}」


 右肩、左脇腹、右腰、心臓付近、左太腿。言葉を紡ぐたび、加速していく僕の拳。


「{118160231184115968826117433037146...}」


 胴左手首動脈付近右膝左爪先右腕関節・・・。


 もはやボクは声も出せない。僕も、ただ暗号をつぶやくのみ。




 いうなれば、今の僕は機械(・・)だ。


 目から入る情報と、今までの知識というデータから、最高の一撃を連続で繰り出すだけの、機械。

 寸分の狂いなんてない。狂いなんて、僕の体が許さない。


『・・・!!』

「{1054011430103381024210732104291083110232113321133211332113321133211332...}」


 いつしか、その攻撃は全て、計算が導き出した結果の最大効率、脳へのダメージ・・・つまり、ボクのコアへの攻撃となっていた。


 少しのずれも許さない。1本の指の違いだろうが僕には許せない。

 でも安心はできる。だってミスなんてないんだから。


「{1133211332113321133211332113321133211332113321133211332113321133211332...}」


 何度も繰りかえす。何度も繰り返せる。何度でも繰り返そう。

 今の僕にはそれが最良なんだから。


「{1133211332113321133211332113321133211332113321133211332113321133211332...}」


 何度も攻撃を繰り返すうちに上がる速度。でも処理能力が追いつかないわけがない。

 だってそれが僕だから。


「{1133211332113321133211332113321133211332113321133211332113321133211332...}」


 ・・・なんだか地獄を歩いている気分だ。

 何度も同じことを繰り返して。


「{1133211332113321133211332113321133211332113321133211332113321133211332...}」


 永遠に許されない大罪を負った罪人が、地獄の釜と針の山、それに血の池を往く。

 全部渡りきったら、門番にまた最初に戻されて。


「{1133211332113321133211332113321133211332113321133211332113321133211332...}」


 自分の罪の重さにいつしか慣れて。

 釜に焼かれ、針に切られ、血が染みる痛みにさえ慣れて。


「{1133211332113321133211332113321133211332113321133211332113321133211332...}」


 魂そのものまで傷ついて、もう輪廻転生にさえ戻れなくて。

 ただただそこで痛みを受け続ける機械のようになって。




 ・・・本当に、それが最良(・・)なのか?


「{1133211332113321133211332113321133211332113321133211332113321133211331...}ッ?!」


 心に生じたわずかなブレ。それは拳にさえブレを及ぼす。

 僅かに攻撃が左にずれた結果、その衝撃でボクが気絶から起きてしまった。


『っ!!』


 当てられた痛みの変化を感じたボクは、すぐさま飛び起き、距離をとろうとしている。


 逃がさない。


「jw!:exyxegs@4...ゥグ?!」


 何だ!?計算に異常が出ている?!


『ッはぁ、はぁ、はぁ・・・なんなんだ、急に』

「ガ・・・ヴグ・・・」


 気づけば、腕が片方イっていた。もう片方もじきに終わる位、脆くなってしまっている。

 胴は…ありゃ、ぼろぼろ。特に攻撃をくらったわけではないだろうけど、皮膚同士が擦れあって落ちてる。血まででてるし。

 あぁ・・・疲れてるのかな。なんだか吐き気がしてくる。さすがに吐くわけにはいかないけど、どういうことなのか。


『どうしたの、急に。殴るリズムが一瞬狂ったじゃないか』

「・・・」




 ・・・あー、そっか。戦いのあまり、大切なことを忘れていた。




 そういえば、僕は人間(・・)だったよ。




「...db4te\kh=.q@4y00ted\…ちょっと、頼みたいことがある」

『何?』

「思考を、手伝ってくれ」

『題を』

「陸ノ路」

『了解』


 ボクは二つ返事で承諾してくれた。あんなにボコボコにしてもまだ生きてるってことは、きっと体力の概念がないんだろうな。




 僕には、足りないことがある。そして、今回の戦いでそれに気づけた。


「『【機関起動(スタート)】』」


 僕は、僕自身をまだ理解していない。


(いち)に天は極楽を持つ。されどそれに救い無く、滅び行く様に抗うことかなわず」


 僕自身を扱う為に必要な力がどれだけのものか、僕自身がどれだけ動くことができるのか、とかは。

 粗方わかってるつもりだった。


()に修羅は破壊を持つ。上がることかなわず、されど返る心に偽りなし』


 でも、足りなかった。そのくらいで計算できるほど、ボクたちヒトの身体はうまくできてなかった。

 力だけが、人じゃなかったんだ。


(さん)に畜生は鎖を持つ。畜養の意を以て、輪廻の罪を使役されよ」


 感情。それは人にとって大切なもの。人を忘れ、ヒトに堕ちるとき、これは消えているんだ。

 ボクは、それを僕に教えてくれた。


()に餓鬼は餓えを持つ。燃える水に焼かれ、炎となる飯に苦渋を知れ』


 時として、感情を無くした方が楽な時だってある。作業(・・)をするときとか、特に。

 でもそれじゃボクたちにはだめだ。


()に地獄は罪を持つ。輪廻を以てかつてを知り、痛みを以て己を歪ませよ」


 人は、人でしかない。超えられないんだ、どうしても。

 たとえそれが僕のように、人を知り尽くした存在だとしても。


(ろく)に人間は苦楽を持つ。が持つ魂と繋がり、善悪を以て仏に至れ』




 だから、「僕」(『ボク』)は。




「『これぞ六道、我等が今尚逝く道』」




 変えてやろう。「ボク」(『僕』)を。




「『それを知り、それを離れよ』」




 世界が、白く染まり始める。



 ―――終わりだな。




「『思考、開放。【最後ノ、零(お疲れさま)】』」




 

 ―――c;d@#3(それじゃあ)ebZt(いこっか)。ね、(ボク)

ありがとうございました。

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