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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第4章 神と人
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第6話 壁当レド尚遠ク在ル謎

モノの持つ壁を壊すために、必要なことは。

自らの理解、そして運命だった。

 膝をついた僕のところに、ボクが来る。


『でもって、強い』

「・・・」


 パタリと倒れる僕。コツ、コツと足音を立てて歩いてくるボク。


『でも、足りないって知ってるんでしょ?』

「・・・」


『自分をよく知ってるね、ほんと』

「・・・」


 そっと、でも乱暴に髪を掴まれ、引っ張られる。痛い…けど、動く気も起きないや。


『今は、お休み。次、また戦おうよ。繰り返せば、きっと僕にも分かると思うし』

「・・・あはは、それはありがとう、だね」

『うん。それじゃ―――




 ―――またね。【最後ノ零(オツカレサマ)】』


 その言葉を最後に、僕の意識は刈り取られた。


 ―――――――――――――――


「・・・またよろしく、ボク」

『・・・ああ、よろしく。僕』


 僕は起きた。そして隣にいたボクと、またぶつかる。


「【機関起動(スタート)】【形態:壊力常装(ファイターフォーム)(マスター)】っ!」

『【機関起動(スタート)】【形態:避動常装(アヴォイドフォーム)】』

 さっきとは違い、こっちはほぼ全力で。あっちは避けを主体とする、【形態:避動常装(アヴォイドフォーム)】で。今度はぶつかることなく、互いに距離をとった。

 しかし、懐かしい型だな、【形態:避動常装(アヴォイドフォーム)】。久しぶりに見た。自らのスピードを上げることに特化した型で、よく動ける代わりに力が弱くなる。スピードに乗せて一撃、とかだったら結構重い攻撃もできるんだけど。

 あと、それに目が追いつくよう、集中力も上がる。おかげで避けるのにはかなり適した型なんだ。強すぎる相手とかには使ってたけど、最近はそんなのもいなかったせいで少し忘れてた。しっかし…


「なんで避けを選んだんだい?」

『訓練だから。ずっとやっておきたいと思ってさ』

「どんな考え方なんだ・・・」


 互いに弱点はある。【形態:壊力常装(ファイターフォーム)】をすると、機動力と火力が上がる代わりに遠距離ができなくなる。【形態:避動常装(アヴォイドフォーム)】をすると、機動力と集中力があがる代わりに火力が下がる。【(マスター)】にしている僕なら、なおさらその長所短所が大きくなる。

 でも今回の場合、遠距離やったところでどうせ避けられるだけだし。逆にボクのほうが不利な気がするんだ。一撃が軽いせいで、あたっても意味がなくなる。【(マスター)】ともなると、碌にダメージ入らないと思うんだけど。


「本当に継続のためだけ?」

『そうだよ』

「・・・」


 ・・・面倒だな。


 ―――――――――――――――


「・・・またよろしく、ボク」

『・・・うん、よろしく。僕』


 この前はスタミナが足りなかったみたいで、途中で倒れてしまった。今度は何とかしないと。


「【機関起動(スタート)】」

『【機関起動(スタート)】・・・あれ?ひとつで終わらせるんだ』

「地力で行くのが一番だと思ってさ」

『へぇ』


 そうして、最初のころと同じように戦った。


「【攻撃:殴(スマッシュ)】」

『【攻撃:殴(スマッシュ)】』


 今度は相手の方が少し早い。それを見て、きっちりと避けていく。勿論、殴りながらね。


『【攻撃:突(ランス・ショット)】』

「【射撃:飛去来器(ブーメラン・ショット)】」


 避けたのを見たのか、その避けた方向に飛ばされるマナの槍。しゃがんでかわし、ブーメランを飛ばす。


『【防御:返刃(カウンターマナ)】』


 ボクは、それが返ってくることは分かっているから、勿論対策をとる。纏われたマナは、飛び道具だろうが全て切り裂く防御のためのもの。

 でも、それだってきちんと弱点はある。


「そこだ!【形態:魔壊(マナ・ブレイカー)】【攻撃:突(ランス・ショット)】っ!」


 それは、【形態:魔壊(マナ・ブレイカー)】などの、マナ壊しを食らうと、カウンターも出来ずに壊されてしまうこと。

 加えて、それから暫くマナを扱えなくなる。反動が結構あるんだよね、これ。


『ぐっ!』

「【攻撃:殴(スマッシュ)】ッ!戻って来い!【射撃:飛去来器(ブーメラン・ショット)】!」

『おわあっ?!』


 ・・・これで当分大丈夫だと思う。僕の行動は、マナがあってこそだから。それはきっと相手も同じなはず。

 ドサッと音を立てて倒れたボク。少ししても、起き上がる気はしない。


「・・・」


 でも油断はできない。さっきからいやな予感がするし。


『・・・』


 互いに互いを待っているかのような時間。空白とも言えない、にらみ合い。


 …のはずなんだけど、なんだかボクが溶けていってるような…?


「…いや、溶けてるよね。あれ」


 どうなってるんだ…。ボクの体はまるでゼリーか何かにでもなったかのように、ゆっくりと形を崩していった。あれはボクの体を模写したものなんだよね?その前提が違ったのかな?それとも僕にもできることなのかな・・・。


『考えている暇はないよ。一回冷静になってみて』

「?!いつの間に後ろに・・・」

『ま、【最後ノ零(オツカレサマ)】ー。』

「しまっ・・・」


 いつの間にか後ろにいたボクに気づかなかった僕は、そうしてまた倒されてしまった。


 ―――――――――――――――


 あれから何回も倒されて、起き上がって、また戦って、倒されて。


「・・・」

『・・・』


 …何回死んだんだろう、僕。


『10回は超えてる。それだけはわかるよ』

「・・・」


 多いな。そのほぼすべてで、最後【限界突破(オーバーブースト)】しているんだから、体持たないよね・・・。


『ねぇ。もう見えてるんだよね?』

「・・・」


 見えてるって何がさ。


『壁だよ、壁』

「・・・」


 ・・・いや。まだだ。


『ホントに?』

「・・・」


 まだ、何か決定的な何かがない。


『…本当にそうなのかな?』

「・・・」


 ・・・?


『…うん。気づいているよねこれ。無意識とはいえ、さ』

「…どうだか」


 無意識・・・か。確かにそれならそうなのかもしれない。


『この12回の戦いで、気づけたはずだよ。理由に』


 12回だったのか。というか数えているんじゃないか、やっぱり。


『どうして力をキチンと使えてない(・・・・・)のか。その訳を、さ』

「・・・無意識に、か。言葉にできない理解ってことかな?」

『そうだね。さ、次は13回目だ。何かが起こると、ボクは信じてるよ』

「そんなこと信用されても困るんだけどな…。仕方ない。がんばるか」


 13。それは不吉な(トキ)。何かを数えるときに、13回目に終わったらそれには呪いがかかるといわれている。本来ならば迷信だと考えるところだけど、あいにくと僕は迷信だとは思えない。何せ僕は…


『はじめるよ?』

「あ、うん」




 …考えても仕方ないか。願わくば、この壁が呪いを持つ地獄の門であらぬことを。




「ふぅー…。【機関起動(スタート)】。逝こう(・・・)、かな。壁の向こうへ」




 ま、この回で超えるのが、きっと僕にとっては最悪で最高なんだろうけどね。

ありがとうございました。

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