表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第4章 神と人
62/144

第5話 人ノ頂点ノ先ノ壁

モノの持つ壁。それは、人の頂点であるが故に、見えなくなったものだった。

 ~モノ視点~


 あれは、確かに僕のカラダだ。どうしてあんなところに?

 いや、そもそも今の僕には身体はあるというのに、どうしてあそこにもあるんだろう?


 …あそこにあるのは、ただ精神世界が作り上げただけか。


 僕のカラダは、まるで磔にあったかのように両手両足を広げ、動かない。僕のお気に入りのスーツまで写されていて、少し気味が悪いな。

 とにかく、なぜ写す必要があるんだろう?


「一体あれは…」

『目が覚めたか』

「ッ!」


 咄嗟に聞こえた声。グロウスのものだ。


『今からお前は()を見る。それを壊せ』

「壁?いや、いきなり壁って・・・」


 そう言われて、ふと何故か。


(『タシカニアナタタチハ強カッタデス。デモ、モノ。アナタハ恵マレナカッタ。ウィリー、アナタハいりーがるダ。ウィウィ、アナタハ壁ガアル。皆、何カガ足リナイノデス』)


 ウィウィたちと離れる直前に会った奴。アイズの声を思い出した。


「・・・ああ、()か。分かったよ」

『・・・その様子なら、()を知ってはいる、ということだな』


 そりゃそうだ。僕はもう、成長する限界(・・)を知っている。僕には今のところ、成長することができる限界に達しているんだろう。


 …人の壁(・・・)。その先にある何かに。


『ならば、せいぜい抗え。そうでなければ、ここからも出られぬ』

「やれやれ。出る気もないよ。強くなるためには、ね」

『念のための忠告だ。・・・来るぞ』




 その言葉が途切れる瞬間、それは始まった。


 僕…いや、ボク(・・)のカラダが、ゆっくりと動き出す。


 磔にされて死んだかのように止まったその体から、少しずつマナが溢れ出す。


 そしてボクは、ゆっくりと体を動かし、僕の警戒する恰好と同じ恰好になってから。




『・・・よろしく。僕』

「・・・ああ、よろしく。ボク」




 そして、僕とボクは、無言でぶつかった。


【ガギイィィィン!】


 強化した身体と、(マナ)が、ぶつかる。いつも思うんだけど、この金属同士がぶつかるような音はなんなんだか。


『・・・』

「・・・(…やっぱり)」


 やっぱり、力は、互いに同じだ。だから、きっと、この後の選択肢(・・・)も。


「『【機関起動(スタート)】』」


 互いに、加速する。


「『【形態:魔壊(マナ・ブレイカー)】』」


 互いに、殴り合う。


 勿論、どっちの攻撃も避けられる。だから。


「【攻撃:鎌(シックル・アーム)】」『【射撃:飛去来器(ブーメラン・ショット)】』


 僕は、返しの腕を。ボクは、殴った勢いのまま、戻ってくる弾を放った。


『【防御:返刃(カウンターマナ)】』「【攻撃:と…(ランス・ショッ…)】クッ!【強制取消(キャンセル)】ッ!」


 ・・・っと、危ない危ない。カウンター攻撃食らうところだった。見た目上特に変わりなさそうなボクは、薄くマナを纏っていた。

 それは、ボクを護る、形なきボディーガード。攻撃すれば、そこから切れ味の鋭いカマイタチのようなマナが飛んでくるようになってる。ずっとは発動できないし、一撃にしか対応できないんだけどね。


「【攻撃:突(ランス・ショット)】・・・仕切り直しか」

『だね』


 【強制取消(キャンセル)】の反動で後方に跳ぶ。と同時に、7時の方角に攻撃を飛ばす。すると、ボクの放った【射撃:飛去来器(ブーメラン・ショット)】とちょうどぶつかる。どうやらボクは、【強制取消(キャンセル)】で後方へと飛ぶことも予想していたみたいだ。


 まあ、僕と同じだし、ね。


「『【追加形態(プラスコード)】【形態:波動常装(シュートフォーム)】』」


 仕方ない、撃ちあう(・・・・)か。


 ―――――――――――――――


『【形態:波動常装(シュートフォーム)(マスター)】』

「―――ッハァ、ハァ、【形態:壊力常装(ファイターフォーム)(マスター)】ッ!」


 拙い・・・いつの間にか追いつめられている!


『壁は、見えているんだよね』

「そりゃあもう・・・ハァ、ハァ、分かってるよ!」


 今は、こっちが格下だ。何故か、ボクには疲れが見られない。僕は十分疲れてるってのに。

 【形態:波動常装(シュートフォーム)(マスター)】を手にしたボクには、蒼いオーラが。【形態:壊力常装(ファイターフォーム)(マスター)】を手にした僕には、紅いオーラが纏われた。でも、その色は、明らかに僕の方が衰えていた。


『動きすぎたのかな?【攻撃:弾(ショット)(マスター)】』


 ボクは、大量の弾を飛ばしてくる。それらは確かに見える。でも、今の僕には…


「(明らかに…避けられないッ!)【防御:鎧(マナ・アーマー)】!」


 そう判断できる位には、分厚い弾幕だった。

 仕方ないと思い、被害を最小限に抑えるため、前に跳ぶ。

 技の宣言と同時に、マナを纏う。


【ドガガガガガッ!】

「ぐっ…」


 被弾。でも、大丈夫。身体には特にダメージはない。まだ、動ける。


『・・・』

「くそ・・・」


 ()。僕にとってのそれは、今は超えられないこと。


「まだだ・・・まだダメージが足りない(・・・・・・・・・)っ!」

『・・・』


 それを超える為には、きっと瀕死レベルのダメージが必要だ。それも、マナまでなくなる位の、超極限状態。


「まだやれるよ、ボク」

『そうか。なら、容赦はしないよ』


 おまけにそれが、前提条件(・・・・)なんだろう、なんて思うと。




「…ははっ」




 なんだか、笑いが出てきちゃうよ。


「行くよ」

『いつでも』


 じゃ、遠慮なく。




「【限界突破(オーバーブースト)】」




『それ、使うんだ?』

「限界は、知っておかないといけないしね」


 僕の、今における正真正銘の切り札だ。まだ先はあるんだろうけれど、今の僕にはこれが限界だよ…きっと。


 僕の身体が、無色(・・)に包まれる。何にも染まらない、でもそれ自体が他から色を借りなくては成り立たないもの。即ち無属性のマナを、ゆっくりと纏う。自分を強化する、それだけ聞けば簡単な話だ。だけど、その仕組みは少し細かい。

 纏っているマナは、元々僕が持っていたマナを、外のマナと混ぜて増幅させたものだ。これをエネルギーとして、ありとあらゆる行動に膨大な力を与える、というものなんだけど、発動前の体力とマナが継続時間につながるみたい。

 発動する前から結構ダメージ食らっていたから、保つことができる時間は短い。果たして1分…いや、30秒も持つかな…?


「それじゃ…」

『うん』

「『行こうか。【加速(アクセル)】』」


 さっき以上に速い速度で、僕はボクに突っ込む。ボクの速度もあがっているけど、僕ほどじゃない。


 互いがぶつかる。ボクは【限界突破(オーバーブースト)】していないから、もちろんこっちが強い。ボクは弾き飛ばされる。それに向かって僕は跳ぶ。


「【攻撃:殴(スマッシュ)(マスター)】ッ!」


 跳躍力にさえ【限界突破(オーバーブースト)】はかかっている。軽くボクに追いつき、その胴に思いっきり殴りかかった。勿論ふっ飛んでいくボク。


「【攻撃:突(ランス・ショット)】!【攻撃:鎌(シックル・アーム)】!」


 突撃。そして飛ばした勢いを組み合わせて、ちょうど首に当たるよう、ギロチンのごとく腕を引く。斬られ、血が噴出すボク。でもまだだ。


「【攻撃:殴(スマッシュ)(マスター)】!【形態変化(フォームチェンジ)】、【形態:波動常装(シュートフォーム)(マスター)】ッ!【射撃:機関魔銃(マシンガン・ショット)】ォォッ!!」


 思いっきりふっ飛ばす。そこから、追撃。幾多もの、マナでできた弾がボクを撃ち抜いていく。


「ラアアアァァァァッ!!!・・・っく」


 そうして、1000発ほどマナ弾を撃ったところで。


「あー・・・さすがに・・・一矢くらい・・・報いた・・・かな?」


 と、ふっ飛ばしたボクを見て、僕は膝をついた。






「どうせ、ボク(・・)は【限界突破(オーバーブースト)】してないんだし・・・まだ、生きてるよね?」

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ