表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第1章 その者、異端につき
6/144

第5話 お皿消失と魔法の物質

説明と日常のダブルコンボ。

世界観には思考が届いていない現状であった。

 ウィウィが生まれて1年ほど経ったある日、ミルが夕飯後に食器を洗っていると、あることに気づいた。


「あれ?足りない?」


 そう。何故か皿が一枚足りないのである。たまに来る人のためにいくつもあるお皿が、一つない。割れたのかと記憶を引っ張り出そうとしても、そんな覚えはなかった。なぜだろう、と考え、盗人かとも思ったが、それなら一枚どころかすべて持っていくだろう、と考えて、一人の可能性を見つけた。


「ウィウィ?」


 そう、彼である。最近ミルの子供になった彼である。今は部屋の中にいる。この家の中では、彼以外自由に動ける者はいない。だが…


「それだと割れた皿の破片が残るはずよね…」


 流石に割れた皿を破片まで回収して捨てる、なんてことまで頭が行くことはないだろう、と考える。そもそも彼はそこまで動けないはずだし、それだと破片がゴミ箱に残るはずだ。


「うーん、本当になんだろ…?」


 盗人だとしたら対策を考えなくては、と思いながら、部屋に戻ることにした。


 ------------------


 また別のある日。ミルが夕飯後に食器を洗っていると、あることに気づいた。


「あれ?また足りない…」


 そう。何故か今度は別の皿が一枚足りなくなっていた。これもまた、たまに来る人のために何枚か用意していたため、一枚消えても問題はないのだが、なぜなくなっていたのか。今回も記憶にはもちろんない。


「本当に盗人なのかな…」


 とりあえず偶然だろうと考えた前回とは違い、今回は前例がある。二回もあるとなると盗人なのかもしれない、と考えたミルは、ちょっとした盗人防止のための手段として、魔法陣を使おうと考えた。


 この世界には、魔法がある。魔法陣もその一種である。踏んだ者がいたら音などでわかる、などという魔法陣は初歩中の初歩。それの改良版で、自分にだけわかるようにしたものくらい、彼女も知っていた。これを玄関に置いておけばいいと考えた彼女は、それを実行した。



 しかし別のある日。ミルはそれ(・・)を目撃してしまう。


 ------------------


 その日、彼女は少し仕事が早く終わり、戻ってきたのが大体夕方前。日もまだまだ明るいときに、それは見つかった。


(あれ?ウィウィ?)


 なんと、ウィウィが食器の入った扉を開けているではないか。彼は器用に皿を一枚持つと、そのままよちよちと部屋に戻っていった。もう物を持てていたり、自由に動けていることには驚きだが、それ以上に皿の行方が気になったミルは彼を追うことにした。


 追った先にあった二階の彼の部屋で、ウィウィは皿を掲げて…



 火をつけた。



「ちょっと待ってぇ?!」


 ミルはそれを見た瞬間飛び出していた。火を扱うこと自体は問題はない。子供が火に触れたといっても、炎溶人だから危ないなんてことはない。火傷とは無縁の種族なのだ。あと家が燃えることもない。だが、火を 何もないところから(・・・・・・・・・)取り出す、なんてことはまず基本不可能だ。あっても魔法を使うことくらいしか可能性がない。そしてウィウィにはそれを教えたことなどないのだ。


 一方ウィウィはというと、いきなり聞き覚えのある、聞こえるはずのない声が聞こえてきたというのだから驚いてしまい、声をあげたり皿を落とすことはなかったが、火を出している状態で動きが止まってしまったのだった。熱され続ける皿。遂には融けてしまった。


「あ」


 床に垂れる皿は、気温によってすぐに固まる。取れにくくなった皿に、掃除面倒だな、と思っていたら。なんと、融けてしまった皿に慌てたウィウィが手をかざしたではないか。それはまた熱をもってそれは融け始め、急にボンッと音を立てて消えてしまった。そこには微かな湯気と、砂のようなものが残っていた。何が起こったのかはわからないが、とりあえず。




「何してるの!!」


 彼女は怒った。何故皿が消えたのか、原理はわからなかったが犯人はわかった。ウィウィがやっていたのだ。なぜその実験らしき行動の対象が皿だったのかはわからない。でもとりあえずきちんと怒ってはおこう、と思ったミルであった。


 --------------------


 その後、皿は燃やしてはいけない、と念をいれてウィウィに説明した彼女は、皿が消えて残った砂のようなものを回収しに、改めて二階に上がってきた。そこに残ったのは炭のように黒くなった粉ではなく、皿を限界まで粉々にしたらこうなるだろうなという、砂にしては小さめの粉だった。なぜこうなったのだろう?と疑問に思った彼女は…


「いや、だからなぜわしのところに来るんじゃ…」

「いろいろ知っていそうですし」


 村長のところに来た。


「で、これがその粉じゃな?」

「そうですね、これは何です?」


 ちなみに粉自体はどうも爆発とともに散らばったようで、掃除はしたが回収は難しかった。今手元にあるのは、大体元の十分の一程度でしかない。元は皿の体積ほどだった。


「少ないからよくわからんが…土の素(・・・)、とでもいえばいいかの?」

「土の素?」

「そうじゃ。たいていのものには素がある。お主の子…ウィウィじゃったか。彼が持っていたのは、皿、それも陶器だったんじゃろう?」

「そうですが…?」

「陶器とは、簡単に言えば土の形を変えて焼いたものじゃ。物質を作るためには二つやり方があったのを覚えておるかの?」

「忘れました」

「はあ…」


 それを聞いてため息をつく村長。


「良いか、この世界には二つの概念があるのじゃ。一つは、物には物の構造があり、全ては幾多もの粒の組み合わせより成っている、という原子説。これはわかるかの?」

「いえ、習ってませんが?」

「はあ…まあ難しいことは事実じゃからな」


 原子説。原子という粒から分子という組み合わせができ、それらをあわせることで物体が存在するという説だ。魔法が確認されなかった頃に行われたいくつもの実験から推された説だ。今でも魔法を使わない者たちには重宝されている知識である。ただ覚える量が多すぎるため、魔法が使える者達にはあまり知られていないが。



「なら、こちらならわかるじゃろうな」


 村長は一息おいて、話し始める。


「魔法が認識されてから、魔法を介して分解または構築したものには、なぜか先ほどの原子説で説明のつかない、謎の粒が残されていたのじゃ。」


 マナが認識されてから、その粒は大量に発見されていたのじゃ、と言って村長は続ける。


「その粒は、いろいろな種類があったのじゃが…そのひとつがその粉。いろいろな鉱物や土など、自然から作られたもののなかで、地に属するものを分解した結果出たものじゃ。」

「分解して?元の土にはなかったんですか?」

「左様。これは魔法でなければ出てこない、とされておる。」


 この世界におけるものの定義。その二つ目は、魔法と物質との関係性が深く関わっている。元々ものを作り上げるだけに収まっていた魔法は、物がマナの力で分解されたときに世界を変えた。



 魔素説。ありとあらゆるものは魔素と呼ばれるものからも構成ができ、物質の上位下位はマナの量によって変えられる。この魔素は構築の際にマナを使うことで原子に置き換わり、またありとあらゆる物体は分解の過程でマナを使うことで魔素へと変えることができる、という、一見すればとんでもない説である。魔法が使える者にとっては基本中の基本である。



「土とは簡単に言えば幾多もの石がごちゃ混ぜになったもの。原子説にとっては混合物、魔素説にとっては下位の土系物質じゃ。陶器のための特別な土なのじゃから、多少は上位なのかもしれんがの。ウィウィは、それを分解できるだけのマナを注ぎ込んだだけじゃよ。」

「…」

「まあもっとも、そのレベルまで注げたのはすごいものじゃ。教えたんじゃな?」

「…いえ、まだ使い方も教えていないのですが」

「それは…頭の痛くなる話じゃのう。」


 彼は、どこでそんな知識を手にしたのだろうとミルは思った。この時点で、彼自身がなぜ皿を焼いていたのだろう、という問題には既に思考が届いていなかった。

ありがとうございました。

(8月13日修正しました)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ