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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第4章 神と人
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第2話 獣ナラザル獣ノ壁

ウィリーの持つ壁。それは、獣としては本来持つべきではなかった壁だった。

 ~ウィリー視点~


 全く、どういう事なんだか。目の前には私の体(ファイアラット)(コア)がある。なら自分は何になっているのやら・・・


『目が覚めましたか』

「…この声、グレウスね」


 どこからか聞こえてきた声に反応する。


『皆は無事です。ご安心を』

「それはどうも。でも、ただで会わせてくれるわけじゃないんでしょ?」

『ええ。今からあなたは、自らを鍛える必要があります・・・』


 ああ、そうか。気を失う直前に、そんなことを言われていた気がするわね。


「なるほどね。で、その方法は?」

『その前に、まず自分の姿を確認してください』

「え?」


 自分の姿?と言われて、ふと気づく。私は、何故今喋れている(・・・・・)のだろう?

 その答えは、急に出てきた鏡の中の自分に、確かにあった。


 ストレートショートでオレンジ色の髪とぱっちりしたオレンジの眼、凹凸の少ない体つき。黄土色の耳はハムスターのように丸く、頭の上に乗っており、またちょっとだけ出ている丸い尻尾がある、などといった点は、元のファイアラットの肉体のイメージ故か。獣人のようだ。ただし裸である。

 それらは、炎ゆえか色の違いがなかった、かつてのゴーレム時の姿と、まるでそっくりだった。色がついている分、より獣人に近い見た目になっていた。


「・・・・・・・・・わーお」

『よろしいですか?』

「あ、うん」


 鏡が消えた。


『改めて。あなたは今、()にあたっています。この中で、あなたはアナタ(・・・)に勝たなくてはいけません。あなたが勝った段階で皆さんに会わせましょう。時間も調整して、皆が強くなった時に会わせてあげます』

「へぇ」

『ですが、勝つまではここから出られません。よろしいですね?』

「分かったわ…ところで」

『何でしょう?』

「私は、この獣人の姿で戦わなくちゃいけないの?」

『それが()ですので』


 ヒトの姿が?一体どういうことなのかしら。


「…まあ、分かったわ。あなたとはいつでも連絡できるのかしら?」

『はい、ご自由に。ある程度ならば質問にも答えましょう』


 …それだけあれば十分かしら。


「ありがとう、それじゃ行ってくるわ」

『気を付けてくださいね』


 全く、危険な目に遭わせているのはそっちだってのに…




「・・・ふふっ」


 仕方ない、行きましょうか。




 目の前にいる、獣の体(ファイアラット)(コア)は、ゆっくりと炎を纏い始めていた。それは、かつての私を思い出させるように、その身を一人の少女のものへと変える。


『・・・よろしく、私』

「・・・ええ、よろしく。ワタシ」




 そして、戦いは、唐突に始まった。


「『燃えろ』」


 互いに、互いの逃げ場をなくす。私はワタシの裏に、ワタシは私の裏に。逃げられないよう、炎の壁を出した。


「水よ」『火よ』


 それから互いに、互いの流れを取ろうとする。私は、相手の体が炎で出来ていることから、水で。ワタシは、私の体が本物の肉体であると理解しているのか、火で。

 そこで、私は気づいた。


「(…水に抵抗がない?)」


 そう。ファイアラットだったころにあった、水への謎の抵抗感が消えていたの。ファイアラットだった時にも4属性をすべて扱えていたのだが、その時には種族的な理由で水をきちんと使えていなかった。

 しかし、今ではそのようなことはなくなっていた。種族的にもファイアラットではなくなったのかしら…?


『考えている暇はないわよ?』

「うわっと?!」


 危ない危ない、前から炎の弾がとんできたことに気づかなかったみたい。スレスレだけど、それを首を捻って避ける。


「お返しっ!」

『意識さえあればよけられるわ…って多っ?!』


 かわりに水弾を飛ばす。それも、受けた量の数倍に。それらは複雑な軌道を描いて、ワタシに飛んでいく。


『…でも、ワタシには避けられる』

「…うわぁ」


 しかし、ワタシはヒト型を止めて、ファイアラットとなって…宙を蹴った(・・・・・)っ?!

 そんな道は想定していなかった…。小さくなって、当たりにくくなったワタシは宙を舞う。水の弾の間を縫って、私に接近して…


「ってうそぉ?!」

『具現、第一形態(ファースト)

「くっ!!」


 ワタシは急にヒト型に戻って、私に攻撃してきた!手には簡単な、炎で出来た棒が握られている。私は咄嗟のことで判断ができず、素手で対応することに…



【ドジュウゥゥ…!】



「え?・・・ぐっ?!あっ…ァ…!」

『初めて受ける[熱]。如何かしら?』


 手がっ・・・!何よこれ・・・っ!動かない・・・いや、動かせないっ!!

 痛みが広がっていく…収まる気がしない!

 今まで溶岩とか、火がよくある場所で普通に過ごしていたせいで、[熱]を忘れていたのね・・・っ!


『でも、ワタシは敵。容赦はしない』

「拙っ・・・【ジュゥ…】ィヤアアアァァァ!!」


 油断した・・・!声が抑えられないっ!痛い…!痛い!冷静になれない…っ!


『後ろ。それ以上に痛くなるわよ』

「え…?!」


 くっ…!これ以上ダメージは受けられない!何とか前に…


「・・・」

『気づいたかしら?』


 あ、あれ?動けない…

 なんで?どうして?


『いや、自覚しただけね。まだ行くわよ』

「ッ!!」


 左から攻撃?!すぐ右前に逸れる!途端、後ろに膨大な熱の流れを感じた。


「―――ッハァ!ハァ、ハァ…」

『・・・』


 攻撃を避けれた今なら、多少は冷静になれる!

 しかし、何で今さっき、動けなかったのかしら…?痛みによる思考能力と身体能力の低下?それとも何かの毒?いや、ワタシは私なのだから、それ()はあり得ないわね。

 じゃあ、一体…?


『考えなさい。自らでたどり着くことが、知識人にとっての何よりの力よ』


 くそっ、考えているわよ!でも、何故か辿りつけない・・・!

 何でよ!どうして・・・―――――




 ―――――・・・どうして(・・・・)思考が(・・・)止まったの(・・・・・)


『…自覚段階のステップアップを確認したわ。行くわよ。具現、第四形態(フォース)


 それに気づいて、ふとワタシを見上げれば。


『そろそろ、()も見えるようになるわ』


 その身に火、水、土、風のマナを合わせたゴーレム姿が。


『じゃあ、行きましょ。もうあなたは、壊す(・・)直前まで来ている』


 何故か、私の動きを。さっきのように止めていた。




第四形態(フォース)魔装神形態(マナゴッド・フォルム)。あなたは、ワタシに勝たなくちゃ、いけないのよ』

ありがとうございました。

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