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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第3章 雨と月の大地
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第15話 ゴー・ストレート

そろそろこの場を離れたいなぁ、と思い始める。

「よし、これでいいじゃろう」

『何したの?』

『【接続】の魔法です。契約魔法の一種で、一応程度の上下関係を持った、主従以上友達未満、といった上下のバランスの契約ですね』

「妾らの方では、【接通(ズィエコゥン)】という名前で通っておる。じゃが、意味が同じだと同じ魔法陣になるようじゃな。文違えど、成立したようじゃ」


 時刻は…彼らが単位を分かっていないため言えないが、満月は真上よりも西に少し傾いている、といったところである。俗にいう丑三つ時。幽霊が出る、と噂される時間だが、ウィウィたちの前に既にいる、というかフェイアンと契約を結んだ幽霊がいるため、噂も何もないところであった。


「・・・どういう状況よ」

「簡単な話じゃ。契約をしたのじゃ。妾が上で、ツェルが下のな。ただし、妾は強制力を持たぬ。まあ、ツェルの承諾を得た上で、ツェルを操作することはできるのじゃがな」

『私は私で、その時に限りフェイアンさんの力を少しだけ使うことができます。承諾前提なのは変わりませんが』

「あとは・・・なんじゃったか」

『一方の承諾なしに、契約破棄ができる、ですよ』

「おお、そうじゃった」


 魔法の説明をしてくれる二人だった。闇属性魔法の頂点であるフェイアンと、闇(という属性こそ知られてはいないが、死霊術は闇属性なのじゃ―――byフェイアン)に特化した宮廷魔導士クラスのツェル。その手の魔法はお手のものである。


「ふーん・・・」

「フィフィ、お主も闇魔法を使ってみぬか?」

「えっ」


 唐突に話をふられた。


「いや、え?そのよくわからない言葉・・・【龍語】を発せるようになれと?」

「ツェルは普通の言葉じゃったろうが。妾でもそちらで術を唱えることはできるが、使い慣れた言葉を使っているだけだからの」

「あ、そう・・・って、ちょっと待って。なんで闇魔法が使える、と思ったのよ?」

「なに?それはもちろん、あの時に取り込んでおったからのう。本来、お主にはない闇じゃが、取り込んだ今ならできるはずじゃ」

「・・・まあ、今はやめておくわ。正直ちょっと怖いし」

「かっかっか。まあ、それも当然かの。濃い一日じゃったが、それでも一日に変わりなし。まだ完全な信用には至らなかったか!」

『・・・・・・そういえばまだ一日経ってないのね。満月は真上を過ぎたし、一応過ぎたには過ぎたけど。会ってから、を計算するならそうなるのねぇ…』

「早いねー」

『そうね』


 ―――――――――――――――


 改めて。


「よし、出発だ!」

「うむ!」


 ウィウィが合図を出し、フェイアンが返す。最近は、元気のいいウィウィとフェイアン、落ち着いたフィフィとウィリー、の組み合わせが基本になってきた。


「・・・とは言っても、どこに向かうんじゃ?」

「前」

『・・・ああうん、やっぱりウィウィか』


 もちろんウィウィは、考え事の一つもしていなかった。


「まぁ、いい。この道の跡をたどれば、きっと何処かにつくのじゃろう?だったら向かうぞ!」

「はいはい、全員ウィリーに乗ってー」

『あ、もう準備しとくべき?【第三形態(サード)】、【炎魔車形態(ドライヴ・フォルム)】・・・最近これしか使ってないわね』


 そういいながら魔車となったウィリーに、ツェルは興味を示したようだ。


『おお…そういえば、先ほど聞きそびれたのですが。何ですかこれは?』

「魔車、と呼ばれる乗り物を、ゴーレムで再現したものよ。昔のヤマトには無かったのかしら?」

『ゴーレムですか…ええ、基本人力車や牛車などといった、何か生き物が引く乗り物くらいしかなかったもので』

「今ならあるかもしれんのう」


 そういいつつ全員乗る。


「さて、どこへと向かうべきなのじゃ?」

『さあね。ツェルも、特に行こうと思ってる場所は無いんでしょ?』

『ええ。いっそのこと、これから太陽の地にでも行きますか?行ったことがないので』

「帰るの?」

「そうなるわね。ティティもいい?」

「ニャー」


 一人追加し、魔車はまた、闇を走る。


―――――――――――――――


『ツェル、先ほど話していた死霊術について、もう一度教えてくれる?あと、魔法陣見せてほしいわ』

『教えてほしい…ですか?』


 しばらく走って、ウィウィとフィフィは寝てしまった。こんな、強いの一言で収まらないような彼らも、未だ子供なのだ。体はいまだ成長しているし、それを無理して動かす必要もない。二人と共に眠りについたティティを確認してから、ウィリーはそうツェルに話しかけた。


「ふむ。妾も気になるからの。こちらとあちらの違いを見ておきたい」

『二人とも知識人なのですね…わかりました、まずは、これです』


 そういいながら袖をまくり、腕を見せるツェル。靄でできたその白い腕には、幾何学的な模様が黒く刻まれている。


『魔法陣は、基本術者自身に刻んでから発動します。こうするとより安全に霊を操れるんですよ』

「む、円型の魔法陣は殆どないのかの?」

『昔はそれも使われていましたが、暴走の危険性が高かったので、今・・・ああそうか、記録としては10~20年前でしたね。私が現世をもう一度見ていたときには、既に体に刻んで使っていました』

「100年経っても変わらなかったのね」

『そのようです。もしかしたら見ていないところで使っているかもしれませんが』

『それはそうと、私たちはヤマトの死霊術を知らないのだけれど』

『ああ、大和の国の死霊術、その方向性の説明がまだでしたね』


 袖を戻し、改めて説明するツェル。


『大和の国の死霊術は、どちらかというと魂や霊、またはそれに類するものを自らの代わりに動かす、という方面に特化しています。術者に憑依させ、強くすることは苦手なのです』

「妾らのものとは違うのう。その霊、というものが、先ほどの幽魂なんじゃな…マナの塊のようにも見えたが」

『マナの塊のように見えるのは仕方ないです。我々の使っている霊とは、モンスターとはまた違う…そうですね、ゴーレムに近いものかと』


 霊を操る方面が違う二人は、相違点を探していく。ウィリーはそれをただ聞いていただけだ。


「先ほど使っていた霊…その中にある意志はどうなっておる?死人の魂が、そっくりそのまま入っているのか?」

『いえ、少し違います。扱っているのは基本、魂そのものではなく、その場に残った意志の残痕です』

「ほう。ならば、その者が死した地でのみ呼び出せる、召喚術の扱いなのじゃな」

『そうなります。勿論魂に干渉したり、憑依系の能力を使ったりなどの死霊術もありますが、性能はそれほどでもないかと。ただ、魔法などの記憶系は、その者の魂に染みついたものならば、扱わせることができます』

「ほう。興味深いのう」


 そう話し合いながら、月陰の地を走る魔車。霊と龍と魔獣、相容れぬはずの三種の会話が、夜の闇を駆けていった。

ありがとうございました。

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