第14話 コネクト・トゥ・ゴースト
なんだかんだで、未だループ内にいるウィウィたち。
果たして酔ったりしないんだろうか、こいつら。
「あー、疲れたわ」
「お疲れー」
魔術戦が終わり、その場にぺたりと座り込んでしまったフィフィ。
「マナの量からして、無理はしておらんのう。じゃが…」
「…えっと、フェイアン?何?」
「出口が、小さいのかもしれぬ」
「出口…?」
「いや、こちらの話じゃ。気にするでない」
いったい何の話なのやら。
『大丈夫ですか?』
「ああ、気にしないで。いつも、魔法を使うとこうなっちゃうのよ」
そこにツェルがやってきた。言葉の調子から、本当に心配しているのがわかる。
「いい魔法だったわ、それに三重詠唱もできるなんて」
『具現者にそう言われるとは、光栄です』
「…ふと思ったんだけど、そっちで具現者ってどう思われているのよ」
『え?神一歩手前の者だとか、神の使いだとか。記述にはそうありましたね。私は信じてはいませんが、それでも奇跡の存在には変わりないですし』
「・・・えぇー…」
戦い終わり、お互いをたたえ合う二人だった。
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「そういえば、きちんと自己紹介してなかったわね。さっき名乗った通りだけど、私は水の具現者。そこにいるウィウィとフェイアン、あと今下でゴーレムを起動しているウィリーの三人…いや、二人と一匹?と旅に出てるの」
「俺は炎の具現者。依頼の帰りついでにこっちの大陸を旅してるんだ」
「妾はフェイアン。龍神の一人じゃ。こやつらが面白そうじゃったからな、ついてきたのじゃ」
『皆さん、どうも。私の名前はツェル。敢えて言うならば、津江瑠と申しますが、どうも他の人には読みにくいそうで。ツェルとお呼びください。職は死霊術師です、戦い方は先ほど見てもらった通りですね』
闘いを改めて思い出した後、思い出したように自己紹介をするフィフィに合わせ、全員がそれぞれ自己紹介をした。
「ふーむ。しかし、死霊術師か。死灵法师と同じなのじゃろうな」
「なにそれ?」
「死人を操る者のことじゃ、妾の元にも何人か居る」
『どこにもいるのですね、そのような人は』
「そういえば、ツェルってどうしてここで霊になっていたの?」
『ああ、それは・・・』
ツェルは、過去に星繋の地で死んだ、死霊術師だそうだ。ショウグンと呼ばれる、ヤマトの国の王様の命令で、死霊術を研究していたところ、とある霊に魂を一時囚われて、肉体が死んでしまったらしい。
そのあと解放はしてもらったとはいえ、ショウグンにその件を説明すると、霊となった以上もう研究はできないだろう、ということでショウグンケというグループから離してもらった、とのことだった。
『それから暫くは色々なところをふらついて、大陸を渡り、そのあとはこの辺りをうろついておりまして。共に行く霊を探したり、途中で会う人と話をしたり、と暇をつぶしていたのですが、暫くしてどうも町の方で私の噂が立ってしまったみたいで…』
「この辺りに幽霊が出る、と?」
『そうです。それで皆怖がり、この辺りなんて通らなくなってしまいました…。その辺りに確か、道の跡が残っているはずです』
ツェルが指さす先には、草原がある。だがよく見ると、草の生え方に多少の違和感を感じる。ついでに、その違和感は一直線上に並んでいた。
「ここかな」
『そうですね。そこは元々ここを通って向こうの町へとつながっていたのですが、噂が出てから使われなくなったもので。大体10年…いや、20年は経ったかもしれません』
「なんじゃと?人の身では長く感じただろうに…」
『いえ、囚われていたのが100年でしたので、それに比べれば』
「・・・おぅ」
フェイアンでさえ同情できない程の苦行らしかった。
「しかし、何故死霊となりながら死霊術を使える?先ほどはそれで幽魂らしきものを操っていたではないか」
『幽魂?ああ、あの子たちですか。私は幽霊ではありますが、同時に死霊術師でもあります。死霊術師にとって、霊は知り尽くされたもの。もちろん、此方側から見る景色は変わったものではありますが、それでも自らのことなんて知り尽くしているのですよ』
「・・・術に引っかからない、ぎりぎりの線を通ってるのね」
『おお、知っている人がいましたか。そうです、死霊術には、ボーダーラインがある。それに引っかからない程度に術を使っているのですよ』
楽しそうに笑うツェル。
「ほう。妾の知らぬ世界を見ており、それを普通のように捉えられるとは…変わった者じゃのう。どうせじゃし、付いてくるかの?」
『え?』
「いや、お主に対して言うなら、憑いてくるか、じゃのう!かっかっか!」
「ちょ、フェイアン?」
「おいおい、妾の力を思い出せ。【闇】、じゃろう?」
「ああ、そういえば…ってそうじゃない、そうじゃないのよ」
流れに乗せられかけたフィフィだった。
「付いてくるって、仲間がさらに増えるってこと?」
「そうなるのう。じゃがこやつの場合、問題はなかろう。楽しさが増えるだけじゃ」
「・・・ああうん、あなたに聞いても意味なかったか。仕方ない、ウィリー?」
ウィリー(の居る、魔車の位置)を叩く。すると。
『・・・はっ?!』
「あ、起きた」
「この人…というか霊、連れて行っていい?」
『ああ、ヒトが増えるのね。いいわy…待て。何かがおかしい』
「むぅ、あと少しで連れていけるはずだったのじゃが」
『待って?え?霊?どういうこと?』
「はぁ、えっとね…」
改めて、復帰したウィリーに状況説明。
『あー…にわかには信じがたいけど、実際いるんだから仕方ないわね』
「で、どうじゃ?」
『いいわよ。フェイアンと契約すればいいはずだし』
「あれ、割とあっさり承諾するのね」
『私にとっては害はない。だったら問題なんてないわ』
「…あ、そう」
案外あっさりしたウィリーだった。
『では、いいのですか?』
「うむ、始めるぞ」
そういうと、フェイアンはウィウィたちから離れた。それについていくツェル。
ある程度離れた途端、フェイアンとツェルを、闇色の魔法陣が囲う。
その魔法陣を見て、フェイアンとツェルは目配せをした。
おそらく想像する魔術を違えない為のものだったのだろう、二人から詞が紡がれる。
「【我的合同、的协议来操作你】」
フェイアンは、ツェルを連れる為に。
『【我は従う、汝のその契約に】』
ツェルは、フェイアンに憑いていく為に。
「【接通】」『【接続】』
異なる言葉、然し同じ【繋がる】詞を聞き取った魔法陣は、二つになり、それぞれに入っていったのだった。
ありがとうございました。