第7話 ダーク・アンド・ホワイト
フィフィ、大丈夫かな?
「・・・・・・かはっ、げほ、げほ」
『ちょ、ウィウィ?!大丈夫!?』
現在、ウィウィは大ダメージを食らっていた。原因は前にいる闇嵐龍、フェイアン。自らを妾と言う辺りからして女性なのだろうが、彼女の放った【黑暗矛】を守れなかったために、もろに食らったのだった。
『…む、もしかして拙い位置に刺さったか?』
・・・それで彼の心臓に突き刺さるのは、フェイアンにも想定外だったらしい。
『大丈夫か、ウィウィ?』
「あー…ちょっと待って。抑えてみる」
「…抑える?」
「血の流れをね。さっきのを応用すればいけるはず…」
そう言うと、ウィウィは眼を閉じる。すると彼の体から薄い赤色の光が漏れだし…
「…よし。止まった」
「魔法使えばよかったじゃない…」
さっきからずっとどくどくと流れ出ていた血は収まった。流れてしまった血はそのままだが。
「これでいいよね、ウィリー?」
『…えっ?ああ、うん。いいわよ。ウィウィが回復手段を手にしたこと以外は問題ないわ』
「・・・えー」
より強くなっていくウィウィに戦慄したウィリーだった。
『…いや、まあ、うむ。妾としては、フィフィが回復させるのかと思っておったのじゃが。想定外じゃな…』
「私が?いや、確かに使えないわけじゃないけど…」
『うむ。それはまあいいとして。今先ほど、守りを破ったのを見たかの?あれこそ[闇]。【神】の意志を継ぐ力の一種じゃ』
『…【神】?』
『ふむ。話すのは面倒じゃから、フィフィ。此方に来い』
「え?」
いわれるままに、フェイアンの元に来るフィフィ。すると、手…というか、前足をかざされ…
『少し起きた後ぼーっとするが、気にするな』
黒い靄が急に飛び出し、フィフィを包み込んでしまった。
「え?!待っ――!―――――!」
『ちょっと、フィフィ!?』
『【闇】を見せるだけじゃ。少ししたら取り除いてやろう』
暫くして。
「―――!―――――ッ!―――・・・…」
「…あれ?声が止まった?」
『頃合いじゃな』
靄が離れていく。残されたフィフィは、気絶していた。首元に、少し黒い染みのようなものが残っていた…が、すぐ消えてしまう。と思ったらまたあらわれた…というように、何度もそれは繰り返されていた。
『…む?闇を取り込んでしまったか?』
「なにそれ?」
『闇を…取り込む?』
フェイアンにとって、それは少し想定外だったようだ。
『むぅ、少し待たれよ。【黑暗、熟悉吸同一种力量】…【黑暗吸】これでどうじゃ…?』
魔法を使い、前足をかざしたフェイアンの元に、フィフィの中の黒いマナが吸い取られていく。すべて吸い取られるかと思われたが、マナがフェイアンに吸われなくなった後も、フィフィの体からその斑点の点滅は消えなかった。
・・・点滅のペースは、先ほどに比べ落ち着いているが。
『…おぅ、拙い。残ってしまっては困るのじゃが』
「どうしたの?」
『少し吸い取れなかった。人には耐えられぬ量じゃが…フィフィならきっと耐えられるじゃろう。暫く待とうかの』
「えー」
フェイアンのいうことを信じて暫く待つウィリーとウィウィ、そしてティティ。
すると。
「・・・んぅ」
「あ、起きた」
『どう?調子はいい?』
「・・・」
『む?』
フィフィの眼は、どこか遠くを見ているようだった。
「あれが、[闇]ね」
『…そうじゃが、それがどうかしたのかの?』
「ああ、何となくわかったの。フィフィの名の裏にある、意味。ウィウィの分も、ついでに何となくわかった」
「へ?」
『む、不味いな』
「えっと、あなたは闇使い。それはいいのよね?」
『そうじゃ。だが、それがどうかしたのかの?』
「そう…そうなのね」
流れるように言葉を発すフィフィ。
「んー…ってことは、[光]もいるのよね?」
「『[光]?』」
『そうじゃな。二極属性は、お互いにそれを削り、お互いにそれから身を護る。四属性よりも単純で、複雑なものじゃ。何も言っていないのに、よくわかったな?』
「それは…」
暫くして、フィフィは答え始めた。
「闇に包まれたでしょ?暫くして何かに囚われた感じがしたの」
『ふむ』
「そして、それが私に繋がった気がしたの」
『残った分のマナかしらね?』
「そうね。それと、たぶんこの大陸には光と闇がない。だから対立もない。けれど、お互いが干渉する道もない」
フィフィは、上の空で考えたことを喋り続ける。
「えっと、何のことを言ってるの?全然分からないんだけど…」
「大丈夫、ウィウィ。今は知らなくていいのよ。私は知ってしまったけど」
『…この大陸には、【神】はいないのじゃな』
「うん。きっと、そう」
「『えっ』」
『全てを分け、全てを繋ぐもの。それが【神】。お主らの指す神は、強いて言うならば偶像であろう。だがこちらは違う。壊世大陸には【神】がいる。だがこの地はどうも、その気がせん』
「で、その【神】には、二つある。それの元が光と闇…そうでしょう?」
『…ちとお主の思考を読んでみたいものだ。あたりじゃよ』
「きっと、【水の具現者】の名の、【フィフィ】。それは、月とかの、【闇】ってことなんでしょうね」
「・・・え?」
困惑するウィウィ。その声を聞く間もなく、フィフィは話し続ける。
「そして【火の具現者】の名の、【ウィウィ】。それは、太陽などの【光】。きっと、そう」
「・・・まって。話が追いつかない」
「今でしか喋れない気がするの。きっといつか変わる。そう思うから」
「今でしか喋れない?忘れることがあるの?」
「違う。きっとあなたには【光】がいつか入る。そうなったら、繋がることはないと思うから」
『はぁ。待て、二人とも。ウィウィはそろそろ落ち着け。フィフィも、そろそろ話を戻させてくれ。感じることは感じてくれただろうからのう…』
その言葉がかけられても、暫くぼーっとしながら話をしていたフィフィと、疑問を顔に浮かべたウィウィだった。
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「はぁ、疲れた」
「落ち着いたー」
暫くして、無事正常に戻ったウィウィとフィフィ。ウィウィには槍が刺さったままだが。
『いいかの?では、壊世大陸について説明するぞ…話も長くなってきたのう』
「お願いしまーす」
ありがとうございました。
価値観?知らん。そこまで頭が回らないのです、すみません。




