第5話 ダーク・ストーム・ドラゴン
嵐って、音読みで『ラン』って読むんだね。
闇嵐龍って書こうとして調べて、初めて知りました。
ウィウィ達が頂上に着くと、そこは一面銀世界であった。が…
『・・・ッ!何かがおかしいわね…』
「何が?…って、聞く必要もないか。俺も分かるし」
「明らかにマナの配分がおかしい…何?これは」
「ニャー…」
彼らがマナの構造に違和感を感じたそのとき。
「げっ!危ない!!」
「へっ?うわっ!!」
頭上から、謎の存在が飛んできた!それをよけるためにウィウィは横に飛んだ…と同時に、反応に遅れたフィフィを掻っ攫って回避させたのであった。
「っぷはー、循環させてなかったら見えてなかったっての…」
「なになに?!どういうこと?!」
『…速すぎるわよ、見えなかったわ』
「ニャーッ!!」
現在理解できているのはフィフィ以外の一人二匹。そのフィフィも、上から来る音に状況を理解したのであった。
数多の風音が流れるそれは、悠々と降りてきた。
形無き物を纏っているかのような、黒い色をした長い胴体と。
普通なら不釣合いな短い足は、その存在に限り、適していた。
鮮やかなライトグリーンの線の引かれた、
闇に溶け込めるような色合いの体を以って…
【キュゥゥゥアアアア!!】
ウィウィ達の前に、[闇嵐龍]は降り立った。
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「わーお…」
「初めて見るわよ、こんなドラゴン」
『[龍種]…だったかしらね。[竜種]よりも自然に近い存在、だったはずよ』
「自然に近い?ってことはこのマナって…」
『ええ。おそらく、あいつが置き換えたもののはずよ』
「ほえー…」
『おとぎ話だと、あれの上のランクで、人の言葉を理解する[龍族]なんてのがいるらしいけれど…』
「まあいいわ。今はあいつを倒す。村に雪崩が起こったら大変だしね!」
そう言うと、フィフィはウィウィから降り、魔法の構築を始めた。すると。
「・・・うん?」
『水に…置き換わってきたわね』
「【祖は水、流れを司る水。我にその流れを示せ】…!
【有利化結界[水]】!」
フィフィが魔法を唱えると、フィフィを中心に水のマナの円柱が出来上がり、山を包み始めた。
【キュウウウアアァァァッ!!】
「これであいつの自由は奪えるはず…!ウィウィ!あいつを!」
「おっし、分かった!はああぁぁぁぁっ!!」
ウィウィは体に力とマナをこめる。が…
「…なんか、力が入らない」
「あ、うん。ごめん。周りのマナをなんとかしてからじゃないと無理だと思うの。周りは全部マナで置き換えちゃったし」
「…うそーん」
【キュアアアッ!】
改めて。
「はああぁぁぁぁっ!!」
ウィウィが創炎魔法を唱えた後、もう一回力とマナをためると、ゆっくりとウィウィの周りにマナが纏われ始める。しばらくして、全身に薄くマナを纏ったウィウィは、
「よし!これでっ・・・」
と意気込んで、闇嵐龍に飛んでいった。
【キュアアアアァァァッ!!】
「・・・ってあれ?うわっ!」
…はずだったが、何故か闇嵐龍が風を纏いなおしていた。飛ばされるウィウィ。
「・・・うそでしょ?そんなに強い風なの?」
『フィフィ?』
ウィウィが飛ばされたことに戦慄しているフィフィ。ウィリーが理由を聞くと…
「…塗りつぶされたの」
『?』
「マナがね。あいつの周りだけ何か別のもの…マナの暴風になってるのよ」
『なによそれ?それだと、消してもすぐ戻るってことでしょ?フィフィのマナが切れるか、あいつのマナが切れるかの勝負ってことにはならないの?』
「それにさえならないの。闇嵐龍の鱗に触れたマナが、強制的に変わっているみたいだからね」
『…完全に相手のほうが上手じゃないの』
「自然災害って呼ばれてた生き物をなめてたわね。こうなったら封じ込めるのをやめて、もう私も攻撃に移ることにするわ」
『私も手伝うわよ』
「ニャー!」
『あら、一緒にやってくれるの?ありがたいわね』
そうやって話し合っていると。
「みんなー、あいつに攻撃できるかもしれないよー」
「『・・・えっ?』」
「ニャ?」
いつの間にかウィウィが戻ってきていた。
「実際、あれ脆いと思うんだ」
「あれが?人一人吹き飛ばせるほどのものよ?」
「ううん。あえて言うなら、【人一人しか吹き飛ばせない】だね」
そう言うウィウィの手に、大量のマナが詰まっていた。ウィリーは、その詰まっているマナの量からして、ウィウィが今からすることがなんとなく分かってしまった。そして、恐怖した。
『…おい、待て。いやな予感がするのだけれど』
「確かにあれは、全面に守りができる、いい構造だね。でも、足りない…!俺からの攻撃を守るには足りないっ!」
フィフィもまた、そのマナの量に気づく。そして、なんとなくいやな予感を感じたのだった。
「…待って。ちょっと待って。せめて雪崩は抑えてよ?」
「行っくよー・・・!!」
【キュアウッ?!】
闇嵐龍でさえ、そのマナに気づけたのだった…が、もう遅い。
「【穿チキル】ウウウゥゥゥゥッ!!!」
その手から放たれたマナの槍、いやもはやレーザーのようなそれは、
【ギュウウアウアアァァァッ?!!】
闇嵐龍を、軽々とぶち抜いていった。
と同時に…
「…なにあれ」
『ウィウィの技よ…【穿ツ】に、威力系補助の【~シキル】を加えたもの…だったんだけど。正直なにあれ、としかいいようがないわね』
「…ニャッ?」
『え?ウィウィはどこって?そりゃそこ…あら?』
ウィウィを、反動で逆方向にふっ飛ばしていた。
「『ウィウィィィィッ?!』」
「たーすーけーてええぇぇぇー…」
なんとも締まらない最後であった。
ありがとうございました。