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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第3章 雨と月の大地
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第4話 マウンテン・ジュアル

寒いのは嫌いでござる。

「『さむ~いっ!!』」

「そりゃ火山の住人からしたらねえ…」

「ニャー…」


 現在、ジュアル氷山八合目ほど。グレウス火山だったらこのあたりから溶岩が見え始め、暑くなり始めるところだが、ここはジュアル氷山。流れるものは溶岩ではなく流氷。あたりの空気は冷たくなるばかり。そんな中にきているのだった。


『想像以上だわ、これは』

「それほど?」

『ええ。肌を刺す冷たさってのは、このことを言うのね…さむっ!』

「…えっと、何処かほかにも寒いところとかってなかったの?」

『えっと…太陽の地自体が割と暖かい場所だし、そこから出たことなんてないし。それに、私たちが普通生活している場所って、火山…それも溶岩のすぐ近くだしね。寒いなんて、今まで感じたことなかったわ』

「…考えてみれば、溶岩のすぐ近くで過ごすって、何よそれは」


 カルチャーショック?のようなものを受けた二人だった。


「しっかし、それだとこれがはじめての[寒さ]ってことになるのかしら?」

『…そうなるわね。せいぜいこの道中で感じた、寒いというよりも涼しい程度のものくらいだし』


 初めてで感じる寒さが氷山というのは、かなりきつい気がする。


『…でも、炎は使ったらだめだったのよね?』

「そうね。雪崩が起きやすくなるの」

「あばばばば…」

『…ちょっとあの子がかわいそうね』

「ああ、うん…」


 しばらくして、見かねたフィフィが、ウィウィに体内マナ循環という、自らのマナを循環させることについて教えたところ、やっとウィウィの体制が戻ったようだ。


「よし、これでいいや」

「あの一言でここまでいけるのね…」

『ウィウィには、驚いちゃいけないの。もう、私はいろいろあきらめたわ…』

「…苦労してるわね」

『ありがと…』


「というか、環境云々への干渉能力とか、そういったものも何一つ身に着けてないのね。ウィウィって」

「干渉?なにそれ?」

「具現者としての力よ。その地を護るため、その地と一体化するとか。そういった目的で身に着けることが多いわね」

『…なによそれ、まるで神様じゃない』


 初めて聞く具現者の化け物具合に、驚くウィリーだった。


「本来は、その神様から力の使い方を学ぶらしいけれど、私にはいなかったから。私の前の代…というか、あの村長が教えてくれたのよ」

『…瞬間移動とかも?』

「そうよ…ってそうじゃない!ああいうのは純粋に村長自身の力なの!あれはおかしいの!!」

『・・・』

「なにそれ怖い…でも」

「『でも?』」

「あれの真似なら、今できるかもしれない…」

「・・・えっ」

「ちょっとやってみる…よっ」


 そう一声発した次の瞬間、ウィウィは消えた。と同時にものすごい風が起こった。


「うわあっ?!」

「ニ゛ャァーッ!!」

『ぎゃー!寒い寒いっ!!』


 風に驚くフィフィ、飛ばされかけるティティ、飛ばされたウィリー。体の大きさによって反応が違った。

 そんな中、ウィリーがゴーレムとなって体制を整えると。


「ってあれ?ウィウィは?」

『凍るかと思った…あら?いないわね…』


 ウィウィを見失っていた。少しあたりを見渡す二人。すると…


『おっ、いたわ』

「どっち?」

『こっちね。ウィウィ、なんで登るのを選択したのかしら…』


 ウィウィは山の上のほうにいた。手を振っている。


『こっち来て、かしらね』

「はあ、なんだかしばらく振り回されそうな気がするわ…」


 ―――――――――――――――


「はあ、風を抑えられなかったよ。まだまだだね」

『うん、風以前に運動を抑えてほしいわ』

「というかどうやって足音もなしにここまできたのよ…」

「飛んだ」

「えっ」

「飛んだんだ。空中を」

『えっと、ジャンプじゃなくて、フライの方の?』

「うん」

「もう…わけがわからないわ…」


 ウィウィが飛んでくれたおかげかは知らないが、だいぶ短縮された道のりであった。


「うーん、体内マナ循環だっけ?それってどんな効果があるの?」

「今ウィウィがやっているからわかると思うけど、まず体が自分の適正体温くらいには温まるわ」

『へぇ。こんな寒い中でも?』

「そうね。次に、身体能力がマナの量に比例して格段に上昇する。さっき、空気を蹴れたでしょう?」

「そうだね。昔は無理だったんだけど…」

『…いったいどこまで行くのよ、この子』

「私は無理ね。魔術特化だし」


 やっぱりウィウィは規格外だった。


「・・・まあ、いいわ。そのくらいには強くなれるの。で、最後にだけど、自分の属性が強くなるわ」

「自分の属性?」

『ああ、ウィウィだと火と土、ってことね』

「そう。ただし、デメリットもあるの」

「デメリット…疲れやすくなる?」

「そうね。体に必要以上の力を要求しているんだし。あとはマナ消費が酷く有ること。具体的には…」


 フィフィはその場で止まり、考えた。


「大体半日でマナが全部消費されるくらい、かしら」

『…フィフィでさえ、なの?』

「そ。というより、さっき身体能力がなんとか、って言ってたでしょ?」

「うん」

「そのときに上昇する分、マナを消費するの。だから、誰が使ってもマナ消費は個人のマナの量で決まるのよ」

「ほえー…」


 どんなものも、利点と欠点がある。これもその一つだった。


「消費量は操作できないの?」

「ある程度なら可能だけれど、まず無理よ…。私もやったけど、せいぜい消費を半分にして、一日続けるのが限界だったわ」

『それは私にもできることなのかしら?』

「たぶんできるわね。むしろ、ウィリーは魔獣だし。それも特別な。マナの扱いにはきっと長けているはずよ」


 そう言うフィフィの隣で、循環をさせているウィウィが少し考え事をしている。


「んー…」

『どうしたのよウィウィ』

「いや、消費が抑えられないなら、マナを吸っちゃえばいいのかなって。やってみたけど、出来ないわけじゃなかったよ」

「成程…やり方は分からないけど、供給を行えば持続ができる可能性がある、ねぇ。今度やってみましょうか」


 そのウィウィの案を聞いたフィフィの顔は、面白そうなことを見つけた、というようにきらきらとしていた。が、すぐ真剣な顔になる。



「っと、そろそろ頂上よ。気を引き締めていくわ」

「おぅ?」

『やっとボスのお出まし、かしらね』



 日は少し落ちかけている。雪も解けぬ地で、彼らは何を見るのだろうか。



 はたして、頂上にいる、闇嵐龍とは一体?

ありがとうございました。

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