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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第1章 その者、異端につき
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第3話 具現者の使命

文の丁度いい長さが分かりません。

「おーい、いるかのー?」


 頭を抱えて苦悩するミルの元に、一人のしわがれた男性の声が届く。玄関で待っているようだ。即座に体制を立て直すミル。


「あ、はい!今行きます!」


 彼女が玄関を開けると、そこには白いひげを伸ばした老人が立っていた。


「あの子は元気かの?」

「はい、見た目以外は炎溶人だといえますね。普通に過ごせそうです。」

「それはよかった。少しあの子を見せてもらっていいかの?」


 この老人、実はこのグレウス火山内の村の村長なのだ。名前は何故か隠されているが、あったとしても皆にはどうせ村長としか呼ばれないだろう。


「ああ、いいですよ。どうぞ家の中へ…あれ?」

「どうしたのじゃ?」


 部屋に目を戻すと、何故かウィウィがいなかった。


「消えちゃった…」

「…いや、背中にいるじゃろ」


 重みに気づかなかったらしい。


「ふむ、いい調子じゃの。」

「へ?」

「マナが多すぎるというのに、その流れがはっきりしておる。もしかしたら、と思ったが、杞憂じゃったわ」

「はあ…」

「懐かしい流れじゃな」

「懐かしい?」

「おっと、口が滑ったわい」


 ウィウィ・リベルクロス。


 大層な名前を持つ彼には、本来なら200人もの炎溶人を生み出せるだけのマナがある。それだけに、暴走だってしてしまうのかもしれない。そう思った村長だったが、どうも無意味な警戒だったらしい。大河とも呼べるマナの流れは、ウィウィの中でゆっくりと、安定していた。


「ところで、一ついいかの?」

「はい、なんでしょう?」

「”具現者(リベルクロス)”を、詳しく知っておるかね?」

「ッ!」


 具現者(リベルクロス)。ウィウィの名前。強いて言うなら名字。名字まである炎溶人は少ない。その中でもさらに異質な名前。ミルはつい反応してしまったが、この場においてはきっとただの”具現者”のことだろう、とすぐに気を落ち着かせる。


「…いえ、詳しいことは分かりません。ただ一つ、それがまるで精霊の様な存在である、ということだけ知っています。」

「ふむ、いいじゃろう。なら問おう。」


 一拍おいて、彼は問うた。



「その具現者には、二つ目の使命があるのを知っているかの?」



「二つ目の使命?」

「左様。この地、即ちサレイン王国。大きく分けて三つとなるこの地には、それぞれの地に合わせた具現者がいるのじゃ。具現者達には使命がある。その力を、神に変わりお護りすることじゃ。じゃが…」


 時として、違う使命を持つこともある。


 村長は、そう言ってウィウィの頭を撫でる。


「あの子が自分で動けるようになったら、旅に出させるのじゃ。あの子が、世界における1人の具現者(リベルクロス)だとするのならの。」

「…分かっていましたか。」

「儂に分からんはずがないわい。幾ら何でもマナの安定具合がおかしすぎるのじゃ。儂は長生きしておる、具現者の一人や二人は見てきたわい。」

「…そうですか。」

 数奇な運命の元にいるんだなあ、と、ミルはいつの間にか頭の上に掴まっているウィウィを撫でる。ついでに剥がす。

「さて、そろそろ飯にでもするかの。それでは、また。」

「あ、ありがとうございましたー」


 玄関から村長が退出したのを見て、ため息を出すミル。


「具現者、かあ…」




「何か違う」


 ミルの家から退出した村長は、そう感じた。


「あの子は確かに具現者じゃろう。おそらく炎の具現者じゃ。しかし…」


 いつも元気なはずの村長の思案顔は、暗かった。それもそうだろう。


「普通ではない、何かがあるのぉ…」


 具現者とは基本生物だ。だが、あの子は、確実に生き物にしては(・・・・・・・)マナの量がおかしい。あれでは精霊と言っても問題がないではないか、と。


「まあいい。その時になったら考えるかの。成長が楽しみじゃ」


 思考を放棄し、普通に戻ることにした村長だった。

ありがとうございました。

(7月13日修正しました)

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