第16-2話 全てを壊し、全てを泣かせる者
これとこの前の回、『紅蓮の精霊、その申し子』は、見ても見なくても時間軸に支障は出ない…はず。モノの視点でお送りします。
~モノ視点~
「「『【人智を超えた3つの光】、今ここに舞い戻ったァァ!!』」」
【人智を超えた3つの光】。僕らが付けた、僕らのパーティーの名前だ。皆で叫ぶと、やっぱりいいね。因みにリーダーはウィウィだ。
叫んだと同時に一気に左へ。こっちに向かっている途中で決めたこの内容、主にウィウィが全て忘れるだろうと思って決めたことだ。敵に対しては割と無鉄砲に突っ込んでいく子だからね。
「さて、久しぶりにSSSの証、使わせてもらおうかな?」
敵の大群と相対する。多対一はソロの未開地調査系依頼位でしか、最近はやっていなかったけれど。感覚を思い出しながら行こう。
敵に向かい走る。敵はこちらに気づき、向かってくる。うん、まあ予想どおり。
「ふぅ…【機関起動】、【形態:魔壊】」
自らの力を、その場その場で切り替える技、【魔変機関】。この力が僕をSSSまで上げてくれたんだ。体内機構に直接影響を与えるこの技は、僕がずっと男性のような女性になっていられた理由でもある。
【形態:魔壊】の力で魔物を倒す。これで倒した魔物は、復活を封じれる。強引に復活させても、身体がボロボロになっているだろうね。
「【追加形態】【形態:殲滅】ッ!」
さらに攻める。お、ウィリーの魔法が見えた。全属性かぁ、学会で最近欠片を見た位だったんだけどね。さすがウィリーだ。
というか早くこの力を全体に通さないと。復活系魔法の使い手が何処にいるかわからない現状、こういう所からやっておかないといけない気がするしね。
…でも、右を見ると、
「あっははははは!【穿ツ】!」
こうやっているウィウィの一撃も、どうやら【形態:魔壊】に似た力が乗っているみたいだ。センスはあるみたいだね。まあまだ不安定の様だけどさ。
…ってあれ?なんだかウィウィの様子がおかしかった気がするなあ。気のせいかな?
…たぶん気のせいだな。目がおかしい気がしたけど気のせいだろう。
「【壊ス】!【叩キ割ル】!あはははは!」
まって、明らかにおかしい。あんなにウィウィは、ポンポン技を放つような子だったかな?
いや、それ以前に。
目の色が、紅い。
おかしい。確実に異常事態だ。
それにウィウィは、あんなに目を光らせたりしていなかったはず。いや、比喩表現じゃなくて、ほんとに光ってるんだよ。淡い紅の光を発しているんだよ。どういうことなんだ一体…
いや、それはいい。早く行かなきゃ。あの子が完全に壊れる前に。
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「【形態:波動常装】」
遠いな…。さっき三人が散ってから、少し遠くに来すぎたみたいだ。間にも敵が湧いている。マナを切り替え、倒すことに集中する。なんだかウィウィの方に向かえば、何かが起こる気がするからね。
まあそれ以前に、彼を止めなきゃいけないんだけれど。
「【追加形態】【属性付与:炎】」
SSSランク冒険者として生きてきて、副ギルド長となって。暫くして、彼らを連れてきてくれってギルド長に頼まれて。何だろうと思って行って、マナを見てみたら正直クラっときたよ。あんなにマナを持った子供を見たのは初めてだった。いや、きっとこれからもないだろう。
「【攻撃:突】!」
彼らの様子を見ていると、正直頭がおかしくなりそうだった。一体いくつ常識が壊れたのかと思ったよ。その一つが【属性付与】。付与することができるものに制限があると思ってたらそうじゃなかった。ただ、付与するための魔法陣に対する適性が、それぞれに違って存在しただけだったんだ。魔法陣を切り替えたり、詠唱を変えればどんなものにでも付与できる、と知ったとき、全てが覆されたと思ったよ。
「【追加形態】【属性付与:水】」
ついでに、重ねることができる回数にも制限はないみたいだ。属性を[混ぜる]ことができるってことが、それを証明してくれた。ウィリーのおかげで知れたけど、どうもウィリーはウィウィのおかげで気づけたらしい。属性ごとの性質が重なればできるっていう、ちょっと変わった方針ではあるけれど、それでもイケることに気づけた今、僕は重ね掛けを基本としているんだよね。
これらはすべて、彼が見つけてくれたこと。彼がいなけりゃ知ることもできなかったのかもしれないこと。
「・・・!・・・・・!!」
僕の戦いの力を底上げしてくれた彼。
「・・・・・てよ!・・・・っと!」
毎日の生活に(行き過ぎたこともあるけど)刺激を与えてくれた彼。
「それじゃあいくよ!【壊シ尽ク…】
そんな君が・・・!
「『今すぐその物騒な力抑えろ!この馬鹿リーダーッ!!』」
こんなところで壊れるな!!全力で止めてやる!!
ありがとうございました。