第16-1話 紅蓮の精霊、その申し子
これとこの次の回、『全てを壊し、全てを泣かせる者』は、見ても見なくても時間軸に支障は出ない…はず。ウィリーの視点でお送りします。
~ウィリー視点~
「「『【人智を超えた3つの光】、今ここに舞い戻ったァァ!!』」」
…調子乗って合わせちゃったけど、冷静に考えればかなり恥ずかしいことよね。まあやっちゃったことだし、無視無視!
叫んだと同時に右に走る。先ほど爆音が聞こえてから、こちらに全力で向かう途中に決めたことね。モノは左、私は右。ウィウィは真ん中で、お互い力の加減なしにぶっ飛ばす、そんなことになったの。
『【第一形態】、【炎人間形態】!早速だけど、行くわよ!』
いつもの形態になり、魔法の発射準備を整えつつ殲滅。大群対私達、っていうことはあまりないからね。もうこの際だから、感動の別れを邪魔された鬱憤、晴らさせてもらいましょうか!
『【炎よ、水よ、風よ、地よ。この世に在る全てよ、今ここに一つの意思を成せ】』
魔法にも色々あるわ。攻撃、回復、補助。それらのなかの一つとして、範囲殲滅系魔法ってものがあるの。それがこれ…
『【創造神の息吹】!!』
炎、水、地、風。今見つかっている4つの属性を混ぜ合わせた、無属性魔法の一種…を、私自らが書き換えて、全属性の両立を可能とした魔法。それがこれ。
いいわね。敵が息吹に薙ぎ払われ、簡単に倒れていくわ。マナ消費も少ないし、かなりいい魔法になったんじゃないかしら!
暫く発動を続ける。そのぶん魔力は減るけど、気にするレベルじゃないし、敵の減る量の方が多いから効率は十分よ。
…でも。私の左を見て、
「あっははははは!【穿ツ】!」
こうやった彼の一撃が、私の魔法の数倍の敵を吹き飛ばし、いや消し飛ばしているのをみると、なんだかどうでも良くなってくるわね。
…ってあれ?なんだかウィウィの様子がおかしかった気がするのは気のせいかしら?
…気のせいかもね。
「【壊ス】!【叩キ割ル】!あはははは!」
いや、明らかにおかしいわよねあれ。元々自分の力を危ない方向に確かめることが好きな子だったはずよ、ウィウィは。あんなに技をポンポンだすものだったかしら?
いや、それ以前の問題ね。
髪が、紅い。
いや、それ自体はもともとの髪と大体同じだったわ。問題はそれが光っていることね。
あの状態はマナが体中にいきわたっていた時に、一回だけ見た状態。その時は、ウィウィが若干暴走したのちに止まったものね。
…つまり、今は暴走状態、かしら。止めなきゃいけないわね…。
私は、ウィウィを止めるために、ウィウィの方へ走り出した。
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『くっ、遠いわね…!』
三人が離れてから、暫く立った後に気づいたせいで、ウィウィと私の間にモンスターが湧き出した。どいつもAランク越えのモンスターなのは確かね…。倒すのは簡単だけれど、それが何百と続いているからたちが悪いわ…。
『【炎弾】!そこどきなさい!』
詠唱破棄をしつつ進む。マナの消費量が上がるけれど、今は無視する。というか魔獣同士の共通シグナルも効かないってことは、こいつら確かに召喚されているわね…面倒な話だわ。
小さいころから、ウィウィは天才…いや、天災だったわ。いつも想像の壁をぶち壊してくる。今回だって、空から向かおうなんてあいつが考えて、その通りに皆を打ち上げたんだもの。それも戦いの前線、最前線へ。人を飛ばす技術なんて、今のところなかったのに、(無意識かどうかは知らないけれど)ダメージのない炎の爆発、つまり熱の要素だけを取り除いた爆弾で、私たちを打ち上げたんだわ。大砲の弾のように。
『【水壁】、【動け】!』
あいつには、幾多もの常識を壊されてきたわ。でも、それだけ既存の意識を壊してくれた、ともいえるの。今使っている【動け】のコマンドも、あいつが[壁は動かない]の意識をぶち壊してくれなかったら完成しなかったわ。動かす壁が敵を押し流す…うん、予想通りね。
『【大地破壊】、【十字】!』
[魔法系の技には二文字しか使えない]ってあったのも、それはただ消費量がヒトの限界を超えていただけ!私たち魔獣や、人を辞めた奴ら、即ちモノ達には使える!【十字】だって、形状に固定概念があったこと、そしてそれに類する魔法文字が知られていなかったから使えなかっただけよ!
それらはすべて、あいつが見つけてくれたこと。あいつがいなけりゃ見つけることもできなかったかもしれないの。
「・・・!・・・・・!!」
私の魔法の力を底上げしてくれたあいつ。
「・・・・・てよ!・・・・っと!」
毎日の生活に(要らんこともあるけど)刺激を与えてくれたあいつ。
「それじゃあいくよ!【壊シ尽ク…】
そんなあんたが・・・!
「『今すぐその物騒な力抑えろ!この馬鹿リーダーッ!!』」
ここでぶっ壊れんな!!全力で止めてやるわよ!!
ありがとうございました。
追記※カッコのつけ忘れを修正しました。




