第13話 有るものと、無いもの
…この回の原文を書いていた時は、きっと正気ではなかったんだろうな。
そして、第2章の2話で服のことについて話していた理由が、今明らかになる!
『ああ、やっぱり今回もダメだったわ』
「分からなかったよ…今度は道案内お願い」
「ああうん、できたらね」
結局道に迷って、途方に暮れていた俺たちを偶然モノさんが見つけてくれた。おかげで無事部屋に戻れたけど、もう頭がこんがらがっちゃった。
「もう…寝ようか」
「そうだね」
『こんなに眠いのに、起動出来ているファイアゴーレムが不思議だわ』
ウィリーはもう、日常的にファイアゴーレムを起動することにしたみたいだ。
「というかそれ光らないのかな?」
『光の要素と熱の要素、どちらも外してあるから問題無いわ』
「…そ、そうか。もう一流の魔法使いより知識があるんじゃないかな?」
『…かもしれないわね』
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〜第三者視点〜
「むにゃむにゃ…」
『すー、すー』
「・・・」
夜。明日の活力の為に、皆が休む時。いつもなら一人しかいない部屋で、モノはグレウス火山から下りてきた2人、ウィウィとウィリーと共に、静かな時を過ごしていた…
「・・・暑い」
訳ではなかった。
「どうしてこんなに暑いんだ…」
モノはギルド長から、ウィウィの寝る時の、マナ回収の癖を聞かされていなかった。だから、この暑さの理由を知らなかったのだ。
「とりあえず、水を取ってこよう。このままだと干からびちゃうな」
モノは、自分を挟んでいる2人を起こさないよう、注意しつつ起き上がった。ウィリーがいっていたように、確かに炎のような光も熱さも感じなかったファイアゴーレムに驚きながら台所に向かい、水を確保する…と、何ともなしに、近くにあった気温計を見た。
「…って、38度?!」
こんな気温は、ヤマトの国の、【ナツ】とかいう気候の時か、火山や砂漠の昼とか、その位にしかなかったはずだ。モノはそう思った。
「一体どうして…」
モノは周りを見る。暗いが、外がマナの光で明るく、物は見えている。が…
「特に、変わったところはないしなあ…」
強いて言うなら、ウィウィとウィリーの2人がいる位だ…と、そこまで考えたはいいが。
ウィウィがマナの吸収、それも火の要素の獲得の為に、熱のみを創り出した、なんて思い浮かぶはずもなく。
「…せめて服脱いでから寝ようかな」
ただ熱に対する対抗策が、一つ浮かんだ程度であった。
…熱で頭がやられていたせいか、モノは大切なことを忘れていたが。
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〜改めてウィウィ視点〜
「…ん」
眠い…朝かな。
「…?」
ここは…ああそうか、昨日はモノさんの部屋で寝ていたんだった。
「そろそろ起き…」
「くー、くー」
『すー、すー』
「…あれ?」
掛かっていた布団を剥いで気づいたけど、モノさんの服がない。というか着てないみたいだ。昨日は確か、黒めのパジャマを着ていたはずだけど…
あ、足元に脱ぎ捨ててある。
でも、なんで胸の辺りに包帯巻いているんだろう?
「・・・?」
傷でもしたのかな?でもそんな感じには見えない。というか血の一つも滲んでいない。
「んー…ん?」
今気づいたけど、なんとなく膨らんでいる気がする。二つ、女の人の胸のように。
・・・「女の人」の様に?
「…もしかして」
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「…くぁぁぁ。よく寝た…ん?」
「…ねえ、モノさん」
『すー、すー』
「・・・何かな?」
よし、思ったことを話してみることにしよう。
「モノさんってさ、お風呂には一緒に行かなかったよね」
「そうだね。用事があって…」
「その用事、本当は無かったんじゃないの?」
そういったとたん。
「うぇっ?!」
モノさんは急にうろたえはじめた。
・・・やっぱり。
「あ、ええと。あの時は、あの転移魔法陣の確認を…」
「キンキュウセイ?はないよね、確認自体は。モノさんでも治せるものなんでしょ?それだけだったら俺たちと別れる必要性はないよね」
「い、いや。ほら、あれだよ。少し買い物の用事を…」
「それだったら明日の方が都合いいよね。村でも夜は、空いている店はなかったし」
「うぅ・・・」
「というか、その恰好で出任せ言ってても、説得力ないって。モノさん」
「へっ?」
モノさんは、急に恰好のことを言われてわけが分からないようだ。
疑問を顔に出すモノさんに、俺は自分を見て、と言う。
モノさんは下を見る。
下着だと気づいたのか、顔を赤くする。
モノさんは下を指さしながらこちらを見る。
たぶん、「見たの?」といったところだろう。うなずく。
「そもそも、お風呂の時に、なんでタオルを全身に巻いていたのか、ってところが違和感だったんだよね。男性だったら、腰だけで十分だし」
「・・・」
モノさんは、俯いてしまった。
でもそれだと何もできないし、とりあえず、一つ聞くことにした。
「正直に言って。モノさん、女性なんだよね?」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・うぅ」
あ、不味い。泣きだした。
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「まさかこんなタイミングでばれるとは…ぐすん」
『まさかこんなタイミングで気づくとは…』
「まさかモノさんが女性だったとは…」
朝見るまで気づかなかった。最初男性だと思ってた…。皆が着替えた後、改めて話し合うことに。
『でも、なんで男装なんてやってたのかしら?』
「ぐすっ・・・あー、それは純粋にこっちの都合だよ」
「都合?」
「他国と話し合う時、だね。男性だ、って見せることは割とアドバンテージになるんだ」
『どういうことよ?』
「まあ、ナメた真似をされることがない、ってところだね。この際だから言っちゃうけど、僕は元SSSランク冒険者だったんだ」
「…ほえー」
よくわからない。
『そういえばランクの桁について教えてもらってなかったわね。どれが最低でどれが最高なの?』
「Cが最低。SSSが最高だね」
・・・すげぇ。
『ってことは最高ランクってことじゃないの…』
「で、ついでに言っておくと、ギルドの中で一番強かった…とされているね。そんな冒険者が女性だって他国に知られたら、どうなると思う?」
少し考える。するとウィリーが答えてくれた。
『…ああそういうこと、「お前たちのギルドは女が一番になれるほど弱いのか」、そう思われるわけね』
「そ。だからナメられたくないから、ってこんなことしてるわけ」
「…でもその割には、その男物のスーツ、着こなしてるよね」
「うっ」
それを言われたモノさんは、一瞬うろたえた。けど、暫くして、話してくれた。
「・・・最初のうちは、業務だ業務だって自分に言い聞かせて、無理やり着ていたんだ」
「あ、そうなんだ」
「でも、それが普通になるにつれて、男装にハマっちゃって…」
『おい』
「今では男装用の私服も幾つかあるくらいの、一つのひっそりとした楽しみだったんだ。だけどあまり表に出したくないことだし、隠してたんだけど…うぅ」
『うちの馬鹿が強引にひん剥いた、と』
「いや、服を脱いでいたのは昨日の暑さが原因で…」
『…それもウィウィのせいじゃない』
「・・・えっ」
「?」
とりあえず、この後モノさんとウィリーにかなり怒られました。なんでだったんだろう…?
ありがとうございました。
ウィリーだけはマナの違和感が【視えていた】から分かったけど、モノさんが女性だってこと、勘のいい人なら分かったかな?
酒場の冒険者たちの会話、何故か風呂の時に離れたこと、あとタオルで全身を包むようにしていたこと。基本この三つでなら分かるかもしれない。
でも、最初にウィウィが「この人は男性だ」って思いこんじゃったこと、ついでにそれに合わせて第1章の最後でモノを「男性」って表記したこと、この二つが考えを遮っちゃったかもしれないな…。
もしアレだったら第1章を修正します。