第11話 冒険者ランク、初めてのお泊り
ランクなんて飾りなんです。この子たちにはね。
「おお、来たかの」
モノさんに連れられて来たのは、こっちに初めて来たときにも入った部屋、ギルド長の部屋だった。
「つれてきました」
「うむ、ご苦労。事情は把握したかの?」
「問題ありませんでした」
「では、二人とも。そこの椅子にでも座るがよい」
いわれたとおりに座る俺たち。
「二人に渡した証…というより、記録を見せてほしいのじゃが」
「いいよー」
『これね?』
これはモノさんが道中で説明してくれたので、特に抵抗もなく渡す。
「ふむ…確かに。ウィウィ34、ウィリー28。報告とあながち変わらないのう」
「これで十分でしょうか?」
「うむ。ここまでできる時点でS以上の実力であることは確かなんじゃが、一応規定があるからの。今回は、二人にこれを渡すことにするかの」
そういって、セイドさんは俺たちに、カードを渡してきた。左上には金のメダルが埋め込まれている。
「ってこれ、冒険者カード?」
「左様。これからはAランク冒険者となるのじゃ。すでにランクアップの規定は超えておるし、一個人としての能力は申し分ない。Sランク以上でも実力は十分なんじゃが、さすがに100日以上を冒険者として過ごしてもらわんといかん。それに、未だおぬしたちは、冒険者として知らぬことが多いじゃろう。しばらくはモノとともに過ごすがよい」
『…もしかして、同居するように指示したのって』
「なんとなく、あの手紙の中に、おぬしらにはSランク以上の力がある、と暗に書いてあったような気がしたからの。早めに手をうっておくことにしたのじゃ」
『そ、そう…』
一日経つ前にランクがCからAに上がりました。
「モノさん、こういうことってよくあるの?」
「遠方から実力者を冒険者として呼んだときに、まれにありますね。強き者たちを低ランクに留めないように、CからAについては、特定の条件を達した時点でランクを上げる方針を採っています。もちろん、通常通りにランクを上げることもできますよ」
『S以上には上がれないってのは、冒険者としての信頼かしら?』
「そうですね」
「…というかモノさん?」
「なんでしょう?」
「何で敬語に戻ったの?」
「オフィシャルの場ですので。後々、あなたも知ることになるでしょうね」
よくわからないや。
「とりあえず、今回の目的はこれでいいの?」
「うむ、もう行っていいぞ。モノも引き続き、こやつらの監視を頼む。何かあったら連絡してくれ、正直今の結果を見るに、こやつらが超のつく強者であることはわかった。知識なき強者ほど恐ろしいものはない…頼んだぞ」
「わかりました。それでは」
―――――――――――――――
あの後またイファルの実を取りに行って、40個近く手に入れたあたりで出会った、丸っこくて毛皮がごわごわしている魔物、ゴートボアを(殴り)倒して。ギルドに渡したら喜ばれて、普段より多めにお金をもらった(らしい。お金を持っているのはモノさんだし、価値がまだよくわかってないから)。
時間は夜。もう周りは暗くてよく見えなくなっている…なんてことはない。文明が進化したこの町では、マナの灯りが町中を照らしている。
「ゴートボアって、最近よく畑を荒らしていた魔物なんだよね。もらったお金の中には、それについての依頼分のお金も入ってるんだ」
「へー…あれ?依頼受けなくても、偶然達成すれば依頼分もらえるの?」
「そうだよ。達成した、っていう証拠を出せばいいからね」
そうして着いた場所が…あれ?またギルド?と思ったら、モノさんは木の扉のついた、変な部屋に向かっていった。足元に魔法陣がある?
「僕の部屋に転移するよ。ギルドの中にあるからね」
『…ああそうか、そういえばギルド内だとか、そんなこと言ってたわね』
「へー、ギルドの中にも人は住んでるんだ」
「住んでいるのは数少ないけどね。殆どが重役だよ」
『というと?』
「まずギルド長と副ギルド長は、基本毎日ここにいる必要がある。全てはここから成り立ってるしね。次には…そうだね、依頼係長かな。この人も毎日ここにいる必要があるから。あとは…緊急系の依頼の担当者達くらい。もしもの時に誰もいなかったら困るからね」
「いろいろあるんだねー」
「そりゃまあ、それが普通だよ。この位の団体になると、ね。さて、帰ろうかな。えいっ」
転移。
【ガコッ】
「…あらら?」
「どうしたの?」
「…後でここの状態を直しておこうかな。なんか壊れたみたいだし」
『転移に支障は?』
「ない…と思う。でも万全を喫して、ね」
ところで部屋が変わってない気がするんだけど…。さっきと同様、魔法陣のある部屋だ…と思ったら、前に扉がある。この質だけ変わってるみたいだ。石?
「さて、僕の部屋にようこそ。綺麗な景色が見られる、いい場所だよ」
石造りの扉が開かれると…
「…おお」
『なるほど、綺麗ね』
そこには、整頓されて、さっぱりとした部屋と。
この町をぐるりと見渡せる、大きな窓があった。
そこには、この町を照らすマナの光の粒がちらほらと見えて、幻想的な風景が広がっていたんだ。
「ふふふっ。お泊りには最適かな?」
ありがとうございました。狩りがカットされるのはこの子たちだから。
あと、この世界にはガラスはあります。純度高め。夜景を見るにはちょうどいい。




