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紅蓮の神の伝説  作者: 夢神 真
第2章 冒険と、限界と
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第8話 イファルの実、それは至高の餌

自然界には、似た物なんていっぱいあります。イファルの実にだって、似ているものはあるんだよ。

「やっぱりここのあたりには、イファルがよく生息しているんだね」

「あれがイファル?」


 俺たちの目の前には、黄色い実を背にのせて、とてとてと歩いている鳥がいた。


「あれから黄色い実の部分を外すんだ」

「外す?」

「黄色い実の部分を取る。イファルの蓄えた栄養が入っている部分だけど、何故か取り外せるんだ。どういう原理なのかは知らないけどね」

『へえ。外敵から身を守る手段が、そのまま自らの栄養にもなるのね』

「お、ウィリーは気づいたかな?」

『粗方、あの実が硬いのは、鎧の扱いをしているってのが理由かしらね。ついでに、まるで卵を背負っているように見せて、実を取られた時点ですぐ逃げ出せるようにしている…鎧だけじゃなくて、囮にもしているってことかしら?』

「今のところ、そういう見解が為されているね。よく気づいた!」

『えっへん、このくらいは普通よ!』


 ウィリー、楽しそうだなー。


『…でも、それだけだとどうやって栄養を蓄えているのかが説明つかない気がするわね』

「うん。それも今のイファルについての議題だね。今のところ、イファルの実はマナを蓄えるもので、甘くなっているのは濃厚なマナが詰まっているから、という理由が有力、かな。事実、マナ回復には使えるしね」

『あら、そうなの?』

「美味しいし、回復はできるし、食べ終わっても使える。便利だね」

『そうね。今度個人的に採取してみようかしら』

「訓練するにはちょうどいい食事だしね。冒険者でなくとも、イファルから実を取ることは許されているから」

「そんなに取って、イファルは絶えたりしないの?」

「何故か、実を取れば取るほどイファルが増えるんだよ。どういうことなんだか」


 そうやっている間もとことこ歩いているイファル。もちろん追いかけてみる。イファルは、俺たちがいることに気づいてはいるみたいだけど、それでも特に歩くペースを変えてはいなかったよ。


「イファル本体はさほど餌にもならないからね。大抵の動物たちは、背中の実が美味しいことを知っている。だから、イファルは追いかけられても特に危険意識を持たないんだ」

『でも、背中の実が取られたらすぐ逃げ出すんでしょ?』

「そうだね。守りがないのはさすがに怖いのだろう」

「で、背中の実ができるまで待つ、と」

「そういうこと」


 暫くすると、イファルは何か青い花を見つけて、ついばみ始めたんだ。


「あれは魔力草の花だね。あれをついばむ姿が目撃されてから、マナを蓄える説が有力になったんだ」

「へー」

『あれは人でも食べられるのかしら?』

「ちょっと無理だね。ただ、マナ・ドリンクの高性能版だと、あれを使わないと効果が足りないそうだ」

「…マナ・ドリンクって?」

「ああ、そっちから知らないのか。マナ・ドリンクってのは、マナを効率的に回復させるための飲み物だよ。訓練にはこっちが使われることが多いね」

『へえ。で、その高性能版で、魔力草を使う理由ってなによ?』

「一般的なマナ・ドリンクは、イファルの実のマナを凝縮して作ってるんだけど、それだと足りないって人がいるんだよね」

「そうなんだー」

「で、魔力草に詰まってるマナってのは、イファルの実以上に上質。あの花一つでイファルの実クラスなんだよね」

『へぇ』

「ただ、行き過ぎたマナ摂取は人を壊すから、マナ測定の結果を持っていくか、冒険者クラスがS以上であることを証明するものを持っていくかしないと、高性能版マナ・ドリンクを買わせてくれないんだよね」

「んー、でも俺たちなら大丈夫だよね」

『…ところで』

「なんだい?」

『なんとなくさっきの言葉に、モノがSクラス以上ってことが含まれてた気がs』

「さあぁぁて!そろそろあれを取りに行こうか!」

「おー!」

『…露骨に逸らされたわ』


 ―――――――――――――――


「さて、そろそろ取る方法を教えるけど…ぶっちゃけただそこを掴めばいい。イファルの方から外してくれるからね」

『あら、簡単なのね』

「ウィリーだと、その人型のゴーレムを使えばいいと思うよ」

「じゃあやってみようかな?」


 近づいてみる。

 イファルは逃げない。


 手を伸ばす。

 まだイファルは逃げない。


 実に手が触れ・・・あ。


 ころん、と実が取れた。と同時にイファルは逃げ出した。


「ってか早っ?!」

「確実に、魔車からも逃げれると思うよね。あのスピード」


 とりあえず、イファルには逃げられた。けど…


「まずは一個、獲得だね」

「よしよし、この調子でどんどん行こう!」


 ―――――――――――――――


「あっ、発見…あれ?」


 いくつか見つけて、ウィリーを魔車状態にして運んでいる途中、イファルの実を見つけた…と思ったんだけど。なんか違った。地面にいっぱい置かれていたんだ。


「…うわあ、ここで見つけちゃうかあ」

『モノさん、知ってるのかしら?』

「イファルの実に似ているけど、なにアレ?」

「…あれがイファルの実だと思うなら、なんでいくつもあるんだと思う?」

「そりゃイファルの巣だから…ってあれ?イファルってそうやって実を蓄えるの?」

「いや、何故か実を蓄えることはしないんだよ。ついでにイファルの卵はかなり小さいし、白色だ」

『…ってことは』


 ウィリーが嫌な予感を感じているのか、魔車状態から人間状態になって身構えている。


「そう、ウィリー。君の予想は正解だ」


 その言葉に反応してか、トカゲのような、でも二本足で立っている緑色の生き物が、周りの草むらから出てきた。


「ここは、ドラゴニア…竜人の一種、リザールの巣だ。卵が、非常にイファルの実に似ていることで有名な種だよ」

ありがとうございました。

あー、ウィウィ達がピンチだなー(棒)

追記※イファルの実みたいなもの(リザールの卵)が、地面に置かれている旨を追記しました

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